妖狐と喫茶店(49%)
こちらは、AIに”妖狐の子供らしさ”や”マスターとの会話””全体的な校正”を主とした用途で使いました。
子供っぽい言い方や、知らないモノを言い換えるの難しかったです。
「私でも化かせるもん!」
変化が上手くない私はそう言って、森を下りた。
「どうせバレるよ」
「今度は尻尾かな?」
「耳でしょ。この前母様が見てた時は人間のとで四つもあったし」
みんなの笑い声が聞こえるけど、山を駆け下りている私が誰よりも格好いいハズだ。
(私を笑っているのも今の内...!!)
妖狐にとって、変化は生きる為のもの。
母様はどんな女性にも化けれる。父様は色んな格好の人間になって森の外に溶け込んでいる。悔しいけれど、私以外のみんなも化けるのが上手い。
私だけが狐を残した下手っぴな変化になっちゃう。
耳。尻尾。爪。毛。
必ず、人間に化けても何かしらが残る私だけが笑われ者だった。
(だから——これは証明なんだ)
森の下には人間が沢山入る箱があった。これには入るなと父様が言っていたから、いなくなるのを待って私は再び駆ける。
目指すのは人のいる場所。どのくらい先にあるか分からないけど、あの箱に付いて行けばたどり着くという確信が足に力をくれる。
(そろそろ人間に化けよう)
潰した森みたいな——人間たちがいっぱい住んでそうな、訳の分からない匂いを鼻が感じ取った。化ける瞬間を見られるのはダメなのだ。
「よし尻尾は出てないな!」
箱から出る人間の体をたくさん見れたお陰で、尻尾も爪も毛も、人間と同じだった。
......一つを除いて。
「耳残っちゃった...」
いつもよりも上手くできた感じはあったのに、小さい狐の耳が頭についていた。
このままじゃバレる。
消そうと念じても、手で押しても耳は頭にしっかりと残った。
「んー、たためば大丈夫...かな?」
狐の毛色と同じ髪色にしたから、立てなければバレないかもしれない。
水面に映る化けた私は耳を残せば、人間そのものだ。母様に見続けてもらったお陰で、今までで一番の変化だと思う。
(勇気を出すんだ。ここで森に帰ったら、母様に合わせる顔が無い)
「ねえ、あの子のお耳可愛くない?」
人の群れへと向かう私の勇気の一歩は、すぐに止まった。
「ホントだ。狐の耳かな? めっちゃ可愛い」
「もうすぐハロウィンだし、早めの仮装かな。写真撮っていいか聞こうよ」
人間の女が二人近づいてくる。手には板みたいな物を持っている。
(こわい......)
眼みたいな黒い丸が、私の魂を吸いこもうとしてる気がした。
バレた?
わたしを捕まえようとしてる?
「いや——」
母様ごめんなさい。
父様ごめんなさい。
何も言わないで森を勝手に出た私をゆるしてください。
「いやぁっ!!」
森を駆け下りた時以上に走ったと思う。
人間の声が何よりもこわかった。こわい以外を感じる余裕なんてない。
ただ走る。
人間がいない方へと逃げる。
転んで、ぶつかって、その度に私に近づく人間がこわくてデタラメに走った。
ようやく人間の声と匂いがしない場所に着いた時には、胸のドキドキが頭の中に移動したのかと感じるくらいに、うるさく響いていた。
「ぅぅ...」
私をバカにしてたみんなですら、今すぐに会いたい。会って、泣き叫びたい。
——でも。
——でもでもでも!!
不安で振るえる体を黙らせるように、勢いよく力強く、一歩を私は出した。
「まだ......帰らないッ」
ここで帰ったら一生何かに化けれない。
「?」
二度目の勇気で出した私の足は、今度は別の理由で止まることになった。
(——いい匂い...?)
