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愛を知らない神様  作者: ビター
ラスト編
94/113

確信

 

  プライドがアーサーの元から消えた5分後、島からラースとプライドが去った事が確認され、ラストの死亡が報告された。


  「はい、アーサーは無事です。刑務所の方も問題ありません·····はい、今生徒の確認をしています」


  救急車に運ばれるアーサーの隣で協会の者が電話をしている。

  電話を終えたのを確認したアーサーは眠そうにしながらも協会の男に、


  「ジャック·····寮にジャックって子が居るか確認してくれますか?後····ルーナって言う生徒も」

  「·····分かりました」


  男は不思議そうにしながらも再び電話を掛けた。


  (ジャックは無事か?それに寮にルーナが居るか確認しなくては·····今は不安と心配で眠れねぇ)


  アーサーは強く瞼を閉じ、少し辛そうな表情を浮かべる。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  既にプライドはラースと共にアジトである城に戻って居た。


  「ラストはアーサーに殺られた。勿論、スロウス達の奪還失敗だ」

 

  城に着いたというのに灯りをつけない。

  プライドはラストの遺体を床に置き、当たり前のようにテレビとゲーム機の電源を入れる。

  ラースは椅子に座って、まだ動かない。


  「とうとう2人になってしまったな」

  「そうだな」

 

  暗い中、距離を取って話す2人は少し不気味だ。


  「協会本部に俺達側の人間が居た·····そいつの考えは俺達と同じだった」

  「スパイ見たいな奴だなそいつ」

  「そいつがユグドラシル設立を提案したらしい。俺達の目的達成の効率を考えて」

  「その割にはかなり厳重な島だな」

  「あともう一つ教えてくれた」

  「何だ?」

  「ラトニーとエンヴィーの死についてだ」

  「つまり?」

  「ラストも殺したな?なぜ裏切った·····プライド」


  空気が一瞬で凍り付いた。

  テレビの画面には「GAME OVER」と表示され、プライドの手からコントローラーが落ちる。

 

  「考えろ·····神に聞くな」

  「俺はお前を信じたかった·····ラストを、エンヴィーを······ラトニーを返せよ······神ならできるだろ·····」


  ラースは椅子に肘をかけたまま、涙を流して言った。

 

  「ケッケッケ、今まで自分がしてきた事を、自分がされたら泣くのか?怒るのか?憎むのか?覚悟してきた事だっただろ?」

 

  さっきまで一切表情を見せなかったプライドはラースを嘲笑う。

 

  「状況が違うだろ!なぜ仲間であるお前に殺されなければならないんだ!!ラストはお前を可愛がった、エンヴィーは神であるお前を慕ってた、ラトニーはお前を······お前を息子のように想っていたんだぞ?······お前もそうじゃなかったのか?ずっと騙していたのか?」

  「嘘つき相手に真実を確かめようとするな·····答えたところで満足しないだろ?」

 

  プライドの冷たい瞳がラースを突き放すようだ。

 

  「やはり神は俺の敵だった·····俺はとことん悪魔になるしかないようだ」

 

  ラースはそう言って磁力魔法でプライドを吹き飛ばした。

  壁に埋まったプライドはホコリや木くずを被っているがダメージは一切無い。

 

  「神は人間の拳や道具で傷つかない。そしてお前の磁力魔法は直接的な攻撃は出来ない·····吹き飛ばして壁に打ち付けたところでダメージにはならない·····よってお前の攻撃手段は体や物に魔力を纏って攻撃しかないな」

  「親切な説明ご苦労さま」


  プライドの体は宙に浮き、物凄い速さでラースの手に引き寄せられる。

  ラースの右手には小刀がある。

  小刀はプライドの手に突き刺さり、ガッチリと動きが止まる。


  「な!?磁力が働いてるのに·····止まりやがった」

  「小刀に魔力を纏ってない·····なるほど神器か。バアルの奴から貰ったな?」


  ラースの右手とプライドの体には引き寄せ合う磁力が働いてる。

  それでも尚、プライドは小刀を止めたまま動いていない。

  プライドは小刀を折り、ラースに一発蹴りを入れた。


  「あぁぁぁ!!」


  悶絶するラースは床に倒れ込む。


  「今は殺さない·····シナリオ通り進める」

  「プライドォ·····絶対に殺す······俺を生かした時、お前の死は確定する·····必ず殺る」


  悶絶の最中でもラースには執念がある。

  神にも歯向かう執念だ。


  「お前は俺を探せない。けど安心しろ、また戻って来る。それまで攻略の仕方でも考えてな」


  プライドは音も気配も無いまま、幽霊のように城の出口まで足を運ぶ。

  そんなプライドを目で追うラースは血を流しながら、


  「必ず戻って来い·····プライド」


  怒りと憎しみを押し殺す。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

  「ううっ」


  ――眩しい。

 

