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ボランティア活動

 次のボランティア活動の日、STEは新宿区にある商店街の、落書きを消すボランティアに参加した。やはり早朝に集まって、軍手をはめ、マスクをし、それぞれ布と薬品を持ってシャッターや壁の落書きを消していった。例のおそろいTシャツを着て。

「今日の課題は、挨拶を元気にしよう、だ。アイドルたるもの、挨拶ができないといけない。大丈夫かな?」

植木がメンバーに声を掛けた。

「はい!了解です!おはようございます!こんな感じですか?」

篤は朝からテンションが高い。

「そうだ!篤、いいぞ!他のみんなも、やってみよう!」

植木がそう言うと、他のメンバーも、

「おはようございます!」

意外に、みんな頑張った。

「ん?瑠偉、言えたか?」

植木は瑠偉を見て、少しからかうように言った。すると瑠偉は、

「おはようございます!」

もう一度大きな声で言った。

「よしよし。大樹は?」

植木は更に大樹の方に向いて言う。

「お、おはようございます!」

ちょっと無理している大樹だった。だが、メンバーが「あはははは!」と明るく笑ったので、大樹のテンションも上がった。

 他のボランティアの人たちに加わる時に、メンバーみんなで「おはようございます!」と挨拶をした。落書きを消しながら、人が通ると「おはようございます!」。

「だんだんアイドルらしくなって来たな。」

内海がこっそり植木に耳打ちした。


 平日にはデビュー曲の練習をし、ボランティア活動は隔週末に行った。次は群馬県の山に植樹のお手伝い。その次はハロウィンの翌朝の渋谷センター街のゴミ拾い。そして、その直後に季節外れの台風被害があり、次のボランティアは、その被災地でゴミの片付けを行った。

 被災地でのボランティアは、隔週と言わず、毎週土曜日に参加することにした。そこには、若い人たちもたくさんボランティアに参加しに来るので、良い宣伝にもなると植木は考えた。

「あの、うちの子たちはアイドルの卵なんですけど、避難所で何かお手伝いできる事はありませんか?」

植木が地元自治体に問い合わせると、それなら何か、避難者を愉しませるような催しをお願いしますと言われた。

「喜べ!君たちの初のお披露目が決まったぞ!」

植木がメンバーたちに言った。

「何ですか?」

流星が代表して問う。

「避難所で、デビュー曲を披露する。」

植木がどや顔をしてそう言った。

「え、え、うそー。やばいやばい。」

光輝がうろたえる。

「なんだ、そりゃ。あはははは。」

篤が光輝をからかい、みんなも笑う。

「だってー、緊張するよぅ。」

光輝が言うと、碧央と瑠偉もコクコクと頷いた。

「大丈夫だよ。練習した通りにやればいいんだから。」

涼が言った。ダンスを披露するのに慣れている涼は余裕である。けれど、歌を人前で歌うのは、みんな初めてだった。友達とカラオケに行く事くらいはあっても。

「牧口先生によると、ステージで歌うっていうのは、カラオケとは全然違うらいしよ。緊張するし、歌詞が飛ぶ事もあるって。」

内海が言った。

「怖い事言わないでくださいよー。」

大樹が言った。

「とにかく、君たちはアイドルだから、まずはお愛想。歌は挑戦的だけど、その前と後は、良い子で可愛い子でいるんだよ。」

内海がそう言うと、メンバーはみなで、

「はーい。」

と声を揃えた。



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