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愛を知らない神様  作者: ビター
ラスト編
90/113

悪魔達の葬式

 

  俺は慌てて風呂を出た後、すぐに寝巻きに着替えて早歩きで寮に戻るアリスを追いかける。


  「待って!」

  「何?」


  足を止めずに横目で、俺を見るアリスは凄く怖い。


  「さっき、説教するって言っていたけど·······説教、今する?」

  「そんなにして欲しいなら······してあげる。ジャックの部屋に行きましょ」


  ――別にして欲しい訳じゃないけど、気まずいままよりは良い。

  俺はそんな事を考えながら、アリスと共に寮に戻った。


  「どうぞ」

  「はい、ありがとう」


  ニコリと笑うアリスが逆に怖い。


  「そうだ!高級プリンあるけど······お食べに、なります?」

  「あら、親切な神様······貰うわ」

  「······はい」


  丁寧な口調、美しい笑顔、可愛らしい仕草、一緒に居て幸せなはずだが······その心の中を知っているから気まずいし怖い。


  「うん、美味しい」


  美味しそうに高級プリンを食べるアリス。

 

  「良かったです」

  「そう言えば急いでて髪を乾かして無かった·····お願い出来ますか?神様」

  「はい、神様アリスの髪を乾かします」


  俺はドライヤーと櫛を取り出し、アリスの髪を乾かして、丁寧にとかした。


  「ジャック、私は今日から停学なの。何日かは分からないけどね」

  「それって、先生にバレたの?島を出た事」

  「そうよ」

 

  さっきまで友達と話していた気分だったが今は完全に年上のお姉さんと話してる気分だ。

  それに上品で怖いアリスは、何処と無く雰囲気がアマノと似てる。


  「風呂の件だけど、明日からは美叶さんと入ったら?美叶さんはジャックの事気に入っているし、風呂もジャックとなら気なしないと思うよ」

  「美叶さん?話には聞いているけど·····どんな人?いつも海の見える屋上に居るって事しか知らない」

  「桃色の髪の綺麗な人、男嫌いだけど基本優しい。いつも愛瑠って人の死体を連れてるけど気にしない方が良い」

  「なるほど、分かった······明日訪れてみる」


  俺がそう答えた途端、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

  俺もアリスもドアの方に目を向ける。


  「出てくる」

 

  俺はドアの前に立ち、ドア穴を覗いた。

  ドアの前に居たのはアーサーだ。


  「どうした?」


  ドアを開けて、アーサーに問いかけた。


  「帰ってきたのに反応薄いな·····取り敢えず部屋上がって良いか?」

  「今の俺と付き合い短いのに馴れ馴れしいな、別に良いけど」

  「ハハッ、刺々しいな」


  アーサーは爽やかに笑いながら部屋に上がった。

 

  「あ、アリス!?何しにジャックの部屋に?」

 

  アリスに気づいたアーサーは、目を逸らしながら言った。


  「ジャックと色々あって」

  「ジャックと······色々·····」

  「アーサーこそ、ジャックに何の用事?」

  「預けた発信機を貰いに·····明日ミハエル先生を訪れる時持ってく為」


  2人はお互いに長く目を合わせない。

 

  「あー、発信機か·····はいどうぞ」

  「ありがとう」


  発信機をアーサーに渡す。


  「で?倒したのか?エンヴィーだっけ?」

  「ああ、死んだ······けどとどめを刺したのはプライドだ。突然現れ、突然エンヴィーを殺した······前もラトニーを殺したらしいが、何が目的か分からない」

  「プライド·····早く会ってみたいな、会って全てを知りたい」

  「そうだな」


  ――いい事考えた·····アリスのご機嫌を爽やか王子アーサーで取り戻そう。

  俺は爽やかに笑うアーサーを見てそう思った。


  「アーサー、高級プリンがあるから食べて。さぁ、こっちに座って」

  「お、おう。親切にありがとう」


  アーサーをアリスの隣に座らせ、プリンを食べさせる。

 

  「2人共今日は俺の部屋に泊まっていいよ、楽しくパーティでもしよう!」

 

