26 交わる2人の剣
いいね、評価ポイント、ブクマ等々ありがとうございます。励みになります。
美波は散々泣いて落ち着いたらしいと見て、ルークは知らず動揺していた心が落ち着くのを感じた。
「ほら、もう屋敷戻んぞ」
ルークが腰を浮かせようとするのを、美波が服を引っ張って阻止する。
「うぐっ、何すんだ」
「戻れない……。だって絶対目パンパンだもん! 明らかに泣きましたって顔してるよね!? 見せられない!!」
先程見せた晴々しい笑顔から一転、死にそうな顔をする。
「そうだな……確かに見るに耐えないというか……」
「酷くない!?」
「とりあえず水で目ぇ冷やせ」
ルークが手で器を作りその中に魔法で水を満たす。美波はその水に顔を浸した。
そうしてしばらく目元を冷やした美波は顔を上げてぞんざいに服で拭こうとし、ルークはため息をつきながら布を渡す。
「顔どう?」
「ダメだな」
「ひどっ! あっ治癒魔法使ってみよ」
美波が目元に手を当てると青いキラキラした光が流れ出す。
「治癒使えんなら最初からそうすれば……。あぁ治ってる」
「良かった。じゃあ戻ろうか」
2人は立ち上がって屋敷へ戻った。
夕食は豪勢な晩餐でもてなされた美波は、用意された客室に戻る。
美波はしばらくゴロゴロとベッドの寝心地を確かめたのち、ルークの部屋を訪ねた。
「ルーク、今いい?」
扉をノックして少しするとラフなTシャツにゆったりとしたズボンの部屋着に着替えたルークが現れる。
「どうした?」
「今日も剣の稽古してよ」
ルークは少し目を見張って驚く。
「今日もか? ……いいけど。準備してくる、ちょっと待ってろ」
ルークは一旦部屋に戻り動きやすいラフな服に着替え、剣を持って出てくる。
2人は連れ立って庭へ出て、軽くストレッチをした後、30メートルほど離れてお互いに向き合う。
慣れた調子で2人は剣を抜いて構えた。2人とも刃を潰した練習用の剣や防具など持っていないので、訓練では気をつけねばならない。
始まるの合図はない。
美波が上段で構えルークへ向かい走り出す。ルークは美波の剣を下方に受け流しそのまま美波の肩あたり目がけて切り上げる。美波はそれを右に避けてルークの頭へ剣を振り下ろす。ルークはそれも受け止める。
(攻め手に欠ける)
美波は一旦後ろに飛び距離を取り仕切り直す。追いかけるようにルークが走り出し、剣先を地面にから思い切り振り上げる。避けきれないと判断した美波はとっさに腕に魔力を集めて強化し正面から受け止める。
同じ筋力強化同士では元の筋力と強化魔法の練度が勝敗を分ける。美波はじわじわと圧され始めた。そこで美波はルークの腹目がけて蹴りを繰り出し、無理矢理距離を取る。
剣を上から下に右から左にとお互いに次々繰り出しては的確に捌いていく。
互角だと錯覚しそうになるがそうではない。ルークが本気を出せば足捌きも剣も見えず気づいたら地に伏すことになる。ルークは美波のレベルに合わせて稽古になる程度に力を出している。
「そろそろお前の集中力が切れかかってる。終わりにしよう」
集中を切らすと、お互いにいらぬ怪我をしかねない。
30分ほど切り結びあったところでルークが終了を言い渡した。
鍔迫り合いをしていた2人は相手の剣を押し返し距離を取り力を抜いた。
「今日もありがとう」
「いーえ」
2人は剣を鞘に収め汗を拭いた。
「ルークもこれでなかなか剣を使いますが、カイベさまもお強いんですね。と言いながら私は剣術の嗜みはないんですが」
シャーウッド伯爵が屋敷の方から2人に向かって歩いてきた。
「強いなんて全然。ルークにはだいぶ手加減してもらってます」
シャーウッド伯爵に美波は苦笑して答える。
「カイベさまは長いこと剣をやっておられるのですか?」
「いえ、剣は5カ月ほど前にこの世界に来て初めて握りました」
「それにしてはサマになっているような」
伯爵が眉を寄せて訝しむ。
「騎士団での稽古で毎日気絶するまでボコボコにされたので。嫌でも多少は上手くなります。ならないと多分死にます」
「死……」
「ボコボコ……」
シャーウッド伯爵とルークは、国防の要である騎士団が頼もしいような怖いような複雑な気持ちになった。