「お嬢さん、迷子ですか?」
今まで聞いた音よりも——川辺の音よりも涼し気な音と一緒に人間の男が私の視界に入ってきた。
白い髪。首まで窮屈になりそうな恰好。手の先から漂う森じゃ嗅いだことのない匂い。
目の前の人間が、私の知らない人間で何を言われたのか分からなかった。
「こんな路地裏じゃご両親と会えないけど——」
難しい顔をした人間はそのまま、近くの透明な石が付いてる木の板の前へと歩く。
近くにはこの人間以外の匂いがしない。あの板の先に、あのこわい人間たちはいないと思う。
「......?」
「あぁお嬢さん。良ければ中に入りませんか? 迷子にしても冒険にしても、こんな寂しい場所じゃつまらないですから」
またしてもいい匂いがして、その場所が人間の動かした板の先からなのだと分かった。
色んなのが混ざった匂いだから、普段なら母様から気をつけなさいって言われてるけど、森の中みたいな安心感がある気がする。
「ここは僕のお店。あそこの席に好きに座って待っていてね。何か温かい飲み物を用意しますから」
人間はよく分からないことを言って、中に入った私が進んだのとは違う場所に行った。行ってしまった。
(外で嗅いだ以上にいい匂いが沢山......ここ何だろ?)
黒い実が沢山ある透明な石。
遊び場にしてる木よりもすべすべな板。
ふかふかのもみじよりも、ふわふわなよく分からない石...?
それに乗って板を触っていると、人間が黒い実たちの前に出てきた。
「お嬢さんは喫茶店は初めてかな?」
「きっさ...テン?」
「おや、初めてでしたか」
少し目が丸くなった人間は、カチチという音を鳴らしてからキレイな絵と小さいごちゃごちゃした黒いのが付いてる軽い板を出した。
(黒いのは汚れかな?)
ごちゃごちゃは忘れて、キレイな絵の方を見る。
変な感じはしないけど、どういう物なのかも分からない。触っても何もないけど、この人間は何をしたいんだろ?
「ここにある様なお菓子——甘いものを飲み物と一緒にお出しする場所のことを喫茶店と言うんですよ。気になったものがあれば言って下さい。ご用意しますので」
「気になる......」
気になると言われても全部が分からない。
森でみんなと食べてる赤い実に似てるのがある白いやつ。
丸太みたいなやつ。
枯れ木よりもキレイな丸くて茶色いやつ。
他にも色々とあるけど、これを見て何を言えばいいんだ?
「...いい匂い」
「フフ、ケーキが決まる前に出来てしまいましたね。お嬢さんにお出しするミルクティーです。少し熱いかもしれませんので、ごゆっくりお飲みください」
目の前に出されたのは私の毛よりも白くて茶色い水だった。
人間や箱の中で嗅いだ匂いとは違うけど、この水からもいい匂いがする。こっちの方が好きかもしれない。
「みるくていー?」
「はい。お嬢さんくらいの歳の孫も好きですので、飲みやすいかと思いまして」
「おいしいの? 川の水よりも?」
「......川の水、ですか......?」
「うん。冷たくて大好き!!」
なんだろ?
人間の顔がおかしな顔になった。だけどそれもすぐに戻ったから、私は雲みたいなフワフワが上っているみるくていーに口をつける。
今まで触ってきたどんな石よりもスベスベしてるから落としそうになったけど、輪っかに指をさしてなんとか口まで運べた。
「熱ッィ」
今まで感じたこともない熱さが、これにはあった。妖狐の仲間が出す狐火よりも熱いとさえ思った。
でも——
「——おいしい」
「孫もよくそうやって、一口目を熱がりながら美味しそうにゆっくりと飲んでましたよ」
「まごってのは人間の子供なの? いつもこれを飲んでるの?」
お腹がポカポカする感覚は川の水でなったことがない。まごって人間がこれを毎日飲んでるなら、それは楽しそうだなと思う。
人間は母様もよくする柔らかい顔になって、私に見えないところをごそごそし始める。
「フフフ。孫は私の子供の子供ですね。今は別々に住んでいますので、偶に私のところへ遊びに来た時くらいですよ」
コトっと、人間はまたもスベスベしてる——今度は平たい石に丸太を置いてみるくていーの隣に出した。
「私、丸太は食べないよ」
「こちらはブッシュド・ノエル。木に見立てたケーキでして、私の一番得意なスイーツですので、是非ともお嬢さんに食べて頂きたいのです」
(人間は丸太を食べるのかな? 父様からは聞いたことないけど)
何度も目をこすってみても、目の前には丸太があるようにしか見えない。森のよりも瑞々しいというか柔らかそうだけど、これも美味しいのかな。
「手で食べると汚れてしまいますので、こちらをお使いください」
「なにこれ」
「フォークと言いまして、ケーキ用の小さい食器です」
そろそろ知らない言葉で頭の中で洪水が起きそうになる。
キラキラ光るふぉーくを手にしてみると、人間が使い方を教えてくれた。
「丸太なのにやわらかい!?」
「丸太に似せてるお菓子ですからね」
かたい丸太を割るつもりでふぉーくを刺したら、思ってた以上にやわらかくて潰れてしまった丸太のかけら。
ゆっくりとそれを口に入れると、森で一番好きな果実よりもすごい味がはじけた!