  ――ひとまずこれで良し。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  小さなお城がある。

  人々の目に付きにくい場所に小さなお城、そのお城には七つの大罪が住んでいた。

  だが七つの大罪と言われた7人の反魔道士も今や3人。


  「エンヴィーが殺られた」


  パンケーキを食べるラスト、椅子に座って本を読むラース、そんな2人に突然プライドが言った。


  「今なんて言った?」

 

  耳を疑うラース。


  「これが証拠だ、満足したら墓を作ってくれ」

 

  プライドはラースに、布で包んだエンヴィーの頭を渡した。

  ゆっくりと布の中身を確認したラースは青ざめ、固まった。


  「スロウスも捕まったんでしょ?やばくない?誰が家賃払ったりご飯作ったりするの?」


  先程まで気にもしてなかったラストがエンヴィーの頭を見て、ひょうひょうな口調で言った。

 

  「リーダーとラスト、大人の2人がやるべき事」

  「マジかよ、1番残っちゃ行けない3人が残ったな」

 

  固まるラースと違ってプライドもスロウスもいつも通りだ。


  「1つ聞きたい·····エンヴィーを殺ったのは誰だ?」


  鋭い目付きでプライドに聞くラース。

  その一言と目付きは、空気が一瞬凍り付くようだ。


  「······分からない、俺が見た時には既に······だがユグドラシルから出た島だから生徒では無いだろう」

  「――そうか、死体の回収ありがとう」


  ラースはそう言って席を立ち、エンヴィーの頭を再び布で包んだ。


  「埋めてくる」

  「行ってらっしゃい」


  ラースは城を出た。


  「珍しく転ばなかったね」

  「·····そうだな」


  プライドはほんの少し、ラースを長めに目で追った。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  城を出たラースは1人冷たい夜を歩いた。

  城からしばらく離れ、人気のない丘の上で立ち止まる。


  「最近上手くいかないな。エンヴィー、お前の死は俺の力になる······無駄にはしない」

 

  立ち止まった場所で布に火をつけ、そう呟いた。

  布は燃え上がり、エンヴィーの顔の皮膚を次第に焼いた。


  「――最後までついてきてくれて、ありがとう」


  とうとう頭蓋骨になった頭に水を被せ、火を消した。

  そのまま頭蓋骨を持ち上げたラースは、頭蓋骨を抱き締め、涙を流す。


  「立派な墓は無いけど、スロウスは助けるからな」

 

  しばらくして、頭蓋骨は土に埋められ、小さなお墓が立てられた。


  「ラトニーもエンヴィーも居ない、やはりグリードとスロウス奪還が優先だ······俺とラストとプライド、このメンバーならできる」

  「その件だが、プライドが妙だと思わないか?ラースの坊や」

 

  独り言を言うラースに対し、遠くを見るような目で肩を叩いてきたのは、悪魔であるバアルだ。

  バアル――そいつは、黒い羽根を背中に付け体からは、蜘蛛の足のような物が微かに伸びている。

 

  「妙って、何の事だ?」

  「いや、思わなかったなら良いんだ」

  「言えよ、気になる」

  「それを教えるのが3つ目の願いか?」

  「違う·····いい加減諦めたらどうだ?」

  「5年以上も付きまとって願いを2つ叶えた俺がバカ見たいだろ?貴様が得するだけなんて嫌だね」


  バアルはそう言って中に浮き、背を向ける。


  「プライド······あいつが味方なのは確かだ」

  「味方ね〜」

  「例え敵でも俺には勝てない、神を殺す力を俺は持っている」

  「神より悪魔に頼るか」

 

  静けさとエンヴィーの墓を残し、ラースはその場を去ろうとする。

  だが、足を踏み外し丘から落っこちてしまう。


  「だ、大丈夫か?」


  ラースの体は磁力魔法を利用し、中に浮いていた。


  「大丈夫だ」

  「ドジにも程があるぜ」

 

  再び歩き出したラースの背後で、背後霊のようなバアルが微かに笑った。


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