表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を知らない神様  作者: ビター
プライド編
98/113

戻った記憶

 

  5年前、ラースによりイギリスのSランク魔道士が1人残らず殺された。

  以降、アーサー.バシレウスは父を失う。

  その後すぐに母親が自殺、女が苦手なのは自分を置いて自殺した母を無意識に恨んでいたからかもしれない。

  幸い財産が有り余っていた為、家の執事と裕福な暮らしを続けれた。


  「七つの大罪·····ラース······今もヘラヘラ生きてんだろうな」


  頭をよぎるのは学校の授業でも、将来の夢でも、両親の死でもない······ラースへの恨みだった。

  父を殺されたから、母親を自殺に追い込んだ原因になったから、そんな優しい理由で憎んだのでは無い。

  自分から両親を奪ったまま逃げたラース、自分だけ奪われたままなのが嫌だった。

  利己的で傲慢な恨み。

  ラースの存在が世に放たれた2日後、アーサーは行方不明となった。

  学校も家の執事も警察も必死で捜索したがアーサーは見つからなかった。


  「昨日の犠牲者は·······アメリカ?ついこの前までこの国に居たのに」


  アーサーが行方不明になったの 理由は家出をしたからだ。

  ラースを追ってアメリカに向かっていた。

 

  「取り敢えずアメリカの魔道士協会があるニューヨークに向かわなくてわ」

 

  10歳にしては賢く、行動力があった。

  だが、

 

  「んん」


  子供が1人で夜道を歩くのは不本意だった。

  人攫いに会ってしまった。

  連れてこられたのは森の奥、口を塞がれ、体を縛られたアーサーは車で運ばれた。

 

  「なんて可愛い子だ!」


  人攫いにの男は嬉しそうに笑った。

  だが男は不運である······魔法の力でアーサーに返り討ちに会ってしまったからだ。


  「魔道士!?ご、ごめんよ、何でもするから······許してくれ!」


  怯える男を前にしたアーサーは思った。

  この男を殺せば自分の復讐へ決意できるのではないか?

  ラースを殺す練習になるのではないか?

 

  「ダメだ」

 

  考えを口にした。

 

  「待って!待って!」

  「ウェザー.サン」


  男に向けて手の平サイズの太陽を投げた。

 

  「デスブレイド」


  だが太陽は何者に放たれた炎により吹き飛ばされ、近くの木に当たった。

 

  「ひぃぃ!」


  人攫いの男はどさくさに紛れ、車に乗って森を出た。

  アーサーは男を追わず上空を見上げていた。


  「誰?」

  「メタトロン、お前は?」

  「アーサー」


  上空に居た男――そいつこそメタトロンだった。


  「見えるって事はお前が魔道士とか言う類らしいな」

  「なんで邪魔した?」

  「助けただけだ·····お前を」

  「意味がわからない。俺の邪魔をしたくせに」

  「男を殺してたら罪悪感が残ったはずだ·····まぁ、人どころか神を殺しても罪悪感がない子供も居るが」

  「俺に罪悪感は無い·····あるのは憎しみだけだ」


  メタトロンは広げていた羽根を閉じ、アーサーの近くに寄ってきた。


  「そう·····ならもう邪魔はしない。殺し自体は悪い事じゃないからな」

 

  メタトロンの目に引き込まれそうだった。

  明らかに自分より多くのものを見てきた目だからだ。


  「あんた強い?魔道士だろ?Sランクか?」

  「お前よりは強いが魔道士じゃない」

 

  アーサーは直感でメタトロンが只者じゃない事を察した。

 

  「頼む!俺を強くして!何でもします!お金もたくさんある!だからお願い!」

 

  力が欲しかったアーサーは、自分を強くしてくれる師が必要だった。


  「······フッ。ははっ!ハッハッハ!」


  メタトロンは一瞬悲しそうに下を向いたが、わけも分からない笑いを見せた。


  「何がおかしい!」

  「救われた命······俺の信じたかった神様は人間だったか」


  アーサーを見向きもせず、独り言のように言った。

 

  「どういう意味·····だ?」

  「良いと言う意味だ。とことん強くしてやる」


  それから2年間、人々に知られずアーサーとメタトロンの生活が始まった。

  メタトロンが何を教えたかは分からないがアーサーが天才と呼ばれる力を得たのはメタトロンが原因だろう。


  「俺、国に戻ります」

 

  13歳の誕生日を前にして12歳のアーサーが突然言った。


  「そうか、どうして今帰ろうと?」

  「七つの大罪が俺の居た街に現れました·····今帰れば奴らに会える」

  「まだ未熟なのに·····良いのか?」

  「良い·····今がチャンスです。奴らの心臓土産にして帰ります」

  「要らん」

  「ならお土産はありません」


  これがアーサーとメタトロンの最後のはずだった。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  島は海よりも静かだった。

  人々が眠っていてると言うよりは島自体が眠っているようだ。

  そんな島の中でアーサーとメタトロンは再会を果たしていた。


  「俺は昔、神々へ反逆した。本来なら死刑だったがアマノを失ったジャックが人が変わったように助けてくれた。だから俺はアーサーに出会い、この為に生かされたと思ったんだ」


