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24回目 探索者の雇用事情

 人を揃える。

 その為には雇用費が必要になる。

 普通の仕事ならそうなるだろう。

 ただ、探索者の場合は少々異なる。



 探索者は基本的に会社などに所属してるわけではない。

 旅団にもよるが、基本的には職人に近い。

 別の言い方をすれば、一人親方。

 あるいは、独立事業主。

 こういった者が寄り集まっている。



 その為、稼ぎが旅団のものになるわけではない。

 あくまで一時的にそこに預けるだけだ。

 帰ってきたら、報酬は山分け。

 あるいは働きに応じて配分となる。



 その為、給料を出す、というような考え方ではない。

 相応の能力をもってるものが、働いて稼ぐというのが近い。



 その為、人を集めるのに金が必要、というのは正確ではない。

 稼げるだけの人間が欲しい。

 それが出来る腕を持ってる人材が欲しい。

 その為、賃金などを用意する必要がない。

 だいたいこういった考えで成り立っている。



 ただ、見習い扱いだとこうはいかない。

 なりたてや初心者の探索者に稼げというのも酷な話だ。

 だから、まずは稼げる所まで導いてやらねばならない。

 それまでは、ある程度稼げる者が、見習いの生活なども賄う事になる。



 単に頭数を揃えればよいわけではない。

 それは、ある程度稼げる者がいる場合だ。

 だが、今の段階ではそういうわけにはいかない。

 募集をかけても、やってくるのは新人。

 ろくに経験もない素人同然の者がせいぜいだろう。



 ソウジロウが悩んでるのはこの部分だ。

 人はいるけど、人はいない。

 頭数だけならいくらでもいるだろう。

 だが、稼げるほど腕の立つ人材はそうはいない。

 そこが悩みどころだった。



 結局、稼げる人間を作っていかねばならない。

 金も経験値も。

 その為にも、今居る人間を育てねばならなかった。

 今居る者達が、稼げるようにならねばならない。



 せめて、新人達を抱える事が出来るくらいには。

 そこまでいけば、規模の拡大、ひいては稼ぎの拡大にもつながる。

 そうなればあとは早い。

 ソウジロウにとって、それはかつて歩いてきた道である。



(また、長い道になるな)

 以前の旅団を大きくした手法。

 それを再びここでやっていく。

 その手間を思うと気分も重くなる。

 やり方は分かってるが、それを再び行うのも面倒だ。



 だが、やらねば先はない。

 日々の生活を支える為にも、化け物を倒すしかない。

 化け物を倒すには強くなるしかない。

 強くなるには、成長するしかない。

 その為にも、かつて歩いた道を再び歩くしかない。



(なんでこうなるんだか)

 開き直ったつもりではいる。

 だが、それでも追放された事が重くのしかかる。

 それがなければ、もっとマシな状況だったのだから。



 だが、同時に思う。

 あそこにいても、結局ダメになってただろうと。

 それくらい雰囲気が悪かった。

 旅団そのものの動きにも影響が出るくらいに。

 また、何をするのか決めるのにも時間がかかりすぎていた。



 組織病というのだろうか。

 各部署というか各派閥というか。

 各自の考えがぶつかりあい過ぎていた。

 足の引っ張り合いも発生していた。

 何かを決めるには、事前の根回しが必要になっていた。

 それが裏工作じみたものになっていた。



 総じて、組織としての機能障害をおこしていた。

 そんな所にいても、思うように事が運ぶことはなかっただろう。

 追放されなくても、自分でそこから抜け出したかもしれない。

 あるいは、そういうった事が原因で、迷宮内で潰えていたかも。



 そう考えると、今ここでこうしてるのは正解なのかもしれなかった。

 多少後戻りした形になっていたとしても。

 とても大きな回り道になったとしても。

(そう考えた方がいいのかねえ)

 自分に言い聞かせるようにそう考えた。

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