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35/46

35回目 その頃、彼らは 2

「とはいえ、居なければ居ないで厳しいな」

 ソウジロウが出て行った直後。

 旅団が拠点にしてる宿で、椎加原ヨシフサはこれからの事を語っていく。

「あれは、ろくに仕事はしなかったが。

 だが、完全な無能というわけではなかったからな」

 それを聞いて他の二人も頷く。



 戦闘担当なのに、あまり前線に出ようとしなかったソウジロウ。

 その事にヨシフサ達三人は不満を抱いていた。

 しかしそれは、ソウジロウを見くびっていたからではない。

 神伝流という流派故に攻撃能力が低いのは仕方ない。

 だが、能力は優れていたと認めてはいる。



「しっかり前に出れば良いものを」

 不満の理由はそこにある。

 彼らは彼らなりにソウジロウを評価はしていた。

 自分達より一段か二段は低く見積もってるしても。

 それでも、戦闘が出来ないとは思ってなかった。



 実際、ソウジロウはそこそこ戦っていた。

 諸橋流のヨシフサほど攻撃範囲は広くない。

 飛刃流の梶木山ヒロキほど攻撃力も突進力もない。

 相羽流の日千里木トシタカほど一撃の早さや鋭さもない。

 だが、決して無能でも無力でもなかった。



 前線には出てこようとしなかったが、迫る敵は確実に倒していた。

 守りを固めてはいるが、全く攻撃が出来ないわけではない。

 能力が上がった事もあるのだろう。



 稼ぎが増えたあたりから始めた能力増強。

 それによりソウジロウの能力も上がってる。

 その能力のおかげで攻撃も当たるようになった。

 …………ヨシフサ達はそう考えていた。



 また、盾としてはそこそこ役に立ってもいた。

 神伝流だけはある、というべきか。

 攻撃については見るべきものがない。

 だが、敵の攻撃を避けて受ける。

 その技術は目を見張るものがあった。



 その能力があるなら、前に出て敵を食い止めるべきである。

 ヨシフサ達はそう考えていた。

 だが、そうせずに前線と後方のあたりに陣取っている。

 それが問題だった。



「本当にあいつは……!」

 怒りが止まらない。

 あれだけの防御力があるなら、前に出て敵を食い止めろと。

 そう言ったことも一度や二度ではなかった。

「本当に、困った奴だ」

「あの頑固さ、話にならん」

 ヒロキとトシタカも同意見だった。



「まあ、いい。

 素直に出ていったんだ。

 その潔さだけは褒めてやろう」

「もっと絡んでくると思ったんだがな」

「何を考えているんだか」



 素直に出ていった事は賞賛出来る。

 しかし、我を通したとも言える。

 ヨシフサ達の言い分を聞かなかったという意味では。

 下手に居座られるよりは良い。

 だが、納得も合点もいかない。

 くすぶりやしこりがどうしても胸に残る。



「だが、それよりも人だ。

 あいつがいなくなった分を補わないと」

「そうだな」

「早速募集をかけよう」

 ヨシフサ達はそうそうに行動にうつっていく。



 彼らも馬鹿では無い。

 やらねばならない事は分かってる。

 それを疎かにしたり蔑ろにはしない。

 ただ、いくつか見落としてる事がある。

 抜けてるというべきだろうか。

 思い違いや心得違いとも言う。



 ソウジロウの代わりは簡単に見つかる…………。

 そんな思い込みを彼らは抱いていた。



 いうならばそれは、彼らの視点でしかない。

 あくまでそこにこだわり、本質を見てない。

 見ようともしてない。

 それは、神伝流が守りの流派だと考えてる事にも見られる。

 これは幾分仕方が無いものではあるが。

 だが、もう一つ決定的に見落としてる事がある。



 なぜソウジロウは前に出なかったのか?

 どうして前衛と後衛の間に立っていたのか?

 その理由を彼らは気にかけようともしなかった。

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