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感情の神ティモスは悲しみを知らない  作者: 暁 有沙陽
最終章 永遠の倖せという夢物語
49/50

第四十九話:因果律の不平等



 私はビンタした手前、互いに気まづい空気が流れる創造神と目を合わせないようにしながら、フィリアから〝私〟についての話を聞いた。


「…」

 私は最初、破壊神になるべくして創られた…

 今まで身につけていた六宝神珠は神力を増幅させるものではなく、逆に神力を抑制させるもの…

 そして私は感情を感じ取る能力の他に、破壊の能力も持っている…

 あまりの衝撃と情報過多に、頭が真っ白になる。

「私が…破壊神…?」

「――に、〝なるはずだった〟神。今の貴女は紛れもなく六大神の一柱、感情の神ティモスよ」

 フィリアが力の抜けた私の肩を強く掴み、そう言い聞かせた。 

「……じゃあどうするんだ?破壊神が不在であることを天界の神々に伝えるのか?それともこのまま――」

「伝える」

 創造神が言い切った。


「私が立てこもっていた事実と共に、この五百年、誰が世界を支えてきたのかを話す」

 立てこもってたって、事件じゃないんだから…

 そう突っ込みそうになって言葉を呑み込む。 

 さっきから思ってたけど、創造神って相当な天然ボケなんじゃないか…?


「ですがそうすれば、神々の最高神への信頼が」

「そして、私はデラに最高神の三柱目になって欲しいと考えている」

 は…?

 あまりにも急すぎる展開に、私を含めその場に居た者達が全員創造神の正気を疑う。

 それは再生の神も同じだった。

「…はぁ。どこに己を殺そうとした者を傍に置く馬鹿がいますか」

 再生の神は額に手を当てて頭が痛そうな顔をする。

 仮にも今まで妄信的に崇拝してきた創造神に対して馬鹿呼ばわりかよ…と少し引いた。

 創造神は色々引きずりすぎだし、再生の神は切り捨てすぎだし…逆にこいつらお似合いなんじゃないか?

 私は心の中でこいつらに唾を吐いた。

「……ではあえて言おう。私()()で世界を管理するのは無理だ」

「…は」


「〝無理〟だ」


 創造神の覇気の籠った圧が再生の神にのしかかる。

「それにデラは六大神すべての神珠が吸収されている。その神力は私に匹敵するほどだ」

 創造神に悪気が皆無なのは伝わるが、その言い方はどう甘く見たとて皮肉にしか聞こえない。

「五百年、私の代わりに世界を管理した実績のある君に、最高神の一柱になって欲しい」

 

 再生の神は何も言わず、創造神と目を合わせないでいる。神珠の件を言われてしまった手前断りづらそうだ。

「……私は君を罰したくないんだ。君は私にとって大切な神だから…だから最高神となり、私と共に世界を導いて欲しい」

 いきなりの公開告白がましい言い方に、私と操は目を見合わせる。

 さすがにその言い方は誤解を招くんじゃ…

「創造神様……でも私は破壊神様を想って…」

 案の定、再生の神はそちらの意味で捉えたらしい。その上誰も聞きたくなかったであろう彼女の胸の内が明かされる。

 今の今まで再生の神を優しく見ていたフィリアが、途端にその顔を阿修羅へと変えた。

「私もカタストロフィをいつも想っている。ああそうだ…カタストロフィが私に遺した手紙を君にも読んで欲しいと思っていたんだ。あの手紙が、私と彼、そしてフィリアを繋いでくれているんだ…」

 そして創造神は思っていた以上にピュアだった。

「あらあら…後が怖いわぁ…」

「創造神様ってあんなに天然さんだったんですねぇ…」

 アマテラスとエレオスが揃って苦笑した。


「…創造神様、カタストロフィ様を殺した因果律の存在はどうするおつもりですか」

 再生の神から出た因果律という言葉に、創造神の顔が曇った。

 

「発言をお許し頂けますか?」

 

 突如私の隣にいた操がそう言い放つ。

「操…!?」

 私は小声で何言ってるんだと操の肩を揺らした。

「ここで言わないと後悔すると思うんです」

 操のその一言に言葉が詰まる。

 すると創造神が操と目を合わせ、頷いた。

「私は破壊神カタストロフィ様が五百年前、下界に生きる者達の為に大妖怪達を一掃してくださったこと…心から感謝しています。ですが…」

 否定表現にその場の空気が張り詰めたものへと変わる。

「下界の理不尽さ…不平等さ…そして不確定要素の多さ…私はそれらがあったからこそ、今の文明が…生物が…個性溢れる人間が存在するんだと思います。勿論破壊神様の行動を否定するわけではありません。ですが人は、その理不尽を未然に防ごうと…どうにかしようとして学び、発明し、短い寿命の中で不平等な世界の中から幸せを掴み取ろうと奔走します。そしてそれは子孫らへと受け継がれる…私はそれがとても愛おしいことだと、そう思うのです」

 操の言葉に創造神が目を瞑り、再び頷く。

「さすが、()()ティモスが懐いただけある人間だな…とても良い哲学的思想を持っている…」

 ()()って何だよ…自分で創ったんだろ…

 創造神の呟きに、私は口を尖らせた。

 そして創造神が話を続ける。

「確かに下界は数十年単位で文明が進化するのに対し、天界の文明に関しては何万年も前から変わっていない。これらは危機感の有無による文明発達の差異の確たる証拠…そして天界と下界における、因果律が定める規律の違いというわけか…今まで意識したことがなかったが、そう考えると人間達にとって〝理不尽〟というものは非常に重要なものなのだな…」

 創造神の難しい話を一回で理解した操が、深く頷く。 

「はい…それに…何よりその理不尽がなければ、私と神楽様は出会えなかったことでしょう」

 そう言って隣にいる私を見てはにかんだ。私も操につられて表情が緩む。 

「…くだらない思想ね。私なら」

 そう言いかけて再生の神がハッとした。その様子を見た創造神が目を輝かせる。

「デラ…」

 創造神を一瞥した再生の神が、困ったような、観念したような顔で俯いた。

「……五百年間で培ったいつもの癖です…今までは創造神様を真似た統治方法でしたが、これからは私なりにやらせて頂きますから」

 遠回しに自分が最高神となることを承諾した再生の神に対し、創造神は再び滝のような涙を流した。

 


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