表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

第四十四話:エレオスの興奮



「狐の神獣さん?あなたは何の為に再生の神の命令に従うんですか?」

 私は徐々に距離を詰めて、気絶している大山咋神(おおやまくいのかみ)にこっそり治癒の力を施しながら問いました。

「…主だから。それだけ」

 予想通りの味気ない回答に、さらに興奮が増します。

「うーん、じゃあ質問を変えましょうか!狐さんが再生の神に求めるものは何ですか?あ、何も無いはナシですよぉ!」

 

 ――狐さんが口を開きかけた次の瞬間、通信用ピアスからの音割れが耳に響きました。

 あら…どなたでしょう…

『――レオス!エレオス!』

 この声は…

「ああ!ティモスですね!どうしまし」

 

『今すぐ伊勢神宮に来てくれ!操が!操が死にそうなんだ!再生の神に触られて…!』

 

 その一言で事態が深刻であると察し、明るい対応の仕方が失言だったことを悟ります。

「何があったんです?」

「後で説明するから…!腐敗が肩まで広がってるんだ!早く来て…!いや!前みたいに私に乗り移ってくれ!」

 荒い呼吸と震える声から、ティモスが軽いパニック状態に陥っている事を察しました。

 それにしてもどうしましょう…私も操ちゃんを助けに向かいたいですが、こちらには人質ならぬ神質がいる。下手に動けば大山咋神は殺されてしまいます…

「ティモス、少し時間をください。このままそちらへ向かったり意識を離せばこの神が殺されてしまうので…」

 

「そんな神より操が優先だろ!早く治癒してくれ!」


 ティモスらしからぬ発言に目を丸くした時、私の隣に陽太郎くんが現れました。

「…失礼を承知で、神楽様と話をさせて頂けませんか?」

 断る理由がありません。

 私が頷くと、陽太郎くんが一礼をして私の耳元で会話を始めました。

「…神楽様」

『陽太郎居たのか…!お前からも説得してくれ!』

 ティモスの焦り声に心が痛みます。

 でも私より、陽太郎くんの方が酷く辛そな顔をしていました。

「…できません。僕は…この神社の息子として、大山咋神様の命を捨てることはできません」

 まるで自分に言い聞かせるように話しています。

『お前は操が大事じゃないのかよ!』

「大事ですよ誰よりも!でも…大山咋神様は、みーちゃんも僕も、修行時代に凄くお世話になっていて…自分が助かる為に神様が殺されたと知れば、彼女はきっと死ぬまで自分を責め続けます…!」

『…じゃあ操を見殺しにするのか?』

 ティモスのその一言に、陽太郎くんは悲痛な唸り声を上げます。

 …たった十数年しか生きていない少年に答えを求めるのは違いますね。 

 決断は、私がしなければ。

 私は陽太郎くんの頭を撫でてオントに目配せし、彼を傍から離しました。

「ティモス…今私がいる神社の外に、百を超える人間が集まっています。恐らく皆祓い師…ここで操ちゃんを取れば、彼女への風当たりは酷いものになるでしょう」

 

『っ…!エレオス頼む…!来てくれ!お願いだから!』

 

 今にも泣き出しそうなティモスの声…こんな必死な声は初めて聞きます。

 でも私は、片方だけ選ぶなんて出来ません。

 ――私は慈悲の神エレオスだから。

「ごめんなさいティモス。絶対にどちらも助けますから、待っていてください…!」

 ――絶対に、絶対にどっちも助けてみせます…!

『……私が失敗作だから、聞いてくれないのか…?』

 失敗作…?

「ティモ――」

 ブチッという遮断音と共にティモスからの通信が切れました。

 彼女の最後の言葉は一体…いや、考えている暇は無いです。

「オント、やることは分かっていますね」

「勿論。合わせるよ」

 ティモスのあんな悲しげな声は初めて聞きました…早くしなければ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