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第二話 よくて夢落ち、悪くて死亡

「さて、そろそろ本題に移りましょう」


ひとしきり笑ったウインはその手に持っていたカップをテーブルの上に戻す

その顔に直前まであった笑みはどこかに消え、表情は真剣そのものだった


「まずあなたがここに呼ばれた理由からご説明しましょう」



第二話 よくて夢落ち、悪くて死亡



「理由?」


「もう忘れました?これでも私は神様なんですよ?」


そういえば、ウインは神だ

神はどんなに敬謙な宗教者でも会うことができないような存在だ

ましてや俺のような無信教の一般人が話すことができるような存在ではない

ならば何故こうして俺の前に現れたのか

おそらくそれ相応の理由があるに違いない


「説明の前に一つ質問があります。あなたはどこまで覚えていますか?」


「覚えているって何を?」


「ここに来る前のことです」


「そりゃあ、駅の改札に入ったらここにいたんだ」


「やっぱり、直前の記憶の損壊が見られますか・・・」


そういうとウインは手元のパソコンの画面を切り替える


「説明するよりは自分の目で確かめたほうがいいかもしれませんね」


そういうとウインは手をぽんと叩く


「少し場所を変えましょう」


気付くと今度は病院の一室にいた

窓の外から風が吹き込んで清潔そうなカーテンがゆれている

視線をおろすと一人の患者がベッドで寝ている

その顔を風が収まるとカーテンに隠れていた患者の顔が確認できる


「・・・なっ!」


そこには青い顔で寝ている俺の姿があった


俺はゆっくりその体に歩み寄る

しかし途中で俺の体は見えない壁で押しとどめられる


「外傷的ショック、および出血多量による意識不明です」


いつの間にか後ろに立っているウインが声をかける


「あなたはその記憶の直後ホームで刺されました、幸い一命は取り留めましたがごらんのように意識が戻りません」


「なら、ここにいる俺は?」


「あなたは、そこで寝ている体から引き離された魂

肉体は意識を手放すときに稀に魂を切り離すことがあります

人はそれを幽体離脱と呼ぶようですが

つまりあなたは肉体を持たない魂だけの存在

ぶっちゃけると幽霊ですね」


「・・・幽霊か」


ということは夢にまで見たあんなことやこんなことが・・・・


「まあ、そんなことをしたら懺悔の言葉を聞く前に地獄へ送りますけど

そもそも今は向こう側にすらいけないということは確認しましたよね?」


「・・・どうすれば目を覚ます?」


魂が肉体に戻れば肉体は目を覚ます

どこかの雑誌のオカルト特集にはそんなことが載っていた気がする


「確かに魂と肉体が完全な状態であるならいつでも戻ることができます

しかし肉体は先ほど説明したように完全ではなく、魂も完全な形を留めておりません」


「魂も?」


「ええ、体に損傷を受けた過程で引き剥がされた影響であなたの魂の一部は引き千切られました 」


「じゃあ記憶が無いのも」


「恐らくはその影響かと思われます。記憶は魂と密接に関係しています

魂が戻れば記憶も戻るはずです」


気がつくと病室からもとの庭園に戻っておりウインは誰かが入れなおした紅茶を飲む

ちなみに俺の紅茶は一口も飲んでいないのに新しいものに入れ替えられていた


「さて、ここで私は先ほどのお願いを一つ使おうと思います

他人の魂はその辺に転がっているといろいろと問題を引き起こして危険です

なので普段は死神が残らず回収するんですが、欠片は管轄外だ!といって回収してくれません。

あなたにお願いしたいことは千切れた魂の欠片の回収です」


そういえばそんな約束したんだったけ

立て続けにいろんなことがあって完全に忘れてた


「念のため釘を刺しときますが約束を破ると・・・後は言わなくてもわかりますね?」


急に彼女の背後から常人の俺でも分かるほどやばいオーラが吹き出てきた


「・・・場所は?」


当然俺は了承するしかない


「魂の欠片は【チゴト】という私が管轄するあなたの世界とは別の世界に落ちました」


なん・・・だと・・・

今、俺の気のせいで無ければ異世界というワードが出てきた気がするんだが?


「ええ、異世界です 魂は世界の境界をらくらくと越えるので

まあ、私の加護が届く世界だったのは幸運ですね」


「ちなみにそこはどれくらい広いんだ?」


「地球と同じくらいのサイズですが、交通機関が発達してなかったり巨大モンスターとエンカウントしたりで二十倍くらいは大きいと思ってくれて結構です あ、でも時間の進行速度は向こうの一ヶ月が地球の一日だから安心して探せますよ」


安心できるか!!


「ちなみにこれをやることで俺が得られるメリットは?」


「よくて夢落ち、悪くて死亡ですかね」


「え、死ぬの?」


「当然です、魂が死んだら肉体も死にます

つまり向こうで死んだらこっちも死にます」


ということはモンスターと遭遇してHPがゼロになる=死亡というわけですか!?



と、ここでウインの後ろにあった柱時計が鳴り始める


「おや、そろそろ時間ですね 

というわけで死なないように頑張ってください

まだ二つもお願いが残ってますので」


そういうと彼女は手元にあったスイッチを押した

すると俺の足元に大きな穴が開いて・・・


「なんでだーーーー!?」


という俺の叫びごと飲み込んでいった


最後にウインの口が何かをつぶやいたように見えたが俺にはそれを理解する余裕は無かった

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