表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を知らない神様  作者: ビター
エンヴィー編
86/113

到着

 

  もう船からはユグドラシルは見えない。

  それは船が海のど真ん中なのは勿論、明るさが原因でもある。

  真っ暗で手元に明かりを点けないと何にも見えない程暗く、静かだ。

 

  「天使様·····」


  船の中央、小さな空間、ソファーの上で涙を流しながら寝ている美叶が小さな寝言を呟いた。

  床には愛瑠が人形のように倒れている。


  「やっと寝てくれた」


  ミハエル先生はため息をつきながら美叶に毛布をかけた。

  丁寧に毛布をかけると運転席に座りモニターを確認する。


  「自動運転······問題なし、協会が常に安全を確保しているし大丈夫」


  モニターの画面を切り、アイマスクを取り出すとアイマスクを自信の目に当てて深く呼吸をする。

  そんな船の物置部屋、アーサーとアリスは小さな太陽を中に浮かせ灯りをつけていた。


  「流石に寒いね」

  「俺の毛布······要る?」

  「大丈夫」


  小さな声でヒソヒソと話す2人はお互いに背を向けたまま横になっている。

  体に掛けている毛布は薄く、肌寒くて震えが止まらない。

  そんな中アリスは震える体をアーサーに押し付けるように動いた。


  「復讐を終えたら、どうするの?」


  突然問いかけてきたアリスに心臓の鼓動を鳴らすアーサーは唇をゆっくりと動かし口を開いた。


  「普通に暮らすよ。大人になって島を出て、仕事して·······普通に暮らす、ごく普通に」

  「じゃあ、復讐が終わらなかったら?」

  「そうなったら·······普通の生活は無い。魔道士のまま七つの大罪を追い続ける」


  アーサーがそう言うとアリスは黙り込んでしまう。

  だがすぐに冷たい空気を吸い込み、


  「殺しをしないアーサーの復讐は悪いことだとは思わない――」


  アリスはアーサーに良く聞こえるように寝返りをした。

  一方的に見えるアーサーの背を前に目を閉じたまま話を止めない。


  「けど、復讐が優先されてて嫌だ。友達や学問、そう言う当たり前が復讐の後·······私もジャックも復讐の後······今のジャックを元に戻す事よりエンヴィーを優先する·······そんなにお父さんの死が辛かった?それとも仕返しをしたいだけ?ねぇ――」


  更にアーサーの耳元に唇を近寄せ、肩に手を置いて自身の体重を掛けた。

  そして小さい声を染みるような言葉と共に、


  「答えて、アーサー」


  囁いた。


  「········多少はそうかも、けどエンヴィーを追う事がジャックを元に戻す事に繋がる·······ジャックの為でもある魔道士皆の為でもある」

  「自分を救う理由に他人を使わないで······1人じゃないって分からない?今のアーサーは余裕が無いように見える」

  「·······考えてみる、今の俺の事、未来の事、勿論アリスやジャックの事········今は何も分からない」


  アーサーがそう言うとアリスは一瞬目を開けて、再び寝返りをして背を向けた。

  2人共、背中同士が毛布越しにくっ付いていた。

  だからお互いに分かった········震えが無くなっていることを。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  翌日の朝6時、アーサーは目覚めた。

  魔法で創り出した太陽は消えていたが外からの木漏れ日がアーサーを照らした。


  「おはよう。もうすぐ着く、さっき先生の聞こえた」


  アーサーの隣で荷物を纏めるアリスは身支度が完了してるようだ。

  アーサーは少し慌てたかのように寝癖を触り何回も手で慣らす。


  「おはよう·····今準備する」


  船の上からは日差しと共に目的地である陸地が見えていた。

  美叶は麦わら帽子を手で押さえながら陸地の方を真っ直ぐ見ている。

  船が陸地に近づくにつれ陸地が小さな島だと分かった。


  「降りるぞ」

 

  5分後、船は島に着き、ミハエル先生と美叶が島に降りた。

  ミハエル先生の手にはエンヴィーの位置を表す携帯型モニターがある。

  それを頼りに2人は島の奥にある森の中に入って行く。


  「行こう、見失い前に」


  物置部屋から周りを除くようにアーサーとアリスが周りを確認し、船を降りる。

  2人の目先にミハエル先生と美叶が居るが近寄り過ぎず離れ過ぎずについて行く。


  (ついて来た······ミハエルに気付かれるなよ)


