10年間付き合っていた婚約者に婚約破棄されて落ち込んでいた俺を慰めに来た幼馴染のエルフといい感じの関係なんですが、別に問題ないですよね?
「はぁ・・・・・・なんでだよ・・・・・・」
そんなことを重たいため息と一緒に言っていたのは俺、オリバー・クリーマン。
俺は昨日、10年間付き合っていた婚約者に酒場で婚約破棄された男。
周りの人達が慰めてくれたが、絶望の闇に落とされた俺には効果なしだ。
それに、慰めてくれた人たち全員即婚者だったし。
いいよな!
あいつらは恋愛成功してるんだもん!
いいよな!
俺の気持ちなんてわかるはずがない。
こんな感じで、俺は今自分の部屋のベッドの中でうずくまっていた。
弱い男だなと思うやつもいるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
だって俺は10年間付き合っていた婚約者に、もうあなたはいらないって言われたんだよ!
そりゃこうなるよ。
俺はその後の数日もずっとこんな状態だった。
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「はぁー・・・・・・」
俺はまだ病んでいた。
さすがにめんどくさい男だな。
そう思いつつも、俺はまだベッドの上でうずくまっていた。
そうしているうちに、時刻は12時を回った。
そして、1階からこんな音が聞こえてきた。
「コンッ、コンッ、コンッ」
ん?
なんだ?
別になんも荷物頼んでないぞ?
よし、無視しよう。
「コンッ、コンッ、コンッ」
無視、無視。
「コンッ、コンッ、コンッ」
無視だ、無視するんだ!
「コンッ、コンッ、コンッ」
あー、もういい!
イライラする!
玄関に行こう!
そんでさっさとどっか行ってもらおう!
「あのー、すいません、どっかいってもらって・・・・・・え?」
「こんにちは、オリバー」
「え、なんでお前が・・・・・・」
「あなたを慰めようと思って」
扉を開けたところに立っていたのは、俺の幼馴染だった。
名前はアイル・ヘルサー、エルフだ。
正直言って美人だ。
彼女の金髪の髪は日に照らされてキラキラひかり、すごくサラサラそうだ。
ただ、そんなアイルがなんで俺をわざわざ慰めに来たんだ?
なんの関係もなかったはずだ。
「なんであのことを知ってるんだ?」
「オリバーの元カノと友達だったから、昨日酒場で聞いたの」
あー、そういえばそんなこと言ってたな。
「そうか、まぁ、上がってくれ」
「なにー?本当に慰めてほしいの?」
「いや、別に」
アイルは子供の頃からずっと人をからかう癖がある。
だからこれくらいの塩対応がアイルと接する時は丁度いい。
「はい、これ」
「あ、ありがとう。・・・・・・うわぁ、いい匂い!」
「このお茶はカプスのお茶だからな」
「ええ、いいの?そんな高いお茶もらっちゃって?」
「別にいいよ」
アイルはなんだかんだいいやつだ。
今も一応遠慮してくれた。
「ねぇオリバー、やっぱあなた元気ないよね?」
「そりゃそうだろ、長年付き合ってた彼女に振られたんだ。しかも婚約してたんだぞ!」
「お、ちょっと感情的になったね」
ほら、またからかった。
ただ、ちょっと気が楽になった気がする。
ほんの少しだけど。
「ねぇ、ちょとお散歩行かない?気分転換しようよ」
「・・・・・・まぁ、いいけど」
「よし、じゃあ早速出発!あ、お茶飲んでからね!」
そうして、俺とアイルはちょっとした散歩に出かけることにした。
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「ねぇ、早くしてよ!」
「わかったから、ちょっと待てって」
俺は散歩に出かけるための準備をしていた。
まず、服を着替えて、外に行くときはいつも常備している剣を腰にまく。
こう見えても、俺は元Aランクパーティーのメンバーだ。
ある程度の戦闘はできる。
今日も、万が一に備えて剣を持っていく。
アイルが怪我でもしたら、俺に責任があるからな。
「よし行こう」
「オッケー」
こうして、俺とアイルは散歩に出かけた。
散歩に出かけてからは、アイルに俺の中にたまっていた愚痴などを聞いてもらった。
おかげでだいぶ気持ちが楽になった。
