12.兄弟
トロールの出現に驚く4人だが、何とか討伐に成功する。
俺は今みんなに囲まれ問い詰められている。
「さっきの魔法は一体何なんだい?」
リヒトはすごい勢いでそう聞いてきた。
「【風大槍】ですよ。中級魔法の……」
「そんなことは分かってる!違うそういうことじゃなくて、なんで中級魔法なんて使えるのかって聞いてるんだ!」
リヒトは変わらずすごい剣幕で聞いて来る。
「いや、それは普通に特訓したからですけど……」
「はあ……?」
その言葉にリヒトは口をぽかんと開けて驚き、そしてあきれ顔をしてため息を吐いた。
なんでそんな反応されなきゃいけないんだ?
倒せたのにこんな反応なんて悲しいぞ……
なんでなんだ?
「あのね、つくとしてももっとまともなうそにしてよ。」
「いや、嘘なんかじゃないですし……」
(実際、父さんとのトレーニングでここまで魔法を使えるようになったし……)
「あのね、確かに初級魔法程度なら詠唱さえ覚えれば誰でも使えるし、中級魔法も簡単なやつなら才能さえあれば一応使える人もいるだろうね。でも君の使った魔法は中級の中でも上級に近いほど難しいといわれる攻撃に使える魔法だ。」
(ん……?)
「詠唱だけではうまく発動せず、形成するには一定以上に魔力を操作できて、そして一般以上の魔力量もなくてはならない。そんな高度な魔法だからこそ使用できるのもごく一部の人間だけ……王国の騎士団でも重宝されてるほどなんだ!」
(な、なにいいいいいいいいい!)
聞いてた話とだいぶ違うぞ……
父さんの話じゃ中級までは個人差はあっても誰でも使えるって言ってたのに……
「要するに、そんなにすごいものを使えるなんておかしい……ましてはそれをあんなに早く、10歳の子がやるなんてありえないことなんだ!」
隣にいるレミィたちも、うんうんとうなずいている。
「そんなこと言っても……ほんとに特訓したから使えるだけで……、中級も割とみんな使えるものだと思ってましたし……」
「そんなわけないだろう!確かに中級魔法を作るだけなら、時間をかけてどんなものでもなら可能かもしれないけど、それは戦いに使用できないレベルのもので誰でもは使えないよ!!」
あああ、そういうことかぁ。
使えても使えない。そのレベルなら"だれでも"ってことか……
もっとちゃんと教えてよ父さん、あんな当たり前みたいに説明されたら勘違いしちゃうじゃないか!!
「ほんっとに……魔法を使えるとは聞いてたけどここまでとは思ってなかったよ……。魔力は大丈夫かい?中級なんて使ったらだいぶ持ってかれただろう?」
叫びきって落ち着いたのか息を整えながらリヒトはそう聞いてくる。
「いやあ。それが……」
「ん?やっぱり厳しいかい?」
「まだ、全体の5パーセントほどしか使ってないというか……」
「は……?」
やっぱりおどろかれるよなああああああ
チートでごめんなさい。
これに関してはほんとにごめんなさい。
「はあ。ほんとになんなんだこの子は……10歳で中級の攻撃魔法に、魔力量も化け物級。それに引き換えあの詠唱速度……もう理解できないよ……」
リヒトは肩を落として呆然とため息をついた。
ほんとはそれに引き換え上級魔法も何個かつかえるんですけどねえ……
無詠唱だし……
けどこれも言ったらだいぶ脅かしちゃうよなあ……
変に警戒されてもやだし、ここはもう何も言わないでおこう……
(はあ、父さん。ここまですごくなったなら教えといてほしかったです……)
こうして、初の魔物討伐は無事に?成功に終わったのであった。
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その後、
「トロールを一発で倒すほどの魔法を連発できるのを温存させておく意味はないっ!」
とのことで、戦いの戦法が大きく変更になり、俺を主体にした動きに代わった。
トロールが居た影響か当分は他の魔物は出現しなかったが、しばらくするとちらほらモンスターが出始めた。
出現したモンスターはケイブウルフという小型の狼の魔物で素早くて厄介とのことだったが、レミィの足を使った囮で誘導し、ゾフがタンクとして足を止め、俺がリヒトの指示で魔法を放ち倒す。
