45回目 司令塔になったことで得られたもの
幸いなのは、人が付いてきてくれる事だ。
一方的にあれこれ指示を出すソウジロウ。
旅団の者達はそれに従ってくれる。
不平や不満はあるかもしれないが。
「そりゃ、ソウジロウさんの言ってることは当たってますから」
それでいいのか、と尋ねた時の答えだ。
「今まで、言われた通りにやってきて、それで上手くいってる。
だから文句なんて言いませんよ」
なるほどと思った。
それは実にありがたい。
ただ、それを素直に喜んでばかりもいられない。
確かに今のところはソウジロウも上手くやっている。
だが、それは以前の旅団での経験があるからだ。
そこでやってきた範囲なら、ある程度分かる。
だが、そこから外れた部分についてはどうなるか分からない。
「だから、あまり俺を頼りすぎないでくれ。
俺だってどうしていいか分からない時はある」
「その時はその時ですよ。
なんとかしましょう」
そう言って旅団員は笑った。
頼もしいやら、単純やら。
楽観的なのはありがたい。
ただ、考え無しで言ってるから困る。
それでもソウジロウは彼らのそんな態度に救われている。
無意味に衝突をしないで済む。
理由の説明もしないで済む。
相手を納得させる為に骨をおる必要もない。
話を通しやすくするための根回しも。
それが無いだけでずいぶんと楽が出来る。
翻ってみれば、前の旅団はそこが面倒だった。
ソウジロウとヨシフミ達が同等の立場というのも原因なのだろう。
何か決めるにしても、どうしてもあれこれ言い合わねばならない。
それが決定を遅らせる事にもなる。
多頭制というのだろうか。
頭を張る、決定権を持つ者が複数いる。
それによる弊害である。
日本でいうならば、小田原評定というのだろうか。
会議会議で話が進まない。
何も決まらない。
そんな状態だった。
だからこそ、自分の好き勝手に出来る現状の方が心地良かった。
おかげで上手いこと色々進んでいる。
更に言うならば、上司がいないのも救いだった。
これは以前の旅団もそうだったが。
上からの指示で理不尽を強いられる事はない。
それを説得する必要もない。
これもまた、決定権が他ではなく自分にある事の利点だろう。
それ故の問題もある。
誰にも頼れない。
責任も負わねばならない。
探索者なら、失敗の責任は命で支払う事になる。
これだけは避けようが無い。
それでも、無駄に振り回される事はない。
ソウジロウにとって、それが一番ありがたかった。
前世でも今生でもそれが厄介だったのだから。
自分で考えてやっていける、それが本当にありがたかった。




