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28回目 ソウジロウの戦い方、神伝流の真実

 この日一日で新人達は様々な事に触れた。

 馬車型トラックも、今まで来た事がないほどの奥地も。

 信じられないほど押し寄せる人面虫も。

 そういったものの中で最も気になったのが、ソウジロウの戦い方だ。



 守りの流派と言われる神伝流。

 それを使うソウジロウ。

 その戦い方は、基本的に受け身のはずである。

 敵の攻撃を避け、敵の攻撃を受け。

 それ自体は優れたものだが、攻撃においては凡庸なもの。

 ただ刀を振るだけとすら言われている。



 併伝する抜刀術もあって、太刀筋は鋭いと言われることもあるが。

 しかし、居合い・抜刀術の流派で知られる相羽流には及ばない。

 一撃の威力は飛刃流に負ける。

 技の多彩さで諸橋流に比べるべくもない。

 どうしても決定打に欠ける。



 そのはずなのに。

 ソウジロウの攻撃は鋭く早い。

 的確に相手をとらえて倒していく。

 それでも他の流派に比べれば派手さに欠けるきらいはある。

 だが、決して劣るものではない。



「本当に神伝流なのか?」

 それが新人達の疑問だった。

 ソウジロウは確かに神伝流と言ってるが。

 ならば、他の者達と何が違うのか。

 どうして世間一般での評価と違うのか?



 それを聞いてもソウジロウは、

「まあ、そのうちに」

としか答えない。

 教える気がないのだろう。

 そう尋ねれば、

「そりゃそうだ。

 さんざん馬鹿にされてんだ。

 誰が教えるか」

 身も蓋もない事いう。



 だが、それも仕方ないと、誰もが諦めるしかなかった。

 確かに神伝流の評判は悪い。

 そんなの聞けば、身につけてる者は気分が悪いだろう。

 ソウジロウがこういった態度を取るのもやむをえない。



 そんなソウジロウは今回の探索での最多撃破数を記録してる。

 戦闘の度に武器を持ち替え、次々に撃破していく。

 それを見る新人達は評価を変えるしかない。

 少なくとも彼らの見てる神伝流は、防御一辺倒などではない。



 そんなソウジロウの神伝流であるが。

 これは確かに神伝流である。

 そして、世間一般に伝わる評価。

 防御に特化してるというのも、間違いとは言い切れない。



 少なくとも最初に習うのは防御についてだ。

 攻撃の避け方、攻撃の受け方。

 そういった事をとにかく習う。

 初心者も戦いにおいてそうした動きを見せていく。



 だが、それが神伝流の全てではない。

 あくまで神伝流の一部だ。

 より正確に言うならばこうなる。

 神伝流の初歩だ。



 まず生き残る事を念頭におく。

 その為に守りを固める。

 これが神伝流の考えである。

 その為、初心者にはとにかく守り方を徹底する。



 だから手柄を立てる事はできないだろう。

 だが、生き残る事は出来る。

 たとえ敵を倒しても、自分も死んでは意味が無い。

 その為、攻撃は二の次としている。



 それを越えると次の段階に入っていく。

 攻守が入れ替わる。

 ここからが神伝流の本当の姿となる。

 防御だけではない、戦いの術があらわになってくる。



 そもそも神伝流は防御で有名ではある。

 その為、避け方・受け方に目がいく。

 だが、神伝流で最も重視されるのはそれではない。

 それすらも、あくまで余録・おまけのようなものである。



 全ては立ち位置の取り方による。

 神伝流では、これを歩法と呼んで伝えている。

 単純に言えば歩き方。

 足の使い方になる。

 これにより有利な位置をとる事を旨とする。



 立ち位置を確保する。

 その為に足を動かす。

 ひいては体をその位置にもっていく。

 これを神伝流は重視する。

 これは回避方法として見られる事が多い。

 それこそが最大の誤解にいたる。



 あくまで立ち位置の確保が目的である。

 回避はその結果得られる効果に過ぎない。

 この立ち位置の取り方を変える事で、神伝流は一気に変化する。

 防御から攻撃へ。



 相手の攻撃を避ける為に移動する。

 この時の足の位置を変えたらどうなるか?

