44回目 進んではいても、望むほど早くもなく
荷車に荷物をのせて引っ張っていく。
トラックを使えなくなった事で、こうして迷宮入りするようになった。
せめて馬車や牛車でも、と思うのだが。
そんな金があるわけもない。
馬車や牛車には他にも問題がある。
扱いが難しいのだ。
馬や牛を操作するのが、というわけではない。
それもあるが、もっと切実な問題がある。
化け物への反応だ。
当然ながら、身の危険を感じれば馬も牛も逃げようとする。
そんな牛馬を大人しくさせる為には、可能な限り化け物を接近させないようにせねばならない。
現状ではそんな事出来るわけもない。
もっと人数が多ければ話は別だろうが。
今のソウジロウ達では不可能と言って良い。
また、迷宮内ではつないでおくものがない。
牛馬の管理の為に、何人か割かねばならなくなる。
これもまた馬車や牛車を使えない理由だ。
その為、現在のソウジロウ達は人力に頼っている。
二人がかりで荷車を引っ張り、迷宮の奥へと向かう。
そんな荷車が何台か。
早くトラックに戻りたいとソウジロウは願った。
その為にも、より大きく成長しなくてはならない。
遅々とした歩みである。
荷車も旅団の拡大拡張も。
思うようにはいかない。
今の状態なら、これくらいまで成長出来るだろうというのは見えてるが。
それは弱小旅団の中ではかなりマシではあるだろう。
しかし、ソウジロウが求めてるものには届かない。
対抗意識というわけではないが、どうしてもかつての旅団を考えてしまう。
それが目安というか基準になってしまう。
それを元にする必要は無い。
全てが同じ条件というわけではないのだ。
同じように成長や拡大が出来るわけがない。
大切なのは、安全に確実に化け物を倒せるようになること。
それでいて、豊かに暮らせるようになること。
探索者に限らず、生きていく上で求められるのはこういう事だろう。
何であれ、仕事は手間や無駄が少ない方がいい。
それでいて大きな成果が出せる方がいい。
探索者もそれは同じだ。
他に比べて上か下かなどと考える方がおかしい。
どうしても競合他社は意識してしまうにしてもだ。
ただ、その観点からしても、ソウジロウの旅団はもう少し拡大する必要はある。
稼ぐには、もう少し強い敵を今と同じくらい倒せた方が良い。
単純にそれだけで収入は二倍になる。
その為にも、一人一人が強くならねばならない。
作業量の負担を減らす為にも、人を増やしたい。
そう思うからこそ、今の状況が歯がゆかった。
あと少し人が増えてくれればと思うのだが。
(焦ってもしょうがないけど)
先はとにかく長い。




