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第三十四話:六大神、集う



「操、みたま!」

「神楽様、六宝神珠は…!」

 私は光の速さで石上神宮に着地し、操達に今の状況を説明した。

 破壊神は五百年前に消滅していたこと、再生の神が今まで破壊神の姿を模倣していたこと、そしてその再生の神が創造神を殺そうとしていること。

 よく考えるととんでもないな…

 

「――というわけで、天界よりも下界が安全だと判断したんだ。だからフィリア以外の五柱がこれから伊勢神宮に集まる。朱里に連絡頼めるか?」

 私が早口でそう伝えると、操が大慌てでスマホを取り出し、電話を掛けた。

「厄介なことになっとるな…再生の神はわてが生まれるずっと前から破壊神様の側仕えをしとったらしいが、まさか謀反を起こすなんて…」

 みたまの表情が陰る。 

「ああ…足止めを名乗り出た武の神も、長くは持たないだろうってヌースが」

 〝武の神〟という言葉を聞いた瞬間、みたまの暗い表情がパッと変わり、その目が血走った。

「待てい…今〝武の神〟言うた?」

「言ったけど…」

 みたまから殺気が放たれる。

「は…?父上が一人でそんな化けもんと戦っとるん?誰も助けんで?はぁー有り得んわ」

 普段の優しいみたまが豹変した。

 てか…

「え?父…?」

 すると、みたまが着飾っていた着物を脱ぎ捨て、前に己の愛刀だと自慢された、七つに枝分かれした剣を手にした。

 そしてその枝分かれした部分を手刀でバリンボリン切り落とすと、丁寧に刃を研ぎ始める。

 

 七支刀とか言う国宝が、ただの一本の剣になってしまった。

 

「み…みたま…?」

「神楽、わては武の神の助太刀に天界行ってくるさかい、操達をよろしゅう頼むわ」

 質問する暇も無く流れる様にそう言われ、みたまは颯爽と天界へ飛んで行ってしまった。

「…」

 私が混乱しているとスっと隣に祖父が現れ、髭を擦りながら今のみたまの行動を解説し始める。

 

 ――祖父が言うには、みたまは武の神アニュイの御子神の内の一柱らしい。天界に居た頃、父・武の神から剣術や神としての在り方を教わりとても可愛がってもらったらしく、今でも大変慕っているそうだ。

 ちなみに私は、そんな事よりあの国宝刀を戦闘用ではないからと躊躇なく壊したみたまの大胆さに驚いている。

 だがそんなどうでもいい事は頭の隅に追いやり、私と操は伊勢神宮へ向かった。


  * * *

 

 伊勢神宮に着くと、門の前にズラリと神宮の神職と巫女達が並んでいて、誰も境内に入れない状態になっていた。その上二人に一人が『緊急事態により立ち入り禁止』と書かれた紙を持っていた為、参拝客やマスコミが多く集まり騒がれている。

 私が操を抱えて塀を飛び越えるシミュレーションをしていると、中央に立っていた老人が操を凝視していることに気づいた。

 そして神職達が集まり、各々のスマホ画面と操を何度も何度も見比べる。(私は本来の姿の為、神力を持たぬただの神職には見えない)

 

 すると一瞬彼らがどよめき、操に九十度の綺麗なお辞儀を見せた。

 同時にカメラのシャッター音とフラッシュがその場を包み込む。前に見たニュースの謝罪会見を思い出した。

 そして――

「天宮様ですね。正殿近くにて宮司様方がお待ちでございます」

 ――と言われ、私達はハリウッドスターの如く自然と野次馬達が開いた道を通って中に入った。


 

 広い境内には外と違って私達以外誰も居ない為、静まり返っている。だが境内に入った瞬間、操の身体が一瞬こわばった。

 無理もない。こんな膨大な神力…下界の人間が感じるのは初めてだろう。私でさえここが下界であることを忘れる。 

 そんなことを考えながら正殿に近づくと、丁度カロン・ヌース・エレオス・オントが集まり会話している最中だった。少し離れた場所に宮司や朱里達がその様子を見て感極まり、涙している姿が見える。

 私はアマテラス達の元へ、操は宮司達の元へと分かれた。

 

「ティモス、来たな」

「悪い遅れた」

 私が皆の輪に入ると、カロンとヌースが微笑み、エレオスとオントが手を振った。そしてアマテラスが正殿の中から外へ出てくる。

「いや、私達も今来た所だ。改めて、急な訪問をすまない…日本国の最高神、天照大御神」

 ヌースがアマテラスに頭を下げると、アマテラスは口元を隠して優雅に微笑んだ。

「いいえ、天界の危機だもの。助け合うのは当然でしょう?」

 そう言って目を細めた直後、アマテラスの表情が真剣なものへと変わる。

「…ずっと話したかった事があるの。本当はフィリアにも聞いて欲しかったのだけれど…話すなら今しかないと思って」

「お話ですかぁ?どうぞどうぞ、聞きますよ〜」

 エレオスが満面の笑みを浮かべてその場に座り込んだ。それを見たカロンも苦笑して地べたに座り、ヌースとオントも少々嫌そうな顔をしながらも敷石の上に座り込んだ。

 畳の生活に慣れていた私はドヤ顔で正座をする。

 その姿を見たアマテラスは「ありがとう…」と静かに呟き、綺麗なあぐらをかいた。

 

「…五百年前、下界で多くの神や人間を殺した堕ち神のことなのだけれど……」

「その正体が破壊神って話か?」

 アマテラスが言いづらそうな顔をした為、私が代わりに話した。

「驚いた……知っていたのね」

 会話の一往復のみで足が痛くなってきたので、私もアマテラスを真似てあぐらをかく。

「…まず、破壊神様が堕ち神になったことは事実よ。でも――」

 アマテラスが私達と目を合わせ、深く息を吐いた。

 

「破壊神様は五百年前、神も人も、誰一人として殺してなんかいないわ」

 

 その真剣な表情と声から、それが事実であることがすぐに理解出来た。

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