「丸太おいしい! すごく甘い!!」
「お口にお合いだった様で何よりです」
また母様みたいな顔をした人間。それを見なかったことにして、丸太にもう一度ふぉーくを刺す。
今度は潰れないで取れた。
パクパク。
手が止まらない。
「おいしい!」
「お上手に取れましたね」
「もうふぉーく簡単——ん?」
何か分からないけど、フワフワを食べてるとガリっとした。
最初に嗅いだ匂いとは違うけど、口の中にいい匂いが広がってガリガリが何だったのか分かった。
「このガリガリ、私好きッ!」
「おっ、クルミがお好きでしたか」
「うん。森でみんなとよく食べてるよ」
「お家の方たちと仲が良いのですね。今日はお一人でこの街まで来たのですか?」
(!?)
尻尾が隠せていて本当に良かった。もし、ここで尻尾が見えていたら毛がぼふってなってたかもしれない。
「あぁ......えぇと——」
早く答えないと。
でも何て言えば......。
人間を化かしに来た妖狐ですって言えないし、下手なこと言ったらまたあの黒い眼が付いた板が出るかもしれない。
「——失礼致しました」
「え?」
「幼くとも、お嬢さんが一人前のレディであることを失念しておりました。私が先ほど聞いたことはお忘れ下さい」
頭をゆっくりと下げた人間。
(私変なことしていないよね...?)
にしても。
この人間が使う変な言葉は父様からも、母様からも聞かないから本当に何を言ってるんだろ?
「れでいって何?」
「レディは、一人前の女性の呼び方ですね。お嬢さんは森からこの街まで、冒険をなさっていますから」
「いちにん......まえ?」
「ご立派だったり、大人の女性ということですよ」
「私りっぱ?」
「ええ。もちろん」
「やったぁ!」
上げた両手が何かに当たったけど、そんなのよりもウキウキが止まらない。見えない尻尾がぶんぶんしてると思う。
私の変化で、一人でここまで人間を化かせてるんだ。これは帰ったら、みんなに自慢できるぞ。
「では、立派なレディにお一つ宜しいでしょうか?」
「いいよ! りっぱなれでいが聞くよ」
「ご家族がそろそろご心配してると思いますよ」
その言葉に、丸太に刺したふぉーくを落としちゃった。
(人間って頭の中見えるの?!)
とっさに頭を隠す。頑張ってたたんでいる耳がばれちゃう。
「大丈夫ですか?」
「な、なんでもないヨ!?」
バレて...ない?
危なかった。この人間は魂を吸える板よりも、私たちみたいなすごい術が使えるかも。
アワアワしてる私を見て、人間は何もしないでお話を続けた。
「お嬢さんの冒険を応援したい気持ちは大いにありますが、その冒険からのご帰還をお待ちしてる方々もおります」
「うう......」
「私も幼いころにした事があります。ご両親のもとにお戻りになるのは恐いでしょうが、先ほどの様に知らない人たちが沢山近づいてくるよりは恐くないと思いますよ」
「見てたの!」
私の耳がバレたやつだと直感で分かった。もしかして最初からバレてた?