 避ける位置ではなく、攻める位置に変えたら。

 その瞬間、神伝流は一気に攻勢の武術に変わる。



 相手の攻撃を避ける為に一歩引く。

 それを一歩前に出る事に変えるだけで、相手を攻撃できる位置につく。

 相手の攻撃を受けるために、一歩引く。

 それを一歩進む事で、相手の急所に一撃を加える事になる。



 こうなると全てが変わる。

 回避は、相手の死角に入る動作になる。

 受けはそのまま相手への攻撃になる。

 一歩後ろに出ていた。

 それが一歩前に出る。

 合わせて二歩分だけ立ち位置が変わる。

 それだけで防御が攻撃になる。



 それでいて、相手の攻撃は当たらない。

 相手は間合いを外していく。

 一方的に攻撃を当てらる位置を常にとり続ける。

 そうする事で、神伝流は防御から攻撃に反転する。



 この際、受けの刀の使い方も変わる。

 受ける為の動きのままに一歩出る。

 それだけで、相手を切りさき、突き刺す動きになる。

 一歩下がって敵の攻撃を受けていたのが。

 一歩進んで、相手のクビを切る位置につく。



 これが神伝流の基本をおさめたものが伝授されるものだった。

 技というより、考え方と言った方が良いだろうか。



 ちょっとした変化である。

 だが、それは正反対の姿をもたらす。

 立ち位置を変えるだけで、攻防が入れ替わる。

 それでいて、基本的な足の動きは変わらない。

 ただ、前に出るか後ろに出るか。

 右に向かうか左に行くか。

 それが変わるだけだ。



 その結果が、探索中の迷宮内であらわれている。

 迫る敵をソウジロウは次々に倒していく。

 時に相手を斬りつけ。

 時に相手の攻撃を避けて。

 その時その時、最適な位置を見極めて動いていく。

 結果、人面虫のクビがそこかしこに落ちていく。



 それは飛刃流ほどの威力上昇はない。

 諸橋流ほどの多彩さ・手数の多さはない。

 相羽流ほどの一撃の鋭さ・早さもない。

 だが、攻防一体の動きに隙は無い。



 相手の攻撃を決して受けず。

 自分の攻撃は必ず当たる。

 多くのものが知るのは、前のほうである。

 もう一つの姿を見る者はそう多くは無い。

 だから真相が伝わることもほとんどない。



 しかし、評価や評判は実相と関係は無い。

 誰がなんと言おうと、真実に変化は無い。

 それを今、ソウジロウが示している。

 本当の姿の神伝流と共に。






<< 機能情報 >>



『神伝流・歩法』


 神伝流の基本にして奥義。

 神伝流におけるあらゆる動きの土台となる。

 これを用いる事により、上方修正を受ける事になる。


 基本的に先制権・回避に+10%の修正を得る。


 この効果は、段階によって上昇する。





『神伝流・受け技』


 神伝流における攻撃の受け方。

 手にした武器や素手で相手の攻撃を受け止める事を基本とする。

 習得していれば、相手の攻撃を受ける際の判定に+10%を得る事が出来る。


 減少させる事が出来る攻撃の威力にもこの修正は適用される。




『神伝流・攻防反転』


 神伝流における防御技を攻勢に変化させる。

 これにより、回避修正は命中修正に。

 受け技の成功修正も、命中修正になる。

 受け技の敵攻撃威力減少は、攻撃威力への上方修正になる。





<< 以上、機能情報 >>




言うまでもなく、ここに書かれた話は全て架空のものである。

現実の武術などとは一切関係が無い、作者の妄想の産物である。

それを踏まえて楽しく読めないなら、ここでさよならしましょう。


そうでない人は、引き続く気楽に楽しんでいってほしい。

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