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愛を知らない神様  作者: ビター
プライド編
97/113

天の使者

 

  当たり一体が吹き飛び、丸焦げになったアーサーが瓦礫に横たわって居る。

  少し離れた場所からは、焼けた皮膚を再生させるルーナが下を向いて座ってる。


  「高度な魔力爆発だな·····あらゆる天気を混ぜ合わせて魔力を破裂させる·····おかげで内部から破裂したな」


  ルーナの視線はアーサーの腹部辺りだった。

  焼け傷とは別に穴が複数空いている。

  ルーナはゆっくりと立ち上がり、ため息を着く。

 

  「終わりか」

  「そうだな」


  ルーナは背後を取られ、手刀で腹を貫かれた。

  勿論、背後を取ったのはアーサーでは無い。


  「ジャック、痛いな」

  「安心しろ、俺の記憶を取り戻すまで死なせない」


  ジャックは、攻撃と同時に治癒魔法を使いルーナの即死を防いだ。


  「地獄の門番アバドンよ、地獄の門を今開け」


  俺は地獄の扉を腹を貫いた手で召喚した。

  禍々しい色と雰囲気の巨大な門、血のようにドス黒い赤と闇よりも不気味な黒、門にはその2色しかない。


  「悪いがルーナ、アーサーも俺が生かしてある。地獄に落ちたくなければ記憶を戻せ」

 

  地獄の門を目の前にしてもルーナの表情は笑顔だった。

  笑顔と言っても可愛らしいものではなく、不気味な笑みだ。

  神々が死よりも恐れる最強クラスの召喚魔法、『地獄門の召喚』。

  これは俺の切り札だったのだが·····ルーナには効果が薄いようだ。


  「お好きにどうぞ」


  かなり舐めた態度だ。

  だが、俺にはルーナの心を読める真理の義眼がある。


  「真理の義眼」


  アマノから受け継いだ青く美しい瞳を開く。

  ルーナの考えている事が手に取るように分かる。

  俺が見たのは······2人の女性だった。

  女性が2人、顔や姿は見えないが影のようにハッキリと見える。

  逆にルーナはそれ以外何も考えてない·······あるいは思考の制御。


  「女性が2人見える·····その2人の為にも今死ぬのはまずいんじゃやいか?」


  取り敢えず、その女性を言葉の盾に使う。


  「あぁ······どっちも死んでるよ」

  「ありゃ」


  ――またしくじった。


  「······まぁいいや、自力で記憶を取り戻すよ」


  ルーナは脅しには屈しないと見た。

  俺は地獄門を開き、ルーナを引きずり込もうとする。

 

  「ジャック·····な、何やってるの?」


  それを止めるように現れたのは唖然としたアリスだ。

 

  「この状況は何?島中皆眠っていて、街は崩壊して、アーサーなんてボロボロで倒れていたわ」

 

  眠っているはずのアリスが起きている·····この疑問はすぐに解けた。

  ルーナのニヤリと笑う表情······それで確信した。

  俺やアーサーの邪魔をする為、もしもの為にルーナが起こしていたのだ。


  「想定外、それが隙を生む」


  俺がよそ見をした瞬間、ルーナは俺を磁力魔法で吹き飛ばし、転移空間に入り込んで地獄門を回避した。


  「やられた!」

  「ジャック!!説明してよ!」

 

  アリスは焦る俺を更に焦らせる。


  「ルーナはプライドだった!理解しなくて良いから俺の背後に隠れていて!」

  「今なんて?」

 

  聞き返すアリスを無視し、魔力の壁でアリスを囲う。

  転移空間に入ったルーナがどこに逃げたか分からないが近くに居る事は直感で理解していた。


  「真理の義眼」

 

  俺は真理の義眼で数秒後の未来を見る。

  目に映ったのは真上から現れ、俺の首をかっ切ろうとするルーナだった。

  5秒後、予知通りルーナが真上から現れたが、当然の如く首を掴み転移空間からルーナを引きずり落とした。

 

  「神器」


  床に叩き落としたルーナにすぐさま刀を振るうが華麗に避けられる。

  それどころか回し蹴りを2発もらってしまう。


  「いっ!」

  「まだだ」

 

  更に投げナイフを5本を受け、首を掴まれる。

  今の俺ではついてけない動きだ。


  「じわじわ味わえ」


  ゆっくりと首を締め付けられる。

  こうなっては、意識が飛びそうで魔法が打てない。


  「ルーナ止めて!!」


  首を絞められた事でアリスを囲っていた魔力の壁が解けたらしい。

  壁から飛び出したアリスは震える体を手で押えながら、


  「貴方がプライドだったとしても、ルーナとして私達と関わった時間は消せない·····ルーナに戻る最後のチャンスよ」


  ルーナに手を差し伸べる。

  手に震えは無かった。


  「その手を離し、私の手を取って·····お願い」


  ルーナの表情は無だ。

  それでも俺の真理の義眼にルーナの戸惑いが見えた。

 

  「アリス、ありがとう」

 

  ルーナは下を向き、俺の首を離し、アリスの手を取った。

 

  「ルーナ、良か――」


  だがルーナはアリスの手を握り潰し、俺達の期待を裏切った。


  「あぁぁぁ――」


  更に苦痛の悲鳴を上げるアリスの首を掴む。

 

