4回目 悔やんでも仕方ないので前を向いていこう、成功するか分からんけど
今まで所属していた探索者協会をあとにして。
肩を落としながら歩いて行く。
晴れて無職になって、自由を得たのは良い。
しかし、求めた形とはほど遠い。
「とりあえず……」
今後について必要な事を考えていく。
こうなる事も考えてはいたのだ。
ある程度対策も想定している。
それに、今までの経験もある。
全く何もない所からの出発ではない。
上手く経歴を活かしていきたかった。
迷宮で培った能力と、支払った血と涙の分くらいは。
ただ、この先このままでいけるとは思ってない。
今までは曲がりなりにも旅団にいた。
だからこその便宜もあった。
その影響はこれから出てくると予想していた。
それらがはっきりと形になるまでに手を打たねばならなかった。
当面の生活に困る事はないが、行動は早いほうがいい。
幸い、財産や装備などは確保出来ている。
そういった個人資産は協会が管理している。
それらを勝手に処分される心配は無い。
念のために、幾ばくかは手もとにも置いてある。
当面の生活や迷宮探索に支障が無いようも。
ただ、この状態をいつまでも続けたくはなかった。
ソウジロウにだってやりたい事はある。
迷宮探索。
今のソウジロウにはこれが目的になっている。
その為に生きてるわけではないが、やれるだけやってみたいと。
生活のためというのもある。
それもあるが、同時に難しいことに挑みたいという思いもある。
単に稼ぐだけなら、それほど苦労は無い。
そこらにいる連中をつれて迷宮に入ればいい。
贅沢は無理でも、余裕のある暮らしが出来る金は手に入るだろう。
なので、生活だけを考えて、迷宮に入る必要は無い。
だが、その奥深くに何があるのか。
それを解明したい、見極めたいと思う。
また、自分の腕を試したいとも。
どこまでいけるか分からないが、腕を上げたいと。
くだらないこだわりかもしれないが、身につけた技がどれほどか確かめたかった。
それは学んだ流派への敬意でもある。
そして、自分が学んだものは最高であるという自負。
それを多くの者にしらしめたいというのもあった。
もっとも、その流派が原因で色々と言われてもいるのだが。
今回の追放劇、原因の一部にはこの流派も絡んできている。
ソウジロウが学んだ流派、世間ではとかく受けが悪い。
いわば、汚名をそそぎ、正当な評価を打ち立てたい。
そんな願いもあった。
だが、それもこのままでは達成出来ない。
迷宮に挑んで能力は高めてきた。
しかし、浅い箇所ならともかく、深くまで潜入するのは一人では無理だ。
どうしても同行者が必要になる。
それを確保せねばならなかった。
「…………厳しいよなあ」
迷宮探索に挑む者。
それはこの探索者の町にはいくらでもいる。
だが、奥地まで進んでいける者は少ない。
そこまでで無いにしても、それなりの腕を持つ者は多くは無い。
だが、そういった人を集めていかねばならない。
迷宮に挑むならば、必須事項になる。
その他、必要な装備も新たに調達せねばならない。
迷宮に挑む集団である旅団を形成するなら。
「忙しくなるなあ……」