素直に感謝だな。
「お腹が空いてきたし、ご飯食べよっか」
「そうだな、何が食べたいか言ってくれ」
「私、お肉食べたい!」
「それなら山の方に美味しい肉料理屋があるからそこに行こう」
今から向かう店は少し遠いが、少し歩く価値があるくらい美味しい料理が食べれる。
俺のお気に入りの店だ。
ただ、その店がある場所は少しモンスターが多い場所にある。
気を付けて行こう。
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「つーかーれーたぁー」
「もうすぐだ、我慢しろ」
アイルが愚痴を言うが、軽い気持ちで返す。
実際、あと数分でつく。
これくらいは、我慢してもらわないと。
「ん?」
「どうした」
「なんか、音が聞こえない?」
「そうか?俺は聞こえないが・・・・・・」
「オォォォ!」
「あ、これか」
やっと俺にも聞こえた。
そしてその音は俺たちの進行方向から聞こえる。
そして、その方向には大量のゴブリンがいた。
「キャー!ゴブリンだ!」
「騒ぐなって」
俺は素早く短剣を腰からとった。
「グシャャャ」
「グワォォォ」
俺は一瞬でゴブリンの大軍を消し去った。
「す、すごいわね」
「まぁ」
あれ、なんでアイルは戦わないの?と思ったかもしれないが、
あいつは生まれてからずっと魔法が使えない。
普通だったら、エルフは魔法を使う。
「ごめんね、私が魔法使えないから・・・・・・」
「気にするな、お前のせいじゃない」
「・・・・・・」
「どうした?」
「いや、なんもない・・・・・・」
なんかアイルが急に変な反応をした気がするが、気のせいだろ。
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「うん!おいしい!」
「ふっ、良かったな」
「あ!散歩に出かけてから初めて笑った!」
あ。
確かにそうかもな。
実際に気は楽になっているからな。
「ん!うまいな、これ!」
「ふふっ」
「なんだよ」
「かわいいなって」
「おい、馬鹿にするなよ」
「別に馬鹿にしてないよ」
「え・・・・・・」
胸の中で何かがざわめく。
そして、心拍数があがる。
なんだこれ。
それに、急に手汗が出てきた。
耳が熱い。
「オリバー大丈夫?なんか顔赤いけど?」
「あ、ああ、大丈夫だ・・・・・・」
ませか、照れてるのか?
しかもあのアイルの言葉で?
信じられない。
この後、俺はアイルとの会話があまりかみ合わなかった。
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「おいしかった!」
「良かったな」
アイルがご満悦そうな笑顔をしていた。
俺も幸せな気分になってきた。
ただ、この幸せはもう終わってしまう。
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この後、俺たちは明日のための食材の買い出しに向かった。
「たくさん買ったわねー」
「まぁな」
確かにたくさん買った。
3週間分ぐらいだ。
なぜなら・・・・・・
「俺、旅に出ようと思うんだ」
「え!?」
俺は10年間付き合っていた婚約者に婚約破棄された。
その結果、今日にいたるまでずっとひきこもっていた。
最終的にはアイルに引き出してもらったが、
もしあいつがいなかったら俺はずっと引きこもっていただろう。
だから、俺はこの弱い心をたて直すために、3週間程旅に出る。
そんなことを説明した、それを聞いたアイルはものすごくびっくりしていた。
「・・・・・・」
俺たちは家への帰路についていたが、
アイルがなにか考えているような表情をしていた、家に着くまで一言もしゃべらなかった。
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「アイル、今日はありがとう。本当に助かった」
家に着くと俺はそんなことを言った。
これでしばらくお別れだな。
俺はそんなことを考えていたが、アイルがこんなことを言った。
「私も・・・・・・私もオリバーと一緒に旅に出る!」
は?
何を言ってるんだ、こいつは。
意味が分からない。
なぜ、アイルもついてこないといけない?
