36回目 その頃、彼らは 3
「応募が早速あったな」
「ああ、ありがたい」
「それだけ俺たちの名前も上がってきたということだ」
ヨシフサ達三人は、その結果をみて顔をほころばせる。
新進気鋭の旅団。
ヨシフサ達はそう評価されている。
実際、それだけの成果をあげている。
なにせ最初は散々な所から始まったのだから。
大手の旅団どころか、中小の旅団にすら入れなかった者達。
そんなヨシフサ達が中心になって結成した旅団。
ようやくかき集めた10人ばかりの初心者達。
それが結成後6年という短期間で200人を越える大所帯になったのだ。
たんに数をあつめただけではない。
中心であり中核戦力でもあるヨシフサ達の強さも話題になっている。
たった6年で能力値200越えを達成。
大手旅団ならともかく、弱小旅団でそこまでいける者は少ない。
実際、他の弱小旅団は能力値の成長もままならずにいる。
もちろん全員がそこまで成長してるわけではない。
だが、入団して比較的日の浅い者達も、相応に成長している。
戦力の層も厚い。
一点特化型ではない強みがある。
そうした旅団だからこそ、迷宮入り口からより深い所を目指している。
それは快進撃と言うべきものだった。
先を行く旅団は他にもいくつかある。
だが、そこに肩を並べようとする新たな星は人々の目を引く。
立志伝なのだ。
ヨシフサ達は、まさしくそんな物語の中心人物なのである。
だからこそ注目されるし、名前を知られている。
募集をかければ様々な者達が応じてくる。
それもまた、ヨシフサ達が成し遂げた快挙の結果だ。
実力で積み上げ、実力で勝ち取ってきたものである。
「幸い、防御を得意としてる者達も応募してきてくれた」
「へえ…………すげえな、これ」
「ああ、まさかこれほどの能力を持ってる者が来るとは」
応募者達の書類。
そこに記された能力。
いずれも登録証を表示させて、それを書き写したものだ。
数値に間違いは無いはずである。
それらがヨシフサ達を興奮させる。
彼らの能力や技術。
それはソウジロウほど高くは無い。
さすがにそこまでの人材はこない。
しかし、十分に能力や技術を磨いてきた者達だ。
「こんな奴らが来てくれるとはな」
どうしても興奮してしまう。
以前では、少なくとも2年や3年前ではありえない事だった。
その頃の募集で来てくれたのは、ごく一般的な能力の者達。
つまりは、素人や初心者ばかりだった。
「雲泥の差だ」
正直な感想が口から出てくる。
「これなら、育成に時間もかからんだろう」
これが一番ありがたい。
能力はヨシフサ達に比べれば低い。
これはもうどうしようもない。
他の所ではなかなか成長するのも難しいのだから。
むしろ、ヨシフサ達の方が例外なのだ。
霊気玉をある程度安定して確保出来るようになったのだから。
他の旅団でそこまで出来るところは少ない。
それが出来るのは、たいていが大手と言われるところだ。
成長できるほど霊気玉を確保出来る。
そんな事が出来る中規模や弱小旅団はヨシフサ達くらいだ。
他から来る者達がそこまで優れてるわけがない。
ある程度能力や技術が劣るのはやむをえない。
だが、そういった者達が使えないわけではない。
技術や能力が足りないなら、霊気玉を提供すれば良い。
すぐにとは言わなくても、いずれヨシフサ達と同等にはなってくれる。
「半年もすればあいつに追いつくだろう」
それが今はありがたい。
こうしてヨシフサ達の旅団は、希望者を加入させていく。
彼らの持ってる能力や技術を頼りにして。
即戦力はさすがに望めないが、かなり短い時間でそれも解消されるだろう。
「……抜けた穴など、簡単に埋められる」
ヨシフサもヒロキもトシタカも、誰もがそう考えていた。
 