  「·······あ!プライドは!?」


  俺が目覚めたのは日が登り始めた時間帯だ。

  ルーナと共にプライドを追っていたはずだが······どうやら気を失っていたらしい。

  それに気絶する前の記憶が曖昧だ。


  「ルーナ?」


  周りを見渡すとルーナがボロボロで倒れていた。

 

  「おい!しっかりしろ!」

  「·····ジャック······無事だったか」


  ――見た感じルーナはプライドから俺を守っていたように見える。


  「取り敢えず治療して寮に戻ろう。きっと協会の者やアリス達が心配してる」

  「それなら大丈夫だ·····俺とお前の分身のような存在を寮に置いてきた······人間共の事は大丈夫だ」


  潰れた声で言うルーナ。

  ――まさか俺が足を引っ張るとは······。


  「治癒魔法」

  「けど、どっちにせよ早く戻るぞ······アーサーやアリスはお前の正体を知ってる·····俺の残した分身に気付き心配してるだろうよ」

  「分かった」


  ルーナの体を治療しながら俺達はビルの上から街を眺める。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  朝早く、アリスの部屋にドアをノックする音が聞こえた。

  それも焦るっているような、急かすようなテンポと強さ。

  少し怖くなったアリスは恐る恐る覗き穴を覗く。

  ドアの前に居たのは病院服を着た顔色の悪いアーサーだ。


  「どうしたの?それに病院に運ばれたって聞いたけど」

 

  慌ててドアを開けたアリスは、弱々しいアーサーを支えるように手を差し伸べた。


  「ジャックとルーナ知らないか?」

  「自分の部屋に居ると思うけど」

  「妙な事が起きているんだ。協会はジャックもルーナも居るって言っていたけど心の中でジャックを呼んでも来ないんだ。ジャックが無事なら俺の叫びにテレパシーで返してくれるからおかしいんだよ」

 

  アーサーはかなり慌てている。


  「落ち着いて、とにかく2人の部屋を見てくるわ。だからアーサーはここで待ってて」

  「いいや俺も行く、俺も一緒に行く」

  「ダメ、これ以上歩かないで。病院を抜け出してきたんでしょ?見て分かるわ」

  「分かった、分かったから早く確認を頼む」

 

  アリスが部屋に戻って来たのは確認しに行った数分後だった。

  走って部屋に戻って来た。


  「2人は?居たか?」

  「居たけど·····寝たまんまで起きてくれない。叩いても魔法を放っても起きてくれなかった······まるで人形のようだったわ」

  「人形?まさか!?ジャック!ジャック!!アリスもジャックを呼んで!」

  「え?ジャックー!」


  アーサーは何か凄く焦っている。

  アリスは困惑しながらもアーサーの言う通りにした。


  「朝から何やってんだあんたら」

 

  その時ちょうど、俺は寮に居て2人の声が聞こえた。

  俺は負傷したルーナを支えながら部屋のドアからひょこっと顔を出す。


  「ジャック!?」

  「ルーナも!?」


  2人は驚いたようにこちらを見た。


  「自分らで叫んだんだろ·····それにアーサーその服·····病人かよ」

  「ジャック·····ルーナ·····お前ら何してたんだ?それにその傷······」


  アリスと違ってアーサーはずっと目線を変えない。

  顔色が悪く弱々しい体なのに目だけは力強い。

  それに困る質問をしてきた。


  「寝てた·····俺もルーナもさっき起きた」

  「さっきアリスが起こしに行った·····嘘がバレたな」

 

  ――帰ってくるタイミングが悪かった。


  「実は――」

  「もういい、ジャック·····真実を言おう」

  「俺は別に構わない」

 

  ルーナは俺の肩からゆっくり手を下ろし、壁によしかかった。


  「実は俺もジャックと同じ神だ」

  「·····それ本当?ジャック?」


  思ったより反応が薄いがアリスの割には驚いている。

  アーサーに関しては疲労と睡眠不足のせいか反応すら出来てない。


  「本当」

  「俺はジャックと違って神の世界から命じられてプライドを追っている者だ。昨晩は2人でプライドを相手にしたが不意をつかれ負けてしまった」

  「私って神様2人に出会えて幸運なのかも」


  今思えばこの時、アーサーの様子が妙だった。


  「じゃあ·····ジャックは知らない事になる·····少なくとも今のジャックは」

 

  先程からルーナの目から視線を外さないアーサーが確かに呟くように言った。


  「どうしたんだ?アーサー?」

  「いいや·····無事で良かったよ」

 

  2人共瞬きもせず、目を合わせたままだ。

  まるでお互いに何かを確信したようだ。

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