わるい魔女は死んだ
脳裏に浮かんだ言葉をそのまま。初投稿です。
わるい魔女は、いつの間にかひとりぼっちになっていました。かつて彼女がいじめ、殺したこどもたちが成長し、おとなになったのです。彼らはわるい魔女を指差して言いました。「魔女だ!」と。「殺せ!」と。
そのとき、彼女のそばには誰も居ませんでした。かつてを共にした魔物たちはすでに亡く、巨人たちは彼女に見向きもしませんでした。
彼女はひとりぼっちでした。世の中の寓話では、ここで彼女は悔いて、それをこどもたちが受け入れてハッピーエンドになるのですが、世界はそう優しくありません。
彼女を捕らえたこどもたちは口々にこう言うのです。「悪い魔女を殺せ!」
そうして彼女は広場の断頭台にのぼりました。かつて、たくさんのこどもたちがここで死んでいった、その断頭台には血が染み付いています。それを見た時、彼女は恐怖に震え必死に命乞いをします。
それを見て、みんなは笑います。あざ笑います。無様だと笑います。誰も彼女を助けてくれません。
断頭台のロープが切られました。落ちていく刃が首を落とす寸前、彼女の脳裏には様々な思い出が去来します。ですが、その中で本当に仲間と呼べる存在はいませんでした。友達と呼べる存在もいませんでした。それに気づいた時、彼女の両眼からは涙が溢れます。
彼女の視界が急に逆さまになりました。くるくると世界が回ります。彼女は最後に何かを伝えたかったのか、口を開くそぶりを見せました。
彼女は何を言おうとしたのでしょうか。コトン、と言う音と共に地に落ちた首に貼りついた虚ろな目で、最後に何を見ようとしたのでしょうか。
そして広場には歓声が響き渡り…ませんでした。首が落ちた瞬間、みんなは興味を無くしたように足早に去っていきます。
彼女の死を喜ぶものも、悲しむものも誰1人いません。彼女はもう死んだのです。それ以上、彼女に興味を持つものはいません。
かつて、数多のこどもたちを殺した驕慢の魔女は、誰からの思いも、怒りすらも向けられることなく終わったのでした。
おしまい。