16.作戦会議
一度はバラバラになりかけた一味だったが、全員の意志で革命をすることが決まる。
そしてこれは、その決起集会の後2時間後の話だ。
「緊張してるかい?」
「そりゃそうでしょう……逆にこの状況で緊張しない人なんていますか?」
「まあ、ほとんどいないだろうね……いるとしてもゾフくらいなものかな?」
「確かにゾフさんは緊張しないかもですね。」
そう言って王城前の茂みの中で俺と頭はそんなふうに笑い合う。
「改めて、ありがとうね。こんな無茶に付き合ってくれて……」
頭は申し訳なさそうな顔をして突然俺にそう告げる。
「いきなりですね……いえ、俺も入ったのは最近ですけど、一家の一員ですから当然ですよ。」
「そう言ってくれるのはうれしいけどねぇ……とはいえ正直申し訳ない気持ちでいっぱいだよ……はた目から見たらほとんど負け戦……自殺志願にしか見えないようなことなのに、入ったばかり……ましてやうちの子に無理やり入れさせられた子に付き合ってもらうなんて……ほんと、すまないね……」
そう言って頭は俺にあたまを下げる。
「あたまを上げてくださいよ……!さっきも言いましたけど、別に俺は無理やり参加させられてるわけじゃないですから……俺も自分の意志で……リヒトさんを助けたくて参加してるんですから……」
(そう、これは俺の意志だ……リヒトにはたくさん助けられた。リヒトが居なければあの時、俺は鬼に殺されてもうこの世界にはいなかっただろう……そう、リヒトには本当に恩がある……それに、俺は純粋にリヒトが……いやこの一家が俺は好きになってるんだ……だから……)
「それに……いや、何でもないです。だから、謝らないでください」
俺は頭の目をまっすぐ見てそう伝えた。
「ありがとうね……ほんとにあの時あんたが入ってくれてよかったよ……」
頭も、あたまを上げてまっすぐ見つめて俺にそう返した。
「いえ、それこそこっちのセリ……」
ドゴオオオオオォォォン
そのタイミングで城のほうで爆発が起こった。
「始まった、みたいですね……」
「ああ、そうみたいだね………………。よし。あたいらも行こうか」
「……はい。」
「本当に大役を任せて悪いが……お前さんだけが頼りなんだ……レオルド。……頼むよ」
「はい。精一杯頑張ります。」
「よしいくよ……」
そうして俺らは立ち上がり王城のほう歩き出した。
そして歩きながら俺は魔法唱えた。
「水中級魔法 霧隠」
俺と頭は魔法によって霧に覆われ見えなくなる。
それと同時に頭は俺にうなずいた。
「さあ、行こう革命の開始だ。」
「はい!」
(絶対成功させる……それに……竜の血。俺がこの世界に召喚された意味で、父さんの仇でもある『竜』の血……。そんなものがあるならもしかしたら何かしらの竜の情報もあるかもしれない。一度は絶望して、死のうと思った。使命なんて……復讐なんて……すべて忘れて生活した。でも、やっぱり、俺は竜が許せないのかもしれない。もし何か情報を得られるなら……)
そうして俺と頭は王城へと走り出し、王城へと乗り込んだ。
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時は遡って2時間前、アジトの一室。
あの決起の後、お頭と幹部の3人、そして俺は作戦を決めるためすぐに集まった。
「みんな結局こうなってしまって本当に申し訳ないね……すまない……」
開口一番お頭はそう言って、俺たちに頭を下げた。
「頭ぁが謝ることじゃぁねえよぉ。むしろ謝んねぇでくれぇ頭ぁ」
「そうだよ、頭!これはもう頭だけの責任じゃねぇ!俺たちの総意で決まったことなんだ!だから、それを踏みにじるようなことをあんたがしないでくれ!」
レミィとゾフはそろって頭にそう言った。
頭は「そうだね……」と言ってあたまを上げはにかんだ笑みを見せた。
(一回はどうなることかと思ったけど……全員の気持ちがそろってよかった……ほんとすげえな、一家って……でも……)
「君たち……盛り上がってるところ水を差して悪いようだけど、正直あたしは反対だよ。」
そんな、話をしてる中一人の女性がそう言った。
「ちょっと、マイルーン!」
「レミィ!アンタは馬鹿だからわからないかもしれないけど、正直今この状態で革命をするのは自殺行為でしかないの!少し考えればわかることなのよ!」
(そう、それなんだよな……)
さすがはマイルーンさんだな。彼女はリヒトさんたちと同じ幹部の一人で、諜報活動を担当している人だ。見た目は黒髪のショートヘアで小柄、よくアニメで見るシーフの女の子のような見た目をしている。諜報活動のため基本は冒険者として活動をしており、ランクはS,A,B,C,Dとある中のベテランのBランク冒険者である。アーティファクトや悪い貴族などを見つけられるのもこの人あってのことなんだとか。まさに一家の心臓とも呼べるほど重要な人物なのである。
「そんなの、俺だって分かってるさ!」
