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愛を知らない神様  作者: ビター
プライド編
96/113

ルーナとの死闘

 

  下校時間、学園に分かりやすくチャイムが鳴る。

 

  「どこか行くの?」

 

  寮とは逆の方向に行く俺とアーサーを見て、アリスが首を傾げた。


  「うん、少し買い物」

  「そう、じゃあまた明日」

  「また明日」


  機嫌良さそうに笑うアリス、アーサーもつられて笑い、その場を立ち去る。


  「アーサーってアリスの事好きなの?」


  しばらくしてアーサーの表情を確認しながら聞いた。


  「ど、どうしたんだ?急に」


  少し戸惑ったようにも見えた。

  だがすぐに笑って見せた。


  「気になった·····答えて」

  「·····友達として好き」

  「異性としては?」

  「そういうのは自分の事を話してから聞くべきだぜ?ジャックがアリスの事好きか·····言ったら言う」

 

  やってやったみたいな表情を浮かべるアーサー。

 

  「まったく·····俺は10歳だぜ?恋愛感情はかなり薄いね······あったとしても俺が愛するのはアマノ1人だ」

  「10歳とは思えない発言だな·····まぁー俺も言うて分からない······意識すると目合わせれないから意識しない事にしてる」

  「そう·····そろそろいいな······くだらない話は終わりとして、本題に入ってくれ」


  学園からかなり離れ、人通りの少ない街並みに来た。

  アーサーの話を聞くにはいい場所だ。


  「今から話す内容、どんな内容だと思う?」

 

  重要な話と気づいた俺を試すような質問だ。

 

  「七つの大罪の事、もっと言えばプライドの事」

  「なんでそう思った?」

  「話があると言ったアーサーは真剣だった·····それも頼み事をする時人々がする目·····俺に頼み事·····つまり自分の力ではどうしようも出来ないと言う事だ。そこで思いつくのはプライドだ」

  「正解······さすが神様」

  「プライドの足取りを掴んだのか?」


  アーサーは俺を焦らすかのように間を開けた。

  早く答えて欲しい······そう思った瞬間、アーサーは憂いに満ちた表情で、


  「正体が分かった」

  「正体が分かった?居場所が分かったとかなら分かるけど、神であるプライドにその言い方だと·····まるでアーサーも知ってる見たいな言い方じゃない?なんか変な表現の仕方だ」


  正体が分かった·····明らかに違和感を感じる言い方だ。

  人間の世界で言う『犯人の正体が分かった』などとは訳が違う。

  アーサーは人間、プライドは神、住む世界が違うのだから。

  だが次の瞬間、俺は理解した。


  「正体が分かった·····正しい表現だよ·····プライドはルーナだ」

 

  な訳·····と言いたいとこだがアーサーはルーナが神だと言う事を知らない。

  なのに神と言う共通点を当てたのは少し気になった。


  「けどこの前プライドが来た時ルーナは一瞬に居た。ルーナはプライドと戦っていた······辻褄が合わない」

  「俺もそこに疑問を抱いた·····だが相手は神だぞ?未知の力がある。それにジャックは途中気絶してたんだろ?」

  「夢····あるいは幻覚を見せられていたと言いたいんだな?確かにそれなら納得できる」


  俺が少し考え込む仕草を見せるとアーサーはこちらを細い目付きで見てきた。

 

  「何?」

  「お前、知ってたんだな?ルーナが神だって事を」


  ――やらかした。

  まさかアーサー相手に引っかかっるとは思わなかった。

 

  「カマかけるなんて、勉強できるだけじゃないんだな」

  「ルーナが神、そこに何の疑問も持たなかった·····なぜ黙っていたんだ?」

  「言わなくてもいいと思った、次から言うよ」

  「案外素直なんだな·····そうしてくれ」

  「俺に手伝って欲しい事·····ルーナがプライドだと確かめる事か?それとも?」

  「ルーナを倒す事だ、できるならジャックの魔法か何かで拘束·····恐らく無理だが」

  「分かった、話は分かった。まず作戦はどうする?」

  「それに関しては考えがある·····」


  その時、アーサーの瞳には純粋な正義があった。

  島に潜み、誰にも認識させず、時には皆に認識させ、己の都合で人々を巻き込む大罪神たいざいにん

  そんな神から島を、人を、未来を守ろうとする単純で純粋な正義、アーサーにはそれがある。


  「その考え、先にアーサーが死ぬかもよ?」

  「承知の上さ」

  「気に入った、それで行こう」


  数分後、アーサーから作戦を聞いた俺は思わずニヤリと笑を零した。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  その作戦を実行に移した日は休日である日曜日だった。

 

