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扉はしまった

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/03/25

「自分の事ばっかり考えやがって」


 私はそう言って扉を閉めた。

 扉の先にはもう一つの扉。

 友人が住んでいる城に続く扉。


「少しは反省しろ」


 閉め切った扉の中で私は呟く。

 これは一種の恒例行事だ。

 何せ、私は友人の勝手気ままな行いに辟易しているのだ。

 こちらのことを少しも考えない自分勝手な人間性に。


「私の事も少し考えてほしい」


 苛立ちながらそう呟いた。

 大体こうしていると、大抵は友人の方から私の城の扉を叩く。


『ごめんね。言い過ぎた』

『あなたの気持ちや心に寄り添っていなかった』


 そんな言葉と一緒に。

 そうなればこちらも拳の落としどころが出来るというものだ。

 私は小言を一つ言いながら許してやる。


『反省したならもういいよ。だけど、気を付けてね。そうしていると誰もあんたを相手にしなくなっちゃうよ』


 これでおしまいだ。

 だけど、時々相手が意地になって謝ってこないこともある。

 そんな時は仕方ないからこちらから会いに行ってやる。

 意地になっていても仕方ないから。


 そうやって私たちの仲は続いていた。

 だから今回も相手が謝ってこなかったものだから、私は渋々と会いに行こうとした。

 仕方ないか、なんて思いながら。


「は?」


 扉は閉まっていた。


「え? 何で?」


 扉を叩いた。

 だけど、反応はない。

 しばらく待ってみた。

 声をかけてみた。

 扉は開くどころか声一つ戻ってこない。


「なんで?」


 呆然としたまま私は仕方ないので城に帰る。

 困惑しながら私は仕方なしとばかりに自分の城の扉を開く。

 いつでも友人が訪ねてこられるように。


 だけど、今日も友人は訪ねてこなかった。

 ――もしかして、もうずっと。


 浮かんだ言葉を思い切り打ち切った。

 私は今日も友人が訪ねてくるのを待っている。


 多分、開かないだろうな、って知りながらも。

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