  確かに俺が知ってるメタトロンは少人数で構成された組織に所属し、神や天使達と敵対した。

  だが話によれば『奇石』と呼ばれる膨大な魔力を含む石をある悪魔がほとんど奪ったらしい。

  そいつを俺と協力して撃退した事により死刑が免れたとからしいが·····詳しくはよく分からない。


  「じゃあ、メタトロンさんって天使なんですか?」

  「そうだ·····あとで君とアーサーからは俺が天使だって記憶を抜いとく」

 

  メタトロンはアリスの潰れた手を魔法で治すと俺の目を見てきた。


  「何?」

  「呪いを解いてやる」

  「あ、うん。じゃあね皆」


  まるで死ぬ時の気分だ。

  記憶が15歳に戻る、今の俺は一体どうなるのか?

  少し不安だが今までが幻みたいな物だったと考えると心が楽だ。


  「ジャックありがとう」

  「じゃあな10歳のジャック」

  「未来の俺をよろしく」


  この世界にアマノは居なかったが、初めての友達が居た。

  幸せな夢·····いや、幸せな時間だった。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  長い長い夢から目が覚めたようだった。

  にしては体が少し疲れ、目の前の光景は穏やかじゃない。

  アーサーとアリスが心配そうに僕を見つめている。

  2人共服や顔が土や傷で汚れている。

  もっと妙な事にメタトロンが居る。


  「訳分からない」

  「「ジャック!」」


  僕が一言喋るとアーサーとアリスが揃って抱きついてきた。

  悪くは無いが·····もっと訳分からない。


  「仕方ない·····真理の義眼」


  今まで何があったか見ることにする。

  脳内には僕が知らない僕の記憶が流れ込んでくる。

  巻き戻された記憶、七つの大罪との戦い、ルーナとの戦い、メタトロンの登場。


  「久しぶりメタトロン、助けてくれてありがとう」

  「まったく、便利な目だな」


  僕が当たり前のように挨拶を交わすとメタトロンが少し困ったように笑った。


  「まさか、今までの事見たのか?真理の義眼で?」


  アーサーは平然とする僕を見て驚愕している。


  「そうだよ」

  「ジャック、話はまだ済んでない」


  横からメタトロンが割って入ってきた。

 

  「何?」

  「······2人になったら話す。時間が空いたら来い」

 

  何の事かさっぱりだったが険しい表情から重要だって事は読み取れる。


  「分かった」

  「なら急ごうぜジャック。壊れた建物を直して住民の魔法を解かないと」

  「了解!」


  その後、ルーナとの戦いで壊れた建物や地形は全て治した。

  朝8時、眠りの魔法が解け、島の人々が目を覚ました。

  普段8時前に起きてる人、あるいはまだ起きていたのに眠らされた人、そんな人は少し驚いているだろう。


  「ジャックどこに行くんだ?」


  一安心、そう思いメタトロンの元へ向かう僕を止めたのはアーサーだった。

  今のアーサーからはメタトロンが天使だって記憶は消えている。


  「天使に呼ばれた」

  「天使?それってジャックの使いか?」

  「そんなところ」

  「分かった、また後でな」


  アーサーは少しやりきれない表情だった。

  ルーナの事で頭がいっぱいなのかもしれない。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  島全体がよく見えるビルの上、僕とメタトロンはお互いに背を向けて座っている。


  「伝言を預かった、ルーナって奴にも言いたい事だが·····アイツは言葉より暴力で何とかする」

 

  つまり良い話ではないらしい。


  「お前、人間と関わりすぎだ·····だから今まで会ったヤツらからお前の記憶を抜け。ロキ直々の命令だ」

  「ダメな事なの?」

  「神と人間は住む世界が違う·····元人間だとしてもあまり他世界の者に関わるな」

  「断ったら?」

  「神々を敵に回す。ロキ自身はどっちでもいいらしいが他の神々の多くが反対している」

 

  このタイミング、この時期にこの話は困った。

  後何年か待って欲しい·····せめてアーサーの復讐が終わる日まで。


  「あと3年·····待ってくれない?あと3年経ったら絶対その命令を果たす」

  「分かった·····ロキに伝えとく。ダメだったらもう一度来る·····俺が来ない事を祈っとけ」

  「ありがとう」


  少し不安だが·····アマノに祈ったし、きっと大丈夫だ。


  「じゃあな」

  「バイバイ」


  用事が済んだらしい、メタトロンはすぐさま姿を消した。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  その日の夜、僕は学園の教室に1人で座ってるアーサーをビルの上から見ていた。


  「学園休みなのに何やってんだろ?」


  一見黄昏てるようにも見える。

 

  「きっと俺の事考えてるんだよ」


  なんの前触れもなく背後から聞こえた声に、限りなく恐怖に近いものを感じた。


  「何しに来たの?」

  「久しぶりのジャックを見に来た」


  見なくても分かる·····背後でルーナがニヤリと笑ったのが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