27回目 連携した動作のためのちょっとした事
それから何度か人面虫を呼び寄せ。
新人達もある程度戦闘になれた頃。
ソウジロウは告げる。
「それじゃ、連携もおぼえていこうか」
新人達もそれなりに連携はしている。
二人一組での戦闘と、その後ろからの回復。
単純な動きだが、それを無理なくこなしていた。
それでもソウジロウは、連携についていくつかの注文をつける。
「難しい事じゃない。
何かして欲しければ声を出せ。
それだけだ」
言われて誰もが「あっ」と思った。
全員、思い当たるところがあった。
前線に立つ二人組。
そのうちの諸橋流の方は、相棒にもう少し動いて欲しいと思っていた。
こぼれた敵を始末してもらえるのはありがたいのだが。
その反応を幾分良くしてもらいたかった。
同時に相羽流を使う者も、もう一人に求めるところがあった。
主に敵を引きつけてるのはもう一人だ。
そいつが押さえ込めないものを倒せばいいのは分かる。
しかし、それがなかなか上手くいかない。
倒そうと思ったらもう一人が倒してる。
その逆に、大丈夫と思ってるものがすり抜けてくる。
前に立つ者達の中でもこういった事がある。
加えて、前後での連携にも問題があった。
回復が欲しいけど、なかなかこない事がある。
その逆に、さして回復が必要ないのに、二人三人から回復される事もある。
このように適切な回復がされない事があった。
それが度々発生している。
回復役の方からも要望がある。
いつ回復して欲しいのか。
それが分からない。
なので後方で判断するしかない。
おかげで、間違った行動を引き起こす事がある。
いずれも状況が分からないから発生してる事だ。
ならば、声を出せばいい。
出すしかない。
それ以外に解消する方法はない。
「それと、やって欲しい事は一言か二言で言い切れ。
長い説明を聞いてる暇なんてないからな」
それもそうだと思った。
戦闘中に長い台詞を聞いてる余裕はない。
出来るだけ短い言葉が良い。
「それを二回繰り返せ。
最低でも二回だ。
一回目で気を引きつけて、二回目で理解させろ」
確かに、と思った。
一回言っただけでは気がつかない場合もある。
なら、二回三回と繰り返した方が効果的だ。
「上手くいったなら、これでいいと言え。
でないと、失敗したと思って繰り返す」
単純な事だが、これも大事だ。
成功したのか失敗したのかなんて、本人にしか分からない。
特に回復は。
それは受けた本人が申告した方がいいだろう。
「失敗したなら、もう一回と言え」
これも必要な事だ。
失敗したなら失敗したで伝えねばならない。
でなければ、辛い状況で戦い続ける事になる。
「あと、失敗しても文句を言うな。
一回で上手くいく方が珍しいんだからな。
初めてやるときや、慌ててる時なんてそんなもんだ。
そして、上手くいかないのを基本だと思え」
上手く伝わらない。
求めた事をしてくれない。
そんな事はしょっちゅう起こる。
いちいち気にしてられない。
それで死ぬこともあるかもしれないが、それも諦めて受け入れるしかない。
戦う場に出てきてるのだから、それも覚悟せねばならない。
「余裕を持ってやれ。
でないと、緊張して必ず失敗する」
最後にそれを伝える。
緊張感を持てとよく言われるが、それはあえて間違いとする。
どうしてもしてしまうのが緊張だが、それは気持ちも体も萎縮させる。
固まらせて動きを鈍らせる。
そんな状態が良いわけがない。
「だから、なるべく気楽にいけ。
その方が上手くいく」
そういった忠告などを受けながら、新人達は考えていく。
なら、どうしようかと。
何せ自分の命がかかってる。
手を抜けるわけがない。
とりあえず簡単な合図を一つ二つ決めていく。
次の戦闘前に少しだけ練習をして。
それから虫寄せの香を焚いていく。
次の戦闘で、これらを試した。
その次の戦闘でも。
さすがに一回で上手くいくものではない。
だが、確かな有用性は新人達も感じていた。
以後、彼らは声を出す事を心がけていく。
連携もそれで少しは上手くなっていった。
戦闘における負担の減少でそれを感じていった。