  森を歩く美叶は耳から糸を背後に伸ばし、アーサー達を確認していた。


  「ん?」


  微かに聞こえたガサガサッと木の葉が潰れる音にミハエル先生は耳を立てた。


  (まずい)


  美叶は一瞬ミハエル先生を横目で見て、


  「大丈夫だ、今のは動物だ······糸で常に確認してるから間違いない」

  「······そうか、なら良かった」

 

  背後から意識を逸らしたミハエル先生を確認した美叶は安心したかのように軽くため息をつく。

  しばらくするとミハエル先生は足を止め、美叶の前に手を出した。


  「ここら辺に居る······あの大きな木下に居るはずなんだ······だけど姿が見えない」

  「きっと闇魔法だ、僕に任せろ」


  美叶はそう言って指から複数の糸を出して目の前の大きな木の周りを探る。

  だが美叶は難しい顔をしたままだ。


  「居ない·····まさか気の中か?それとも地の中か?」

  「分かった、警戒しつつ行くぞ」


  2人は音を殺しつつ木の影から木の影へ素早く移動する。

 

  「奴を探しつつ、痕跡を見つけるぞ」


  大きな気の周り、2人は警戒しながら探る。

 

  「ん?これって奴の機械の破片じゃないか?」

 

  美叶が見つけたのは木下にある鉄の欠片だ。

  美叶はそれを手に取り、


  「やはり近くに――」

  「今の音······やばい!?離せ美叶!!それは――」


  ミハエル先生が美叶に近寄り鉄の欠片を目にした瞬間、その場は大きな木をも吹っ飛ばす威力で爆発した。

 

  「くっっ、痛い痛い······くっ·····罠だった――」


  吹き飛んだ美叶は片足が無くなっていたのに。

  傷にしては痛がっていないが血が出て至る所皮が剥がれ、かなり重症だ。

  時間が経てば出血多量で死ぬだろう。


  「ミハエル?·······まさか庇って?」


  美叶のすぐ隣にはミハエル先生が体の至る所が無くなり意識を失って居た。

 

  「女を庇ったか·····だが意識を失っては再生は出来まい······最後くらい楽に行きな」

 

  そこにギシギシと音を立てたエンヴィーが現れる。

  頭には服の一部である布を巻いてあり、見た感じ脳の損傷は無くなっているらしい。


  「発信機に気付いて罠を貼っていたな?流石悪魔の手先、褒めてやろう、凄いね〜おじちゃん」


  美叶は頭にひあ汗をかきながら煽るようにエンヴィーと話をする。

  同時に糸で自身の足を縛って止血し、同じようにミハエル先生の血を止めるように体を縛る。


  「煽ったのは治療の時間が欲しかったからか?命を伸ばしてもミハエルは死ぬぞ?」


  美叶は近づくエンヴィーを目を震わせて見ながら、

 

  (悔しいが今回の悪魔狩りは天使達に任せよう)


  と嘲笑った。


  「明らかに死ぬ直前、止血する意味が無い······意識を逸らしたかったのか?このガキ共から」


  限りなく黒い目を光らせたエンヴィーは背後から迫ってたアリスの樹木を手で粉々にし、アリスに銃の形に似せた指を向ける。


  (何か来る)と咄嗟に思ったアーサーはアリスの背後から、

 

  「アリス避けろ!」


  と叫ぶ。

  だが叫んだ時にはエンヴィーの指からは空気を斬る何かが飛んできた。

 

  (フィトーネ)


  アリスは自身の目の前に樹木を固めた。

  ポンッと何か当たったように聞こえたが特に何も起こらない·······だが時間差で樹木が弾け、アリスの体が吹き飛ぶ。


  「くっ!」


  アーサーはアリスを受け止めて上手く背中から着地する。

 

  「ありがとう」

  「え、あ·······ごめん·····どういたしまして」

 

  アーサーはすぐに手を離し、恥ずかしそうに目を逸らす。


  「白髪によって神が脅かされているかもしれん、見に行かなくてはならない·······だから命を取る、無神論者のガキ共」


  再び、木の影から現れたエンヴィーは見た目以上に人間には見えない。

  まるで機械そのものだ。

先週の投稿、ミスってすみません。

最近は書き上げるのが難しくなってきたので今週から4000文字に戻します。

これからもよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