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愛を知らない神様  作者: ビター
ラスト編
92/113

裏切り者

 

  綺麗な夕日が見える時間帯。

  アリスは1人、部屋で泣きながらチョコ作りをしていた。

  口に出した『諦める』は建前だったらしい。


  「あ!」


  注意力が低下してるせいか、アリスは料理中に調味料を床に零す。

  今にも挫けそうだ。

  そんな時に、ドアをノックする音がした。

  アリスは慌ててエプロンを脱ぎ、涙を脱ぐってドアを開けた。


  「どうしたの?·······アーサー」


  訪れたのはアーサーだ。

 

  「えっと、今日時間ある?」

  「時間·····少しならある······けど気にせず言ってみて」

  「·····ケーキ食べに行かない?今日限定のチョコケーキ、あっ!もちろん無理にとは言わないよ!」


  アーサーはいつも通り目を合わせようとせず、緊張気味だ。


  「行く······何時から?」

  「良かった!アリスが準備出来次第行けるよ」

  「分かった、終わったら連絡する」

  「ゆっくりでいいよ、じゃあまた後で」


  アリスはアーサーの笑顔をゆっくりと見つめながらドアを閉じた。


  「ちゃんと見てた······チョコの匂いも私の泣いた後も······私を元気づける為にわざわざ······」


  ドアの前で座り込み、再び涙を浮かべるアリス。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  20分後、アーサーとアリスはお互いにオシャレな服に着替えて寮を出た。


  「ジャック·····は?」

  「誘ってないよ、もしかして俺と2人嫌だった?」

  「嫌じゃない」


  店に着くと席に着き、ケーキの注文を済ませる。

  2人ともぎこちないがいつも通りを装ってるようだ。


  「お待たせしましたー、本日限定のバレンタインチョコケーキでーす」


  数分後、ケーキが2つ運ばれてきた。

  小さな円形で見た目から濃厚さと高級さが伝わってくる。


  「いただきます!」

  「美味しい·····表面のチョコも良いけど中身も違う美味しさがある」

  「しかも甘すぎない!来て良かったね」

  「·······うん、誘ってくれてありがとう」


  少し固さが無くなった2人は笑顔でケーキを食べ、軽くお話をした。

  既にアリスから苦しさは無くなっていた。


  「美味しかった」

  「ごちそうさまでした」


  30分後、満足した2人は店を出た。

  そしておしゃべりをしながら寮に戻った。

 

  「じゃあまた明日」

 

  アーサーはそう言って自分の部屋に戻ろうとする。

  だがアーサーの袖をアリスが軽く引っ張る。

 

  「どうしたの?」

  「今日は本当にありがとう。あの、これ良かったら·····」


  アリスが頬を赤くしながら渡したのは指輪くらいの小さな赤い箱だ。

 

  「これって」

  「事情があってこんな小さなものしか作れなかった······一口サイズだけど······今日はバレンタインだから」

  「今年は貰えないかと思った······ありがとう」


  その瞬間、遠くから大きな音がした。

  2人は慌てて音がした方を見た。

  そこにあった光景は、災害にあったかのような悲惨な街並みだった。

  破壊された建物、燃やされてる家、慌てふためく人々。

  そして、


  「七つの大罪が侵入しました!七つの大罪が侵入しました!生徒は寮に避難を!」


  サイレン音と共に島中に放送が流れた。

 

  「来たか······アリスは寮に戻って、俺は様子を見てくる」

  「私も行くわ」

 

  その場を去ろうとするアーサーを止めるように言うアリス。


  「皮膚は治ったと言え、まだ火傷の痛みがある。アリスは寮で待ってて······お願い」


  アーサーがそう言うとアリスは少し目線を下げ、


  「·····約束して」

  「約束?」

  「必ず帰ってチョコの感想教えて」

  「分かった」


  先程とは違う表情のアーサーは、心配そうにするアリスを置いて騒がしい方に向かった。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  「きゃっーきゃっきゃきゃ!」


  無邪気な笑い声、それは燃え盛る建物の上から聞こえる。


  「リーダーは本部に潜入、プライドは白髪の相手、そして俺は破壊を繰り返しながら刑務所に向かいグリードとスロウスを助ける·······本当に楽しい1日になりそう······ハッピーバレンタイン!!」


