表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感情の神ティモスは悲しみを知らない  作者: 暁 有沙陽
第三章 救済、そして深まる絆
15/49

第十五話:愛の神の疑念/学校復学



 私は創造神様の宮殿の廊下を足早に歩く。

 だが、妙な事に誰ともすれ違わない。宮殿内は静まり返っていた。

 私は創造神様の部屋の前で立ち止まり、深呼吸をする。

「あ…愛の女神様…!」

「愛の女神様!どのようなご要件で…」

 扉を叩こうとすると、見覚えのある者達に遮られた。

「あなた達は…確か破壊神様の…」

「は…はい……破壊神様の式神でございます…」

 式神二体が、その小さな体で扉を隠すように私の前に立ちはだかる。

 なぜ破壊神様の式神が創造神様の宮殿に…?

「……創造神様にお会いしにきたわ。そこをどいてくれるかしら?」

「そ、それはできません」

「できません…」

 式神達が慌てて首を振る。

「どうして?」

「えっと…」

「ですから…」

 式神達が互いの顔を見合い、言葉を濁した。

「通して」

 私は式神を押しのけ、無理やり創造神様の部屋に入る。

 創造神様は椅子に座り、窓から天界の景色を眺めていた。

「創造神様、ティモスの件でお話があります」

「…」

 …反応が無い。

「フェリシアス様!」

 先程より声を張り上げたが、創造神様はピクリとも動かない。

「創造神…様…?」

 心配になり、創造神様の元に駆け寄ろうとすると、後ろから何者かに肩を掴まれた。

 驚いて振り向くと、後ろに立っていたのは破壊神カタストロフィ様だった。

「フィリアか、何用だ」

「……創造神様に…会いに…」

 私は急に現れたカタストロフィ様を見て固まる。

「…感情の神の件か?」

 カタストロフィ様が私の肩から手を離した。

 私はハッとして自分の目的を思い出す。

「はい、ティモスの破壊について――」 

「それ件に関して話すことはない。戻りなさい」

 言葉を遮られた。

「ですが…!」

 

「戻れ」

 

 初めて見る、あまりに冷たいその表情に、私は目を見開き、たじろいだ。

 破壊神様は立ち尽くす私の横を通り、創造神様の元へ歩く。

「フェリシアス、調子はどうだ?」

 私は勢い良く振り返った。創造神様は破壊神様の声に反応し、身体を動かす。その横顔にはかつての威厳ある面影は無い。心強いと感じていたその広い背中でさえ、今は弱々しく感じる。

「カタストロフィ……すまない…お前はここまでしてくれているというのに…すまない…」

 その震える声を聞いたカタストロフィ様は、苦しげに顔を歪ませる。

「……失礼します」

 私は足早にその場を去った。頭の中が酷く混乱している。

 創造神様…いつからあんな状態に…?それに破壊神様も…あんな怖い顔…

 私は必死に涙を堪えた。

 落ち着け…今私がやるべき事は、ティモスの破壊を止めること。日を改めましょう…


 私は下界の様子を観察する為、カロンとヌースと合流して、六宝宮殿にある水鏡を覗き込んだ。

 天界での静寂とは裏腹に、下界は今日も今日とて賑やかのようね…


  * * *

 

「なぁ…今日やろ?天宮さんの復学日…」

「うん…正直来んで欲しいわ…」

 朝からクラスメイトの話題は〝天宮操〟で溢れていた。

「姫おはよー…」

「おはよー、元気ないな…大丈夫?」

 答えの分かりきった質問を投げかける。

「だって今日、天宮さん来るやん…最悪や…」

 お前が天宮の本破いたのが悪いんやろが。自業自得や。

 私の頭の中はいつも誰かの悪口や嫌味で溢れてる。

 …でも天宮も天宮や。関係無い私達にまでゴミ吹っかけるとか…普通におかしいやろ。とんだとばっちりやったわ。

「…大丈夫やよ!天宮さんが杏樹に何かしたら私がデコピンするから!」

 私は可愛らしく両腕を動かし、眉尻を上げた。

 思っていることと口に出すことは正反対。

「あはは!デコピンて!姫可愛いー」

「なになに?何の話ー?」

 クラスメイトが男女問わず私の元に集まってくる。私は今日も笑顔で神対応。可愛い女子に群がるコバンザメ達へ愛想を振り撒く。

「みんなバカにしないでよ〜」

 私は真中姫。いつも笑顔で可愛いクラスの人気者。

 そして今日は、停学処分を受けていた大嫌いな女が復学する日。 

「あ…来た…」

 天宮が教室に入った瞬間、クラス内が静寂に包まれた。全員が天宮へ視線を向ける。

「何だ何だ?急に静かになったぞ」

 すると、天宮の後ろから編入生が顔を出した。

 ああ…そういえば、この編入生も何故か天宮と一緒に三週間学校休んどったな…どうでもええけど。もうとっくに辞めたんや思っとったわ。

 二人の足音が静かな教室に響き渡る。天宮は相変わらずクールぶった無表情。

「お!いたいた、未緒!美玖!」

 編入生が操の腕を引き、クラスメイトの小桜未緒と亀井美玖の元へ駆け寄った。

 天宮が柔らかな表情で会話をしているのを見て、クラスメイト達がザワつく。私の心もザワついた。

 え…何その顔…

 すると、天宮が私の方へ歩いてきた。

「ひっ…ひひ姫ぇ…!こっち来る…!」

 杏樹が震えながら私に抱きつく。私を巻き込むな…

 

「ごめんなさい」

 

 すると、天宮が杏樹に向かって頭を深く下げた。

 は…?

「田中さん、謝罪が遅れてごめんなさい。あの時は大切な手記を破かれて、頭の中が真っ白になって…」

 天宮の表情を見て、杏樹もタジタジになる。

 ――違うやろ…あんたのキャラは…

 ――ずっと無口でそんな表情(かお)したことなかったやん…

「あ…いや……私も…破ってごめん…そんなに大切だったって知らんくて……」

 ――やめてや…

「腕はもう痛くない…?」

 ――〝天宮操〟がそんな顔で素直に謝ったりしたら…

「う…うん、大丈夫…」

「よかった…」

 ――みんながそのギャップに惹かれるやん…

 予想通り私を取り囲んでいたクラスメイト達は皆、天宮に釘付けになる。

 ああ、これ知っとる…この視線は…強い興味と好奇心…そして…

 憧れと羨望…

 私は拳を強く握りしめた。


 ――イライラする。


 何でお前は何もしなくても一目置かれる存在なの?

 何で他人の目を気にしないで生きていけるの?

 何で自分を理解して受け入れてくれる友達がいるの?

 ………ずるい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