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30回目 ツワモノがもたらす成果と、それが決める配分方法

「すげえ」

 協会に戻ったソウジロウ達は、あらためて成果を確認する。

 そこで新人達が口にした一言だ。

 改めてみる結果に、彼らは驚くしかなかった。



 回収した霊気玉、519個。

 これまでの新人達の稼ぎを圧倒的に凌駕する。

「こんなに集まったの初めて見る」

 素直な感想が彼らの口から漏れてきた。



 新人達だけでやっていた頃は、一日250個行くかどうかだった。

 それでもかなり頑張った方ではあるのだが。

 ソウジロウが加わる事で、それが二倍以上に増えている。

 驚くのも当然だろう。



 この霊気玉を売却して収入を得るのが探索者だ。

 それが二倍になってるのだから、収入も二倍。

 それもあって彼らは素直に喜んでいく。

 だが、彼らの驚きはこれだけに留まらない。



「それじゃ、これを金にしてくれ。

 全部だ」

「え?!」

 誰もが驚いた。

 霊気玉を売って金にするのは当然だ。

 しかし、全部というのはさすがに予想外だった。



「あの、それじゃ……」

 誰かが何かを言おうとする。

 だが、ソウジロウはそれにかぶせるように声を出す。

「いいか。

 これからはこうやっていく」

 そう言われては何も言えない。

 黙って従うしかなかった。



 この霊気玉、値段は質によってまちまちである。

 込められてる霊気の量が多ければ値段が上がるからだ。

 ただ、入り口近くにあらわれる化け物なら、値段は概ね同じだ。

 霊気玉一つにつき、およそ500円。

 これが相場である。



 今回回収したものもそれくらいの値段だった。

 なので、報酬額もそこから算定される。

 その合計、25万9500円。

 新人達の見たことのない金額だ。



 ただ、これ全部が懐に入るわけではない。

 ここから税金や協会費が引かれていく。

 税金が30%に教会費が10%。

 合わせて40%にもなる

 その結果、実際に受け取るのは、15万5700円。

 それでも、新人達からすれば莫大な金額だ。



「これを全員で山分けする」

 その言葉に新人達は更に驚く。

 通常、こういうのは成果に応じて配分される。

 今回の場合、ソウジロウがより多く取るのが普通だ。

 圧倒的に働いたのだから、これは当然である。

 それを山分け、均等に分けるというのだ。

 驚くしかない。



「ただし」

 ソウジロウの説明は続く。

「金の報酬は今日明日だけだ。

 それから三日の間は報酬無しだ」

「ええ?!」

 なんだそれは、と誰もが思った。

 三日分の報酬は自分で独り占めかよと。

 しかし、ソウジロウはそういう事を考えてるわけではない。



「三日分の稼ぎは経験値につかう。

 だから、金銭の報酬はなしだ」

「────ああ!」

「なるほど」

 それで新人達も納得していった。



 霊気によって動く器具の動力源になる霊気玉。

 その使い方は、霊気術だけではない。

 人の成長にも用いる事が出来る。

 経験値と呼ばれる使い方で、これにより能力や技術を伸ばすことが出来る。



 これは霊気玉の霊気を吸収する事で可能だ。

 そうして取り込む事で、能力や技術に変換していける。

 ソウジロウはそれに使うと言っている。

 その為に換金はしないと。



 それで新人達も納得した。

 むしろ、そういう使い方に感動すらしていた。

 探索者にとって、霊気玉を使った成長も求めるところである。

 危険な探索を成功させる為には、高い能力が必要だからだ。

 その為に、霊気玉による成長も望んでいる。



 学習や訓練により技術を身につける事も出来る。

 能力を伸ばすことも可能ではある。

 だが、それだけに頼っていては時間がかかりすぎる。

 それを補う為にも、それ以上の成長を得る為にも、経験値としての霊気玉は必要だった。



「これを、まず一人に使う。

 優先して誰か一人に成長してもらう」

 説明は続く。

「みんなに同じように渡していたら、成長が遅くなる。

 それよりは、一人を優先して強くする。

 そいつに先に強くなってもらって、戦闘で頑張ってもらう」

 それを聞いてざわめきが起こる。

「あの、ちょっといいですか?」

「なんだ?」

 一人が意を決して質問をする。



「それだと、強くなった奴が他に行くかもしれないですけど。

 それでも良いんですか?」

 新人からすればそれが心配だった。

 強くなれば、他の旅団に移籍しようとするかもしれない。

 ここで頑張ってるよりも、もっと巨大で強い所に入ったほうが良いと。

 実際、その方が稼げる。

 心配するのも当然だろう。

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