11回目 新人達との顔合わせ
話をつけたソウジロウは、代表と他何人かを連れて協会に戻る。
そこで新人教育と、事務作業員の斡旋を行った。
「いきなりだね……」
戸惑った樫山協会長だが、人手が欲しいのは確か。
とりあえず試験採用という事で、やり方を教えながら手伝ってもらうことにした。
「部屋も空いてるところを使ってくれていいから」
と言って宿舎も提供してくれた。
野外のテント暮らしが長かった者達である。
これだけで感動した。
そうして二日ほど。
新人達が戻ってくるまでの間に、簡単な事務作業などをさせていった。
最低限の読み書きと計算は出来るので、一応書類を読むことは出来る。
ただ、どんな書類があって、どんな処理が必要なのか。
そういった事は新たなにおぼえねばならない。
「これは……」
「迷宮よりも厄介かも……」
新人事務員達の前途は多難だった。
他にも、掃除やら備品の確認やらもしていく。
それらもやり方をおぼえていかねばならない。
探索者時代とは違い、細かな作業を求められる。
豪快に戦うことを旨としていた者達なので、それだけで気疲れをしてしまう。
そうして二日が経ち、探索者の新人たちが帰ってくる。
戻ってきた彼らは、見知らぬ顔が協会事務所にあって驚く。
そんな彼らに、
「ああ、お帰り」
協会長が声をかける。
「新しく来てくれることになった事務員の方々だ。
みんな、よろしくな」
簡単に紹介をしていった。
「そして、移籍してきた探索者も」
「園原ソウジロウだ。
よろしく」
名乗るソウジロウを、この協会所属の探索者達は胡散臭そうに見つめた。
いきなりだからそれもしょうがないだろう。
だが、協会長がとりなしていく。
「他の旅団で奥まで潜っていたらしい。
教わることも多いだろう」
「それは…………ありがたいですけど」
それでも探索者達は信じきれないようではあった。
このあたりは実力を示すまでどうにもならないだろう。
今はこんなもんだとソウジロウは納得する事にした。
「とりあえず、二日ばかり休息を入れてくれ。
それから探索に行こう」
ソウジロウは全員に提案する。
だが、まだソウジロウを受け入れてない者達に、これは悪手である。
「なあ、なんであんたが決めてんだ?」
当然、こんな反応をされる。
ただ、これはソウジロウが狙っていたものでもある。
「なんだ、不満か?」
「当たり前だろ」
軽く摩擦が生まれる。
「俺たちの稼ぎじゃ、休みなんて入れられねえよ。
明日も潜らないと食っていけねえ」
「なるほど」
新人にありがちな話だ。
稼ぎが悪いから休みがとれない。
そして、疲れをためて、いつか倒れる。
「じゃあ、しょうがない。
明日も潜ろう」
彼らの懐具合を考えて言い直す。
「ただし、やり方は俺が指示する」
「はあ?」
「当たり前だろ、お前らの潜ってる辺りは、俺が通り過ぎたところだ。
やり方は俺の方が把握してる。
何か問題があるか?」
「そりゃあ、あんたが本当にそうしてきたらの話だろ」
口の減らない奴が突っかかってくる。
「まず、それを証明しろよ」
「ああ、いいぞ」
そう言うと、ソウジロウは探索者としての登録証を見せた。