5.裁き
感職式にてレオは滅竜者と告げられた。
「あなたの天職は【滅竜者】邪教徒です」
目の前の女神の王のように神々しい女性は俺にそう告げた。
(め、滅竜者……邪教徒……そう来たか。)
確かによくよく考えればこの職業が出るのは当たり前である。
というか、何を油断してたんだ……
そう自分に叱責をしたいくらいだ。
未来の姿から天職が告げられるなら、竜、すなわち神に敵対するものという職業が出るのは何も不思議なことではなかった。
完全に俺の油断が招いたことだ。
最近幸せすぎて当初の目的を忘れていたのだ。
その油断のせいで早速ばれてしまった。
巫女に……そして父に……
俺は告げられた瞬間から呆然としたまま顔を落とし上げることができなくなっていた。
巫女の顔も、父の顔も見たくなかったのだ。
きっとまたあの軽蔑の目、前世と同じ期待されないあきらめられた自分に戻るのが嫌だった。
「な、何かの間違いでは?滅竜者?邪教徒?そんな職業聞いたことがない!」
父はしばらくの沈黙の後巫女にそう告げた。
「間違いではありません。私の能力に間違いはないのです。」
「そ、そんな……」
「残念ながら…そして気の毒にはなりますが彼は天に返すしか無いでしょう。」
巫女はそう告げた声からは恐怖と軽蔑が見て取れた。
「ふざけるな!そんなの!そんなのがあるわけがない!」
「でも事実未来では神殺しが行われておりました。」
「それは未来の一つだろう?必ずそうなる保証なんてどこにもないじゃないか!」
「いえ……見たところ彼の生きる未来では必ず邪教徒になっていました。必ず竜に挑むという愚行を行っていたのです。」
巫女ははっきりとそう告げた。
間違いはない、これは当たり前のことだ。
俺は依然顔をあげる事が出来なかった。
「許されざる罪……ですが早くに分かってよかった!そうなる前に天に送ることができるのですから!」
巫女はそういいながら手を振り何か合図を出した。
「信じない……僕は信じない!だからこの子は殺さない!」
「そんなことをしては神の怒りを買うだけです。あなた方もろとも消されますよ?」
そう言って前に手を出す。
すると神殿の奥から十人ほどか、騎士が現れた。
巫女を守る近衛騎士のようなものであろう。
彼らは巫女の前に立ち剣を抜き構えた。
(これはやばい絶対絶命だ……こんなところで…こんな…くそっ…)
じりじりと騎士は迫ってくる。
すると父は一歩前に出て叫びだした。
「だから何だ!僕は息子を信じる!」
「その道は破滅の未来ですよ?」
「それでも、何があっても息子を信じ守るのが親の役目だからね。」
(……)
俺は顔を上げた。
父さんは気合の入った顔で巫女をにらみ、そして俺を見てニコニコと笑った。
その目には信頼と大丈夫という固い意志があった。
ほんとになんて人だ。
こんな俺を守ってくれる最高な父親。
俺のことをちゃんと見てくれているのが分かる。
「ありがとう。お父さん」
そう一言俺は返した。
「当たり前だよ」
そう言って父は微笑んだ。
「守るって言っても。この状況どうするのですか?」
巫女はそう言って騎士をさらに近づけてきた。
確かにほんとにそうすればいいんだ。
死にたくないし死なせたくない。
どうする。考えろ。
「大丈夫。父さんに任せときなさい」
父はそう言って俺の頭を撫でてそして唱えた。
「魔道具【天使の羽】起動」
「まずい!逃がさないで!」
唱えると俺と父の周りが白い光に包まれた。
そしてそのまま気を失った。
「ちっ!」
巫女は舌打ちをしてふてくされたように見えた。
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気が付くと見たことのある建物の前に立っていた。
そう俺の家だ。
俺らは帰ってきたのだ。
(よかった……)
「でも一体何なんだ……」
「これはね、僕が作った魔道具……魔法を起動できる機械さ」
ほう!魔道具すごいな。
「苦手な魔法もこれなら使えてね!難しいのでも魔力さえたまればすぐに……とそれどころじゃない」
そう言って父は急いで家の中へと入っていく。
そうして事のあらましを母にも話していた。
俺も家に入り中に入ると母は泣きながら抱きしめ「ごめんね」と言っていた。
俺も抱きしめ返した。
そうして泣き止むと家族会議が開かれることになった。
議題は俺の今後についてで、長い話し合いの末俺を殺したことにし隠しかくまうことに決めた。
村の人たちにも協力を頼みに行った。
村の人たちは快くいつもお世話になってるからと言って協力してくれることになった。
そうして俺の隠れ住む生活が始まった。
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隠れ住む生活はつまらないものだった。
家から出るのは禁止。
ごはんの時以外は誰とも会えず、家の地下で一日を過ごした。
そして誰かが俺を探しに来たら、村人全員でうそをついてくれていた。
そうして一週間がたち捜索の人も少なくなってきたころだった。
あれが起きたのは……
いつも通り地下で目覚めた俺は、ごはんの時間までただただボーとしていた。
しかしいつまでたってもご飯は来ず気になって外に出てみることにした
そして外に出ると俺は驚愕した。
あたり一面火の海になっていたのだ。
道には焼け焦げた家の残骸、死体が転がっていた。
(何事だ!?父さんと母さんは?)
そう言ってあたり見渡すと、火の中心に父と母がいた。
そしてその相手には大きなトカゲ……
いや竜がいた。
俺は急いで外に駆け出し親の名前を叫んでいた。
「みつけた。」
竜はそういい俺のほうに向かってくる。
(やばい!)
俺は急いで逃げ出した。
しかし火に囲まれ遠くまで逃げられない。
「やばい!やばい!くそ!俺のせいだくそ。ここで終わりたくないっ。くそお。」
竜は俺の近くまで走ってくる。
口を開け殺そうとして。
どんどん近づきそして……
俺の目の前で止まった。
竜と俺の間に人がいたのだ。
そう父だ。
父は俺に代わり竜にかまれていた。
「このガキまたっ…」
俺はパニックに陥っていた。
目の前には竜とそれに深くかまれている父。
きっと腹には大きな穴が開いているだろう。
そんな状況を見て俺の頭は真っ白になった。
「と、とうさ…あ、ああ、あああああ」
俺はパニックだった。
守ると、この人たちだけは死なせたくないと思った最高の父が今致命傷を負っているのだ俺のせいで。
頭働かなかった。
もう絶望していた。
村人も焼けしに、村も焼け、父まで…
(もう終わりだ。)
そう思った。
するといきなり父がこっちを向いた。
そして笑顔で何かを投げてきた。
俺はとっさにそれをキャッチした。
それと同時に父はしゃべりだした。
「【天使の羽】起動。」
その言葉で俺は今から何が起こるか。
父が何をしたかを理解した。
「父さん!」
俺は叫んでいた。
父は代わらず笑顔で一言俺に告げた。
「生きろ。」
そうして俺は光に包まれた。
めちゃめちゃ書きました。すいすい書いたのでつたない言葉もご容赦を。