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13回目 実力を見せるのも手段の一つ、ただ、そこまでさせたらどうなるか覚悟はしてもらう

(やっぱりそうなるか)

 ある程度覚悟はしていた。

 世間の評価なのだから、そう思われても無理は無い。

 しかし、だからと言って疑うというのもどうかとは思った。

(まあ、知らないなら仕方ないか)

 あまり世間には出回ってない部分。

 神伝流にはそれがある。



 そこまで神伝流の評判はひろまっている。

 いわく、守りに徹した武術だと。

 あるいは、とっさの場合の護身術だと。

 基本的に守りの動きを中心にしてるのだから、そう思われても仕方ない。



 当然、習い始めた者はそうした動きだけをする。

 そのため、攻撃がほとんどない流派だと思われてしまう。

 世間一般の評価は、こうしたところから生まれている。

 なので、他の流派に比べて評価は一段低くなっている。



 新人がそんな事を言い出したのも、それが原因だった。

 確かに、守りだけで迷宮を乗り切れるわけがない。

 どれだけ守りを固めても、敵を倒せなければ意味がない。

 攻撃を延々とくらい、最後は力尽きて倒れてしまうだろう。

 そうなる前に、相手を倒さねばならないのだ。



 そして、これを理由に馬鹿にする奴もいる。

 今、ソウジロウの流派を指摘したのもそんな輩だった。

「な、こんなの何かの間違いだって」

 えらそうにそんな事を言っている。

 それに同調する取り巻きのような者も三人ほど。

 合わせて四人がソウジロウの能力に疑惑をかけてきた。

「いったいどうやってここまで来たんですか?

 他の人におんぶに抱っこですか?」

 丁寧な言い方をしてるが、言ってる事は罵倒や暴言の類だ。



 それを聞いてソウジロウは、落ち着いて言い返す。

「なら、実際にやってみよう」

 指摘した奴と取り巻き共を見つめる。

「外に出ろ。

 まとめて相手してやる」



「おいおい……」

 それを見て協会長は呆れるしかなかった。

 顔を合わせてすぐにこうなったのだから。

 まあ、その経緯は探索者達の間ではよくある話だ。

 気が荒い、あるいは我の強いのが集まってるのが探索者だ。

 血の気が多く、喧嘩っ早いのが多い。

 なので、無意味な衝突や争いがそこかしこで起こる。

 今回もそうした出来事の一つと言える。



 ただ、止めるようなこともしない。

 そういった連中には口による説明など無意味だ。

 また、正論や道理なども通じない。

 馬鹿馬鹿しいことだが、強い奴が正義なのである。

 どんな悪事も、力で叩きのめして押し通す。

 そんな事が通用してしまう世界だ。



 だからこそ、下手にとりなさず、したいようにさせていく。

 そうでないと納得も理解もしない。

 そういう者達の喧嘩を止めても意味が無い。

 とことんやらせなければ終わらないのだ。

 しこりが残ってしまう。

 その結果、どちらかが、あるいは、どちらも死んだとしてもだ。



 ソウジロウもそれが分かってる。

 だからこうしてる。

 あえて挑発していく。

(面倒だな)

 そうは思うが。

 しかし、他に方法がないならやるしかない。

「ほら、外へ出ろ」

 自ら先に外へと向かう。

「おんぶに抱っこの強さを見せてやるから」



 協会の外、路上に出たソウジロウ。

 四人と向かい合い、

「そんじゃ、かかってこい」

と呼び込む。

 相手はそんなソウジロウに少々困惑しつつも、

「でも、それは……」

と躊躇いがちだ。



 さすがに彼らもかかっていくのには抵抗がある。

 相手の面目などを考えて。

 つまりは、舐めてるということになる。

 なぜならそれは、

『自分らが相手を叩きのめしてしまったら』

という前提があるのだから。

 新人達は自分達が勝つことを当たり前と思ってる。



 そんな彼らにソウジロウも、

「安心しろ」

と声をかける。

「手加減してやる」

 挑発以外のなにものでもない。

 だが、それは本心からの言葉だ。

 決して自信過剰なわけでもなんでもない。

「痛い思いはしてもらうが」

 添える言葉も含めて、相手を見下していた。



 そこまで言われたら後には引けない。

 新人達にも意地がある。

「じゃあどうする」

「誰からやる」

 そんな事を話し始める。

 そこにソウジロウは更に燃料を投入する。

「気にすんな。

 全員一緒にかかってこい」

 どこまでも相手を見下し、舐めた態度をとる。



「あと、素手なんて面倒な事するな。

 武器持ってかかってこい」

 これで新人達の意思は固まった。

 全員、得物をもってソウジロウを囲んでいく。

「そう、それでいい」

 ソウジロウはどこまでも余裕のある態度を崩さない。

 それが囲む四人の神経を逆撫でしていった。

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