「分かってないから言ってるんでしょ?もともと、もう2年はかかる予定だったのよ?万全でも成功率50%あればいい計算で動いてたのに……リヒトはいないし、ゾフも負傷中……アーティファクトも集まりきってないし……。何より切り札の『停止時計』まで使っちゃってる……こんな状況でどうやるってのよ……!」
マイルーンの言葉にその場にいる全員が黙り込んだ。
(聞けば聞くほど、やっぱり無謀でしかないな……リヒトを助けるどころかこれでは全滅してしまうだろう……)
「お頭……リヒトにはほんとに悪いけど……諦めましょう?それが一番よ……」
レミィも今回は何も言えずうつむいた……
ゾフも……しかしその沈黙を破ったのは頭だった。
「そうだね……マイルーン……」
「お頭……!」
「でも、すまないね……もうやるって決めちまったんだ。もう理屈じゃあないんだよ。」
「お頭!!」
「ここでやめちまったら……リヒトを見捨てたら……全員の総意を踏みにじったら……もうあたいは革命なんてできなくなっちまう。そう直感で分かっちまったんだよ。」
「……」
頭の言葉にマイルーンは下を向いて何も言うことができなかった。
「これは強要はできない。いやなら、抜けちまってもいい。お前に冒険者もあるしそっちの方が利口だ。」
「……」
マイルーンは頭の言葉に何も反応せず変わらず下を向いたまま答える。
「でもよ……ほんとに身勝手な願いなんだがよ……もし、お前がバカであたいらに協力してもいいって思うなら……すまねえが手伝ってほしい。あたいらにはお前さんが必要なんだ……」
そう言って、頭はマイルーンにあたまを下げた。
「……その言い方はずるいよ……お頭……。」
「……分かってるよ。すまないね。」
「……いや、いいさ。……お頭……。あたしも手伝うよ。」
マイルーンは下を向いていたあたまを上げてそう言った。
「マイルーン……。」
「あなたに拾ってもらったあの日から、あたしはあなたのために生きるってもう決めていたの。だから……死地でもあなたについていきます。お頭。」
「ほんと、ありがとうねマイルーン……。」
ひざまずき宣誓をする彼女とそれを受ける堂々とした姿の彼女。その二人は、まるでおとぎ話の騎士と姫のようで美しい姿でだった。
(すごいなあ……ほんとにすごい絆だ……俺もこんな……)
「レオルド。お前さんもだよ。」
「へ?」
いきなり話しかけられたせいで変な声が出てしまった。
「な、何がです……?」
「お前さんは入ったばかり……入ってすぐにこんな争いに巻き込まれるなんて酷な話だろう。それも、お前さんはレミィが無理やり入れただけで自分の意志で入ったわけじゃない……。お前さんは幼いし。何より前より顔も明るくなった……。やりたいこともできたかもしれない。だから嫌なら抜けてもいい。でもできるなら。お前さんにも手伝ってほしいと思ってる。」
お頭はまっすぐとした目で伝えてくる。
(俺は……)
「俺も参加します。俺もリヒトさんには借りがあるので……」
「そうかい……。ありがとう。」
お頭は俺の頭を撫でながら笑顔でそう言った。
そうか、やっぱり心配されるよな。
いろんなことがあって忘れていたが、そういえば俺はまだ10歳……。
中身は大人だが、まだ子供なのだ。そりゃ心配もされるだろう。
でも……
(俺も、この人たちと戦いたい。)
「よし、全員の心もそろった。時間もないそろそろ本題に入るぞ。」
頭のその一声でみな気を引き締めた。
そうして作戦会議が始まった。
マイルーンを中心にし1時間の会議の末、作戦が考えられた。
その内容は、
まず、マイルーン、レミィ率いる先発隊(5名)が山賊一家にある4種類のアーティファクトの一つ『同化布』という纏った部分が背景と同化する遺物を使って潜入、そして王城の門を開け、そのタイミングでゾフ率いる本隊(98名)が攻め込むという2段構えの作戦……といういたってシンプルな作戦に見せかけ、そのすきに俺の魔法霧隠を使い俺と頭の二人で宝物庫に侵入し、王国の所有する遺物を奪い取るという作戦だ。
要するに今回の革命の目標は王城内の遺物の強奪というわけだ。
これのどこが革命?王を殺す……国を落とすわけじゃないの?と思うかもしれないが、マイルーンと頭が言うには、遺物を奪うというそれだけでほぼ国を落としたのと同義らしい。
なぜかというと、国の兵の質も高いがそれ以上に遺物の多さ、そしてその質こそがこのリザドル王国が強いといわれる理由らしい。
(と、いきなり国を落とすよりは簡単に見えなくもないけど……全然それでも無理難題に変わりはないな……でも、頑張らないとな……。)
作戦が決まった後俺らはすぐに準備に入った。
そして、レミィたちの出発と同時に革命は始まったのだ。
追記
一家の総勢……105名(お頭や幹部レオルド込み)
一家の遺物……4つ
1,停止時計
2,同化布
3,巨大棍棒
4,???
次から戦争始まります。




