39回目 その頃、彼らは 6
新たな者を加えて意気揚々と迷宮へと向かっていく。
そんなヨシフサ達は、予定通りにいつもよりは控えめな場所に陣取る。
新たに入った者達との調整を行う為だ。
そこで自動車を止め、作戦を展開していく。
やり方はそれほど突飛なものではない。
罠というか障害を設置して、化け物を呼び込む香を焚く。
これで敵を引きつけて倒していく。
探索者が行う基本的な狩りのやり方だ。
これを一箇所だけで行うのではない。
複数の箇所で行う。
そのため、別々の通路に分かれる。
拠点となる場所は定めておいてから。
そこから枝分かれする通路にそれぞれ布陣していく。
これに加えて、人数に余裕があるので周辺の警戒も行っていく。
化け物からの不意打ちを防ぐためである。
迷宮は様々な方向につながっている。
背後を完全に防ぐ手段はない。
だから、事前の予防が必要不可欠になる。
こういった準備をしてから化け物を呼び集める。
その間に遭遇してしまう事もあるが。
さすがに想定外の遭遇というのはなかなか発生しない。
入り口付近に比べれば、徘徊する化け物も増えている。
しかし、迷宮も広大なので、出会いがしらという事はなかなかない。
稼ぐにはそれなりの事をせねばならない。
そんな奥地で事を始めていく。
その最前線にはヨシフサたちが陣取る。
この旅団の最強戦力だ。
そこに新規加入者の中でも有望株を加えている。
「来たぞ!」
望遠鏡で警戒をしていた者が声をあげる。
その言葉通り、迷宮の奥から化け物がやってくる。
それらが接触してくれば戦闘開始だ。
「行くぞ」
仕掛けた罠を超えて敵がやってくる。
大勢集まってきたが、それらは上手く分散されている。
罠によって進行が阻まれているおかげだ。
その戦闘が到着してから、ヨシフサが動く。
ヨシフサが使うのは諸岡流。
広範囲攻撃が特徴の流派である。
一度に相手にする数は減ってるが、それでもまだ多い。
だからそれらをヨシフサが削っていく。
乱れ飛ぶ刃は、迫る化け物を次々に切っていく。
そのすべてが致命傷になるわけではない。
だが、大多数は地面に倒れていく。
技術も能力も高いヨシフサの一撃は、それだけの威力があった。
<< 機能情報 >>
『乱れ刃』
移動しながら切りつけることで、広範囲を攻撃する。
命中率・威力はその分下がる。
攻撃範囲は『能力値×技術修正センチメートル/1秒』になる。
<< 以上、機能情報 >>
現在のヨシフサならば、4メートルから5メートルの範囲をとらえることが出来る。
その中にいる全ての敵が攻撃を受けていく。
ここから外れた化け物が、ヨシフサを超えていこうとする。
あえてヨシフサはそれを追いかけたりしない。
化け物は次々と襲い掛かってきている。
通過した敵を追いかけようとすれば、それらを放置する事になる。
当然ながら、それらは目の前にいるヨシフサを攻撃する。
だから、取りこぼした敵を追いかけることは出来ない。
別に全部を倒す必要は無い。
脇を固める他の者が処分してくれるのだから。
むしろ、ヨシフサは前から来る敵を攻撃し続けた方がよい。
その方が、結果として敵をより多く倒すことが出来る。
こうしてまず、ヨシフサが敵を間引いていく。
それを後方に控えた者達が倒していく事になる。




