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18回目 文明の利器を使いこなして迷宮の中へ

「行くぞ」

 迷宮入り口に到着したソウジロウは、後ろの座席を振り返る。

 荷台の上に荷物と一緒に座る新人達は、小さな声で返事をする。

「ま、そんなに緊張するな」

 無理だと思いつつもそう言う。

「一応、警戒だけはしっかりとな」

 そう行ってアクセルを踏み込んでいった。



 地下迷宮と行っても、その入り口は巨大なものだ。

 現代日本でいう大型トラックが何台か横に並んでも入っていける。

 それくらいの大きさを持っている。

 当然ながら、そんなものを放置するほど国は無能では無い。

 入り口を囲むように壁を造り、中から化け物が出てこないよう警戒している。



 そんな壁にある入退場門前は、かなり賑わっている。

 中に入ったり出て来る探索者であふれている。

 混雑したり渋滞が起こるほどではないが。

 それでも、かなりの数の探索者が集まっていた。

 そういった者達相手の店なども含めて。



 また、探索者も様々だ。

 乗合自動車バスに乗ってやってくる者。

 徒歩でやってくる者。

 ソウジロウのように車で乗り込んで来る者。

 それぞれが様々な手段でここまでやってくる。



 そんな者達と共に、入り口をくぐって中へと入っていく。

 ソウジロウとしては見慣れた光景である。

 以前の旅団では、自前で保有していた自動車で中に入っていったものだ。

 だが、ソウジロウの後ろに座ってる者達は初めての光景だ。

 車上からの景色を面白そうに眺めている。



(最初はこんなもんだよな)

 そんな彼らを微笑ましく思う。

 ただ、先ほど言ったように、周囲の警戒もしておいてもらいたかった。

(車酔いにならない程度に頑張ってくれりゃいいけど)

 最初はどうしてもそうなる事を想定しておく。

 それにも早めに慣れてもらいたいものだった。



 そんなソウジロウが運転する自動車は、かなり簡素な造りをしている。

 馬車に運転席をつけたような格好、と言えば良いだろうか。

 御者の乗る部分にアクセルとブレーキ、ハンドルなどをくっつけただけの簡素な造り。

 簡単な構造をしたトラックといった風なものだ。



 それを動かすエンジンも運転席の後ろにある。

 一応囲いはされてるので、それが後部の荷台との境目のようになっている。

 そんな馬車風トラックで迷宮の中を走っていく。

 目指すは、入り口から10キロ地点。

 より強い敵が出てくるあたりだ。

 そこでソウジロウは稼ごうと考えていた。



 理由は単純である。

 そこまで行くと、新人達がやってこれなくなる。

 歩いてここまでたどり着くのは大変だ。

 なので、移動手段を持たない者達の活動範囲は狭い。

 おおよそ、入り口から最大で5キロ地点までが活動限界になる。



 なので、競争相手がぐっと減る。

 敵の取り合いをする必要がなくなる。

 その分、敵の数も多くなるが、撃退が出来るならそこそこの稼ぎになる。

 さすがに新人達には厳しいものになるだろう。

 だが、ソウジロウならばさほど問題は無い。



 問題なのは、その辺りから出てくるより強い敵だ。

 今の新人には荷が重い。

 対処できないわけではないが、数が多いのが厄介だ。

 同じ人数ならともかく、少し敵が多いだけで一気に劣勢になるだろう。

 それだけは気をつけねばならない。



 それを踏まえての10キロ地点である。

 確かに厄介な敵も増えるが、そこまで数が多いわけではない。

 そういう敵が出始めるのがそのあたりというだけだ。

 そこから先に進まない限り、そう大きな問題になる事はない。



 最悪、そういった敵が大勢出てきたときだが。

 そのときは即座に退散する。

 そのように新人達にも説明をしている。

 無理や無茶はしない。

 危なくなったらすぐに逃げる。

 それが生き残る秘訣だ。



 それを臆病だと言われる事もあったが。

 蛮勇をふるうよりは良い。

 何より、死ぬよりはるかに良い。

 再起不能な傷を負うのももちろん避けたい。

 五体満足、生きて帰るのが最優先だ。



 そう思いながら先を急ぐ。

 前方を照らす照明を頼りに目的地へと向かう。

 朝一番で出てきたので、一時間もあれば目的地まで到着できる。

 歩いていたら何時間もかかってしまっていた。

(やっぱ、車があると便利だな)

 機動力は正義である。



 地図と記憶を頼りに目的地に到着。

 馬車型トラックを止めて、新人達を下ろす。

「ここで敵を叩く。

 まずは周りを確認。

 それから罠を設置していけ」

 事前に伝えていた指示を再びとばす。

 新人達はそれに従って動き出す。

 ただ、さすがに全部を任せるわけにもいかない。



「罠の設置と護衛、行くぞ。

 他は車を守っていてくれ」

 移動手段と荷物。

 これを失うわけにはいかない。

 だからそこに護衛を残す。



 それ以外は周りの探索と、罠の設置。

 そのためにソウジロウが同行する。

 何かあった場合に、新人達だけでは心もとない。

 この辺りの説明も兼ねて、ソウジロウは新人と共に行動していく。



 伴うのは探知系の技術を身につけた者。

 罠の設置を担当する者。

 それらの護衛が2人。

 合わせて5人で迷宮奥方向へと向かう。



「前を、ついでに周りを確認していけ」

「はい!」

「適当なところで罠を仕掛けるぞ」

「はい!」

「護衛は常に二人を気にかけろ。

 攻撃が当たらないよう、自分の位置を考えて動け」

「はい!」

 声が響く。

 まだたどたどしい動きながらも、ソウジロウに応えようとしている。

 そんな新人をひきつれ、ソウジロウは奥へと向かっていった。

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