「私、心配なの。オリバーがとんでもないことをしそうで・・・・・・」
「その気持ちはありがたいが、俺はお前が考えているようなことはしない。心配するな」
「・・・・・・」
アイルが下を向いて黙りこんでいた。
「どうした、早く帰らないと暗くな・・・・・・え?」
アイルが立っている場所の地面に、一滴の水が落ちた。
最初は雨漏りかなんかと思ったが、そうではない事に気が付いた。
「ぐすん、ぐすん・・・・・・」
一滴の水とは、アイルの涙だったのだ。
「ど、どうした?なんで泣いているんだ?」
俺は涙で顔がぐしょぐしょのアイルを見て思わず動揺してしまった。
「だって、だって!」
「クリフがどこかにいなくなりそうで怖いんだもん!」
「っ!」
ああ。
そうか。
図星をつかれてしまった。
さすがアイルだな。
感がいい。
そう。
俺はこの旅が終わったら、
俺の命を絶とうと思っていたのだ。
あんなにろくでもない人間が、アイルのような人間から幸せをもらうのは間違っている。
俺はそう思ったから、この決断をした。
だが、アイルに図星をつかれてしまった。
かっこわるいな。
俺ってほんとうにかっこわるいな・・・・・・
「え?オリバー・・・・・・」
すっかり目の周りが赤くなったアイルがこちらの顔を見た。
「あなた、なんで泣いてるの?」
「え?俺は泣いてなんか・・・・・・」
俺は自分の手で目のあたりを触ってみた。
そして、俺は手に冷たいものがついたのを感じた。
頬を何か冷たいものがつたっていく。
口の中が少し塩辛い。
「オリバー!!!」
アイルが俺の方におもいっきり走ってきた。
そして、俺の胸のなかに飛び込んできた。
「アイル・・・・・・」
体にアイルの熱が伝わってくる。
温かい。
「アイル、俺は本当に幸せになってもいい人間なんだろうか・・・・・・」
「いいに決まってるじゃない!!!」
「けど俺はあいつを・・・・・・婚約者を幸せに出来なかった!!!」
「別にいいのよ!過去のことなんて!他の誰かを幸せにすればいいの!」
ただ・・・・・・
俺には・・・・・・
「俺には幸せにする人がいない・・・・・・いなくなってしまったんだ」
「だったら・・・・・・だったら私を幸せにして!!!!!」
「は!?お前それどういう・・・・・っ!?」
アイルの顔をが俺の顔に近づいた。
ほのかに香るシャンプーのいい匂い。
そして、今日の昼に食べたステーキの匂い。
唇から感じる、すべての罪を包み込んでくれそうな、温かい体温。
「・・・・・・」
二人の思いが確かに繋がった瞬間。
「だから、ね?」
「誰だって幸せになる権利がある。そして、幸せにさせる権利もあるの」
「本当、なのか?」
俺は怖い。
また幸せにできないかもしれない。
「本当よ。だから、これからは二人で頑張っていきましょう」
「アイル!!!!!」
俺は自分の手をアイルの腰に回し、アイルを抱き返した。
さっきよりも体温が温かい気がする。
「これが幸せの温もりか・・・・・・」
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こうして俺たちは、新しい関係を築いた。
結局、俺は旅には出ず、アイルとずっと一緒にいた。
ご飯の時や、出かける時も。
同じベッドでも寝た。
今考えると、あの夜が人生最良の一時だったかもしれない。
いまでは、俺とアイルは結婚し、新しい家族もできた。
本当に幸せな毎日を送れている。
アイルに感謝だ。
ちなみに、俺の元婚約者が結婚した相手はとある男爵家の長男だったらしいが、
その男爵家一族がひどい女遊びをしていたことが王宮にばれて、とんでもないことになってるらしい。
領地を全部取り上げられるとか。
なんというか・・・・・・
ご愁傷様です。
こんにちは、もしくはこんばんは。
はるてぃーです。
今回は、初めての短編、そして異世界恋愛に挑戦してみました。
まだ高評価、もしくはブックマークをつけていない方はぜひ付けてください!
執筆のやる気が上がります!
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執筆している連載中の小説:
「夢見た異世界で最強魔法使いになろうと思うんだがどう思う? ~ゆるーく最強を目指したい俺のスローライフ、だから最初から最強なのは困るのだが?けど可愛いヒロインと同棲できるので許します~」
ぜひ読んでみてください!
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