  「人に神の心など分からない」

  「そうだな、だが本性は行動に出る······やってくれたなルーナ」


  ルーナは俺を見向きもしないが俺は頭にきて、睨みを効かした。


  「動いたら首を潰す。どうするジャック?どう動く?」

  「殺ってみろ、その瞬間お前を地獄門にぶち込む」


  ピリピリした空気を感じる。

  どっちが先に動くか······緊張が走る。


  「所詮お前も人間のようだな」


  先に動いたのはルーナだった。

  ルーナは俺の前で、何の躊躇も無くアリスの首を捻り潰した。

  その瞬間俺は頭に血が上った。

  だが最初に考えのはルーナへの攻撃ではなく、アリスの治療だった。

  まだ生きているかもしれない······希望を期待した。


  「真理の義眼!」


  真理の義眼で数秒後を見た。

  ルーナが俺に蹴りを入れている予知を見た。


  「邪魔すんな!」


  素早い足蹴りを掻い潜り、アリスを抱えて逃げようと空を飛んだ。

  だがルーナが放った魔法が俺の胸を貫く。


  「がァ!」


  俺は地に落ちてしまう。

  息が詰まる·····どうやら急所に当たってしまったようだ。


  「そろそろだな······さよならジャック」


  ルーナはそう言って雷魔法を俺に落とす。


  「デスブレイド!」

 

  雷は何者かが放った大きな炎とぶつかり消滅した。

  その爆風で俺とルーナはお互い別方向に吹き飛ぶ。


  (誰だ?)


  炎を放った者は宙に浮いていた。

  大きな白い羽根が4つ、頭の上には金色に輝く頭の輪っか、まるで天使のような姿だ。

  不思議な事にそいつには見覚えがあった。


  「見つけた、それもどっちも。しかも喧嘩中」

  「光栄だな、天使最強の男·····メタトロン」


  天使メタトロン、こいつは今の俺、つまり10歳の俺と敵対していた天使だ。

  ――なぜこいつが?


  「今の俺では勝てない······か。逃げよ」


  危険を察したルーナは転移魔法で姿を消した。

  メタトロンの登場により、島は一気に静まり返ってしまった。

 

  「アイツがゼウスの孫?既に主神レベルだな」

 

  そんな事を呟きながら羽根と輪っかを隠したメタトロンが俺の近くに来た。


  「ジャックに勝ててなぜ俺に勝てないと思ったんだ?まぁいいや、大丈夫かジャック」


  ――なんだ?妙に馴れ馴れしい······もしかして5年後の俺はメタトロンと敵対してないのか?

  メタトロンは馴れ馴れしいどころか俺の傷を魔法で治してしまった。

 

  「先に言っておく、今の俺は記憶を5年戻されている。つまり今の俺は10歳の俺だ」


  メタトロンは差し伸べた手を下ろし、キョトンとした。

  そしてクスクスと笑い、


  「だから負けたのか·····どうせ真理の義眼も使いこなせなかったんだろ?」

  「俺とお前は·····敵じゃないのか?」

  「その様子、知らないようだな」

  「何を?」

  「アマノが死んだのは俺の妹サンダルフォンとの相打ちだって事」

 

  怒りとかは無い、だが衝撃だった。

  しかも相打ち·····メタトロンは実の妹サンダルフォンを何より大切にしていた。

  それに俺の知るメタトロンはキレやすく、凶暴な奴だ。

  今何事も無かったかのようにしてるメタトロンが不思議でたまらなかった。


  「まぁ、今はそんな事問題じゃない······まずその呪いを解こう」

  「呪い?」

  「あぁ、記憶を巻き戻された······明らかに呪いの類だ。安心しろ、呪い解除は俺ができる」


  安心と喜びが込み上げる。

 

  「やった!あ······その前にアリスを·······」


  だが安心も喜びも吹き飛んだ。

  アリスの事で後ろめたくなったからだ。


  「さっきの女の子だな?大丈夫、右手が折れ曲がっているが首筋と命に別状は無い」

  「は?けどさっきルーナが首を――」


  メタトロンが嘘をついたと思った。

  だが平然とこちらに来たアリスを見て疑いが消えた。


  「なんで?」

  「私も折れたと思ったけど、同時に治されていたみたい」

 

  俺はゆっくりとメタトロンを見た。


  「悪いが俺じゃない」

  「あの野郎·····舐めた真似しやがって」


  ルーナはアリスを殺さなかった。

  俺にとって嬉しい事だが悔しい事でもあった。

 

  「後アーサーの無事も確認したい」

  「アーサー?」

 

  俺はすぐに宙に浮き、当たり一体を見渡した。

  意外とすぐ近くに倒れ込むアーサーが見えた。


  「居た」


  アーサーを連れて、アリスの元に戻るとメタトロンは驚きの表情を浮かべていた。


  「どうした?」

  「いや、運命って凄いな」

  「何が言いたい?」

  「俺は5年前、こいつと2年間暮らした事がある」

  「「え?」」


  ――なぜ人間のアーサーと天使のメタトロンが?


  「ジャック、この人誰なの?」

  「俺はメタトロン、あの有名な天使と同じ名前の魔道士だ」


  天使だと言う事を隠すようにメタトロンが先に言った。

  俺に送る視線も「言うな」と言ってるようだ。


  「んん······けほっけほっ」


  咳払いをしながらアーサーが目覚めた。

  まったくいいタイミングだ。

 

  「ジャック?アリスも?········ルーナは!?」


  先程の事を思い出したアーサーは、上体を勢い良く起こした。


  「逃げた」

 

  アーサーに反応がなかった。

 

  「なんで?師匠が居るんだ?」


  アーサーはメタトロンを見て驚愕する。

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