「直接は見ておりません。あそこにいた友人から聞きました」
「とも...だち?」
「ええ。可愛い少女が慌てて走っているから、見つけたら助けてあげな、と——」
「——っッ」
逃げなきゃ。
この丸太は罠だった?
みるくていも?
もう変化のためにピンとしてる背筋が限界かもしれない。化ける時も、戻る時も見られたらいけないのに——!!
「良ければこれをお帰りの際にお被りください」
跳ぶように逃げようとした私は、人間が持った草の匂いが薄れたものを見て止まった。
(みるくていと似た色......?)
「その付け耳もお似合いですが、またあの様に恐い場面にならないためにも」
「......」
バレてない?
それともバレてる?
人間の顔から何を考えてるか分からない。
「この耳......」
「お似合いですよ。ご両親から頂いたものですか?」
「い、いや......そ...えっと」
「本物にそっくりです。冒険のお供には必須だと思います。ですが、そろそろ日差しも強くなるお時間ですのでこの麦わら帽子もお供に」
人間の言葉は半分も何の話か分からない。
分かるのは妖狐であることがバレてないということ......バレてないよね?
ここからがこの人間との勝負だ。
「むぎわらって?」
「こうやって頭に被るものですよ。帽子の仲間ですね」
人間は不意打ちに手を伸ばしてきた。
逃げそうになる体をガチっと止めて、私は迎え撃つ。ぼうしとやらで何かできるならしてみろ。
だが人間は、何をするわけでもなく薄れた草の匂いを私の頭に載せた。
「お嬢さんの綺麗な茶髪と相まって、とてもお似合いですね。私のお古じゃなければ良かったのですが、あいにくと他には持ってないものでして...」
少しこまった顔をした人間は、キラキラしてるものを出してきた。
みるくてい。柔らかい丸太。ふぉーく。むぎわらぼうし。
今度は何が出てくるんだろ。
「この鏡でご確認を」
水面みたいな石には私がいた。
むぎわらぼうしが頭にある。耳も隠れるくらいに大きいけど、重くはなかった。
「お嫌でなければ、お嬢さんの今後の冒険にお使いください」
これは使えると私は思った。耳が隠せるなら、尻尾とかに全力で変化をすれば簡単に人間の群れに近づけるのだから。
「私これ欲しい!」
「どうぞ。多少の手直しなら出来ますので、それがボロボロになってきましたら私のお店まで来てください」
むぎわらぼうしの中で、たたんでいる耳を立てる。
好きに動かせる耳をパタパタさせながら、むぎわらの端っこに手を回して落ちないように持つ。
(母様に早く見せたいな)
何も言わないで森を出たから、会うのがこわいけど、こんなに一人で頑張った私を早く見てほしい。
「ありがとう。私これで森まで帰るね!」
「お気を付けて」
私のいる方まで来た人間は、外につながる木の板まで歩いて行った。
最初はこわいのと一人で自信が無かったけど、今の私なら人間の中を楽々に歩けるはずなんだ。
「良い目になりましたね。その感じなら、無事に冒険を終えて、ご両親の許へとお帰りになれます」
「...うん!」
一歩を出したところで、私は振り返った。
そこにはもちろん人間がいる。
人間と私だけだった箱だから、何も思わなかったけどこの人間をなんて呼べばいいんだろう?
「ねえ」
「はい。如何なさいましたか?」
「何て呼べばいいの?」
人間は私が言いたいことが分かったと思う。
今までで一番柔らかい顔をして、人間は私に教えてくれた。
「そういえば、自己紹介のタイミングを忘れてましたね。私は、茜と申します。仲のいい人からはマスターと呼ばれてますので、お嬢さんの呼びやすいもので構いませんよ」
あかね。
ますたー。
うん。それならこの人間はこう呼ぼう。
「あかねますたー。ありがとうございました!」
「こちらこそですよ。お嬢さんの帰路に細やかな幸福があることを祈っております」
「ばいばい!」
元気よく外に出た私を待っていたのは、お空からのまぶしい光。
「フフフ...」
むぎわらぼうしで、私の変化はカンペキなんだ。
さっきみたいなことにはならない。
自信いっぱいの私の足には、もう勇気なんていらなかった。