  笑い声の持ち主は灰髪に派手な服装――ラストだ。


  「けど、先に君が来る事は分かっていた」

  「また負けに来たか·····ラスト!」


  アーサーはラストから少し離れた場所に、魔法で作った雲に乗り、剣を持って立ってる。

  アーサーもラストもお互いが待っていた事を分かってた。


  「3度目の正直、君を倒して前に進む。タイムアタック開始だ!」

 

  ニコッと爽やかに笑うラストの指は、既に銃の形に似せてアーサーに照準を合わせてる。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  「ルーナ!手伝え!プライドを手分けして探すぞ!」

 

  その頃、俺はルーナと共に上空に居た。

  俺の記憶を幼くした張本人、七つの大罪プライドが島に潜入したこのチャンスを逃す訳には行かない。

  それに天界や神界の神々から直々にプライド確保を頼まれたルーナは俺の味方のはずだ。

 

  「手伝うも何も······俺らの目の前、居るぞ」

  「え?」


  俺は一瞬困惑し、ルーナの目線の方を見た。

  黒髪、顔に6つのサタンの手、異常な雰囲気、一瞬で分かった。

  俺とルーナの目線の先には既にプライドが現れていた。


  「お前が·····プライド?」

  「·······」


  プライドは俺を見ず、黙ったまま島の外へ逃げてく。

  同時に俺の中で、疑っていた1つの可能性が消えた。

  それはプライドとルーナが同一人物なのでは無いかという可能性······だがプライドもルーナも別神べつじんだった。


  「待て!」

  「追うぞジャック!」


  ルーナと共にプライドを追いかける。

  心臓がドクドクと鳴り、体がざわついている。

  けど·······知らなかった·······それに間違えだった。

  この時の俺は何にも知らず、ただ踊らされていた······いや、眠らされていた。

  ユグドラシルの中央区では建物がいくつも倒れ、燃えている。

  そんな場所と少し離れた屋上、そこではルーナ――プライドが座り込んでいた。


  「待て······ルーナ危ない·····」


  プライドの隣には寝言を言いながら眠ってる俺が横たわって居る。

 

  「おやすみジャック、いい夢見ろよ」


  俺はプライドによって眠らされ、幻覚を見ていた事を知らなかった。

  そもそも今の俺はルーナとプライドが同一人物だなんて、知らない。

  なんなら夢の中で勘違いしている。


  「さてと、黄泉の国へ案内、しにいこうかな」


  プライドはニヤリと笑みを浮かべ、屋上から落ちるように姿を消した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  七つの大罪侵入の非常時に、魔導士協会本部に黒いフード被ったラースが監視カメラを壊しながら侵入していた。

  カメラは近くにあるものを引き寄せ、機能しなくなっている。


  「見つけましたよ」


  ラースの背後を取った協会の男がそう言った。

  ラースは横目で背後を気にして、


  「魔導士ではないな?悪いが引っ込んでもらおう」


  だが男クスッと笑い、


  「勘違いしないでください。私は貴方方七つの大罪の味方です····ラース様」

  「本当にそうなら、証明しろ」

  「はい、私はこのユグドラシル設立を提案した者です」

  「それのどこが証明だ?」


   ラースは後ろを振り返り男の顔を見た。

   すると男はわかりずらい表情で軽く笑い、


  「魔導士を一か所に集めた、殺しやすかったでしょ?」

  「待て····じゃあお前は裏切り者?このユグドラシルは俺たち側によって作られたってことか?」

  「さようでございます」


  ラースは驚愕し、男はニコッと笑う。


  「ラース様、こんな話はどうでもいいのです。もっと大切な話があります」

  「まだ信用したわけじゃないが、言ってみろ」

  「お仲間のプライドですが、おそらく裏切り者ですよ」

  「なんだと?なぜそう思う」

  「だって、ラトニー様とエンヴィー様を殺した張本人がプライドだから」

  「今、なんて言ったんだ?」


   知らないうちに、裏切り者が現れ、裏切り者が裏切り者の情報を流す。

  さすがのラースも思考停止だ。

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