  「2人きりで遊ぶなんて楽しみだな、アーサー」


  アーサーはルーナと2人、静かな早朝を迎えていた。

  2人は遊ぶ約束をしていた。

  勿論、アーサーにとって楽しい遊びでは無い。


  「そうだね、2人で遊ぶなんて初めてだもんね」


  朝7時、少しくらい静かなら分かるがあまりにも静かな朝だった。

  まるで人々が皆息を潜めているかのように。


  「ここは島の北側、実はここには俺ら2人しか居ないんだぜ?」


  足を止めたアーサーが震えるような声で言った。

  悲しそうな声だが、ルーナからは背で表情が見えない。


  「知ってる」

  「人々は皆南側で眠っている······言葉通り皆だ。お察しの通りジャックの魔法だ」

  「そのジャックは遊びに参加しないのか?」

  「悪いな·····俺だけが遊び相手だ·····七つの大罪、プライド·····いいや、今は敢えてルーナと呼ぶよ」

  「どっちでも構わない、どっちも俺じゃないのでね」


  アーサーは服の内側から隠していた剣を取り出した。

  少し苦しそうにも見えるアーサー、一方ルーナは嬉しそうに見える。

  善と悪、人間と神、苦と楽、あらゆる面において2人に共通点などない。

  それでも、今からする事は2人共同じ······違うものは勝敗だけ。

  今まで1番やりずらい相手、アーサーにとってはルーナがそうだ。

  いくら憎むべき七つの大罪でも、今まで友達として接してきた事実は変わらないのだから。


  「一緒に死んでやる」

  「その意気だ、昔のお前のように殺す気で来い」


  ルーナの言葉を聞き覚えたアーサーは天に向かって手を突き上げた。

  異常なほど徐々に体温が高くなる。

  その熱さは砂漠をも超え、近くの建物を溶かすほどだ。

  上を見上げたルーナが見たものは、あまりにも近い大きな太陽だ。

  大きいと言っても本物程ではなく、建物1つ潰せるくらいの大きさだ。


  「最大威力、ウェザー.サン!」

 

  太陽は容赦なくルーナの頭上に落ちる。

  建物が吹き飛ぶ中、不思議な事に地面だけは傷つかなかった。

  理由はすぐに分かった。

  ルーナが太陽を焼けた片手で持ち上げていたからだ。

 

  「キャッチ、次は俺が投げる·····取れよアーサー」


  ニヤリと笑ったルーナは太陽をアーサーに投げ付ける。

 

  「ちっ、ウェザー.サン解除」


  アーサーに当たる前に太陽が消えた。

  魔法を解除したからだ。


  「ウェザー.クラウン」

 

  切り替えるように雲を作り出すアーサー。

  すぐに雲に乗り、空中に避難する。


  「追いかけて来ない?」


  ルーナはそんなアーサーを見上げるだけで追いかける様子では無かった。

  アーサーは思わず拍子抜けた。


  「飛べるはずだ·····なぜ来ない?」

  「後ろだ」

 

  そう言ったのはアーサーの背後を取ったルーナだ。

  転移空間から身を乗り出している。


  「爆破」


  ルーナがアーサーの手に触れると手が火花を放ち爆破した。


  「いぃぃ!グリードの爆破魔法!?」

  「闇魔法」


  更にアーサーの体を手から出した黒いモヤで縛り上げる。


  「何!?」

  「はい、空気弾、バンッ!」


  残りの左手も空気弾が貫通し、血が溢れ出た。


  「野郎!!」

 

  あまりの苦痛の為、アーサーはルーナを蹴り飛ばし、体にまとわりついていた黒いモヤを体に纏った熱で燃やした。


  「ケケっ、手を見る事をおすすめするぜ」

  「これは!?」


  アーサーの左手の傷口は腐りかけている。


  「毒魔法だ」

  「なぜ仲間の魔法を使える?」

  「神だから」


  とぼけた返答をしたルーナはアーサーに手を向ける。

  魔法が来るのが分かっても何の魔法かは分からない。

  アーサーはできるだけルーナの視界に入らないよう雲で移動するが常に見られてしまう。

 

  「磁力魔法」

  「な!?」


  激しく逃げ惑うアーサーの体はピタリと止まり、ルーナの手元に引き寄せられる。


  「真理の義眼でも持ってんのか!?こんな複数の魔法を扱えるなんて」

 

  手元に来たと思うと次は遠くに吹き飛んだ。

  アーサーは不時着し、立つどころか意識が曖昧だ。


  「いぃぃ······」

  「父を殺され、母が自殺、こんな時代にそんな状況を作ったのはだーれ?」


  アーサーとルーナにしか分からない事だった。

  アーサーの両親が死んだ事なんて誰にも言ってないのだから。


  「ラース·····」

  「その通り。なぁアーサー、母親が自分を置いて死んだから·····女性が苦手なのか?父親が殺されたから·····周りの死が怖いのか?」


  血を流し倒れ込むアーサーの近くでルーナが囁くように質問と詮索を行う。

  それも知っている答えをアーサーに確かめさせるように。

 

  「ラース、アイツさえ居なければ幸せな少年時代だった·····けどなアーサー、アイツが居なければ今の幸せは無かった······ジャックに出会う事も、アリスに出会う事も、無かったかもしれない······この島は確実に無かった。そんな運命のどこを呪いたいんだ?ラースか?自分か?それとも神か?お前は一体何がしたかったんだアーサー」


  ぼーっとしていたアーサーは、不思議とルーナの言葉が鮮明に聞こえた。

  そして言われた事を考えていた。


  「確かに·····お前と会え、戦えたこの人生は素晴らしい······この妙な感情でお前と俺が友達だった証だと実感できるよ」

 

  爽やかに笑ったアーサーはルーナを強く抱き締めた。

  ルーナの体を潰す勢いの力で抱き締めた。


  「ウェザー.エンド」

 

  静かに瞼を閉じ、魔法を唱えた。

  瞬間、2人は光に飲み込まれ爆発音と共に吹き飛んだ。


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