6回目 あなたも苦労したのね、だから弱みにつけこもうと思います
そこはどう見ても繁盛してるとは思えなかった。
建物も小さく、受付口も少ない。
その受付口も、まともの職員がいるのは一人。
しかも、やる気もなさそうに頬杖を突いている。
そして、探索者の姿が無い。
探索者協会というのは探索者が集まる所だ。
迷宮に入ってない探索者も何人かは屯してるものだ。
そんな探索者の姿がまるでない。
所属探索者全員が迷宮に入ってるのか。
あるいは鬼籍に入ってるのか。
それか、所属してる探索者が全然いないのか。
なんにせよ、静かなものである。
ただ、そこは決して悪いところではなさそうだった。
探索者協会の中には、ブラック企業のようなところもある。
探索者を酷使して上前をはねるような。
そういう雰囲気はない。
それが出来るほどの元気もないだけかもしれないが。
ただ、評判は悪くは無い。
かつてはそれなりに賑わっていた頃もあるという。
しかし、成長した探索者が大手に移って景気が悪くなったとか。
その後、新人を確保できれば良かったのだが。
それが上手く出来なかったらしい。
それでも残っていた探索者もいるというが。
そいつらが探索で失敗、再起不能の大怪我を負った者が多数出たと。
その結果、立て直しが不可能なほどの打撃を受けたとか。
今も多額の借金を抱えてるという。
(運が悪いよなあ)
かわいそうになるような話だった。
だが、そうなる可能性も覚悟しての協会運営だ。
下手な同情はすべきではないだろう。
だが、それだけにソウジロウには都合がよい。
リストラされた探索者の居所としては悪くはなさそうだった。
(とにもかくにも)
腹に色々抱えながら門をくぐる。
(行ってみるしかない)
「…………いらっしゃい」
元気の無い声が出迎える。
それがソウジロウと芝咲探索者協会と最初の接点となる。