その新戦法のおかげもあり問題なく倒し進むことができた。
そうして、俺たちは順調に進み最奥の遺物のある、【宝物庫】というところの入り口まで到達することができた。
「着いたよ。ここが最奥【宝物庫】だ。」
「ここが……なんでわかるんですか?」
「基本同じなんだぁ。大きな扉。それが最奥ぅ。分かりやすいだろぉ?」
ゾフは俺の質問にそう言って答えてくれた。
「まあ、そういうことだよ。じゃあ、さっそく行くかい。」
「待てぇリヒトぉ。」
行こうとするリヒトをゾフは止める。
「ん?どうした?」
「いったん休憩してから行こうぅ。ここまでレオルドのおかげですごいスピードできたしぃ。何よりレミィがきつそうだぁ。」
ゾフはそう言ってレミィを指さす
「だっ、大丈夫、だ、よ」
ぜえぜえと息を吐きながら彼女は言った。
明らかに強がりだな。
確かにレミィは戦闘中、囮役として誰よりも走り回っているし、俺がいるおかげかだいぶハイペースで進んできたらしい。
疲れるのも当然だろう。
リヒトも考えるそぶりをした後
「そうだね。少し休憩してから行こうか。」
そう言って、全員を地べたに座らせた。
魔物が出る可能性もあるから、完全に安心して休めはしないが少しばかりの休息である。
俺を一人で立たせるのはあれということでゾフとリヒトが交代しながら見張りをしてくれている。
申し訳ない限りだ。
「面目ないよ。進みを止めちまって。」
レミィは一人そう呟いている。
「別にレミィのせいじゃないよ。それに万全じゃなきゃ意味ないし、俺も疲れてたしね。」
「レオルドの言うとおりだよ。次はボスだからね。休むのも準備だよ。」
「すまねえ。」
そう言ってふうと息をついてレミィはその場に寝転んだ。
「にしても本当に君はすごいね。ここまで魔法を使いこなすなんて。宮廷の騎士団にもそうそういないと思うよ。」
「いやいや、そんな……」
「謙遜することないさ。いったい誰に魔法は習ったんだい?」
「父です。今は死んでしまったんですが。」
「そうなのかい。悪いことを聞いたね。」
「いや別に大丈夫です。」
リヒトは少し申し訳ない顔をして、俺に頭を下げてきた。
「実は僕も家族を亡くしていてね。」
「え?」
にこと一度笑いかけ話をしてきた。
「僕は裕福な家に生まれて、18まで何不自由なく生活していたんだ。親も優しかったし、かわいい弟もいた。」
俺はうなずいて答える。
「弟は何をやるにも不器用で、僕は割となんでもできたからたくさん比べられたと思うけど、兄さんみたいになりたいってすごく慕ってくれて。俺もそれがうれしくてさ。」
すごく優しい顔でリヒトは微笑む。
「でも、ある時、僕の家族はこの国に殺された。反逆因子だって言われて、弁明の余地もなく僕の家は燃やされその時たまたま外に出ていた僕以外はみんな死んでしまったんだ。」
「そんな……」
こんな優しい人にそんな過去があったなんて……
「僕は怒り一人国に乗り込んだけどあっという間にやられ、投獄されてしまったんだ。そんな時に助けてくれたのが頭だったんだ。頭はそんな僕にこの腐れ切った国を変えようって言ってくれて連れ出してくれたんだ。そうして今がある。」
「どうして、その話を俺に?」
俺のその問いに一瞬きょとんとした後、彼は笑った。
「そうだよね。ごめんね!なんか話したくなったんだ。なんでだろうね。」
少し考えた後
「君と弟が重なったからかもね。似てないけど!」
そういいながらやさしい顔をした後、彼は俺の頭を撫でながら言った。
弟……か……
アン姉さんは何してるのかな……
お兄ちゃんの目をしたリヒトを見たら姉のことを思い出してしまった。
絶対に落ち着いたら会いに行こう。
俺はそう心に決めた。
「よしっ!そろそろ行くか!ゾフ、レミィ、レオルド……レオ!」
その声で皆準備を始めた。
そして、戦闘の準備を整え扉の前に立った。
「さあ、戦闘開始だ!」
そうして、俺らは扉を開けて宝物庫の中に入った。
追記……途中の戦闘の時レオルドは中級魔法ではなく風の初級魔法を使って突破しました。
(風弾っていう魔法です。)小さな風の玉を飛ばす魔法ですね。威力は大きくないですが貫通力がある感じ。イメージは銃ですね!




