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愛を知らない神様  作者: ビター
エンヴィー編
84/113

出発

 

  アーサーがスロウスを捕まえた次の日の夜。

  俺は今プライドとか言う神のせいで記憶は10歳、体は15歳とややこしい事になってしまった。

  さっそく15歳の俺の体に変化を見つけた。


  「髪が真っ白だ·······」

 

  真っ黒だった俺の髪はアマノの髪に良く似た白髪になっていた。

 

  「しかも5年経っても女顔かよ·····何なら増してる·······身長も歳の割に低いし顔もアリス達より幼い·····勘弁してくれよ」


  身長は20cmくらい伸びてるが顔は幼いし女顔·······そして1番ショックだったのが、


  「ん?·····ない····まさかぁ·····クルーニャが斬ってから俺は無くなったのか?嘘!?」


  股間に付いてる物が綺麗さっぱり無くなっていた。

  それに心配事もあった。

 

  「なぁアリス、5年後の俺はお風呂どうしてた?」

  「お風呂?ああ〜、この島に来てからは1人で入ってるよ。いつも風呂上がりは疲れた顔になるけど」


  アリスは少し理解したかのように俺の表情を見てきた。


  「········あっ········そう」

 

  俺は少し焦りながらも寮の部屋を出た。

  部屋を出ると誰かにぶつかってしまい尻もちを着いた。

  ぶつかった相手は同じくらいの年頃の少年で身長はアーサーと同じくらい、黒髪で片目が隠れている。

 

  「·······」

  「やぁ」


  少年が微かに笑ったように見えた。


  「おはようルーナ」

  「おはようアリス」


  アリスの知り合いのようだ。


  「ルーナにも聞いて欲しい。今ジャックの記憶が何者かの魔法によって幼くなっているの」

  「あらま、ほんとか?じゃあまた自己紹介しないとな········俺はルーナ、お前と同じクラスだ」


  少年――ルーナはアリスの話をあっさり信じて俺に手を差し伸べた。

  俺はその時ルーナが人間でも魔道士でも無い事が分かった。

  ルーナは神だ。


  「······そう、よろしく」


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  その日の夕方、アーサーは美叶が居る屋上を訪れていた。

  海と共に輝く夕日、それに勝る美しさを放つ美叶。

  アーサーは屋上の入口の前で美叶を見ている。


  「久しぶり······少し背が伸びたかな?······けど天使のような純粋な瞳は変わらないね」


  海を眺めたまま美叶は透き通った声で言った。


  「あ、あの····美叶さん······美叶さんが明日逃げたエンヴィーを追いに行くって聞いたんですけど······」


  アーサーは入口の前から1歩も動かず、目を逸らしたまま声を震わせた。


  「珍しい客だと思ったらそんな事か·······アーサーも行きたいんだね?悪魔狩りに」

  「はい·····タダではとは言いません」

  「タダでいい······君を連れてく·······君は僕と似てる、気が合う」

 

  アーサーは美叶の目を見て少しゾッとした。

  美叶の目に嘘は無かった。


  「ありがとうございます」

  「どういたしまして·····隣、来なさい」


  優しい声と共にアーサーは美叶の近くに足を運んだ。


  「その話、待って下さい」


  入口から女性の声がした。

  同時にドアが開き、声の持ち主――アリスが姿を見せる。


  「アリス?」

  「待ちます、今の話」


  アリスは少し目を細めてアーサーを見ている。


  「島から出るって事だよ?ダメに決まってる」

  「ごめんとは言わない·····エンヴィーを倒しに行く」


  アリスはアーサーの返答を聞き少しムスッとした。

 

  「美叶さん、貴方も共犯です。バレたらどうするつもりですか?」

  「協会も魔道士も怖くない、1番怖いのは悪魔達によって犠牲が出る事」


  また少しアリスの表情が強ばる。


  「なら――」


  表情を強ばらせたまま2人に近づくアリスは下を向いている。


  「私も行きます······連れていない場合は魔道士協会に言います」

 

  アーサーは驚いた様子で顔を上げ、美叶はニコリと笑っている。


  「決まりだ。さっそく発信機を取り除こう」

  「まじか······」

  「発信機って······何のこと?」


  アーサーは少し横目でアリスを見ている。

 

  「島に居る生徒達の耳元入っている発信機の事、僕は生徒じゃないから入ってないけど······もしかして知らなかったのかい?」


  美叶の説明を聞き、アーサーとアリスはお互いに目を合わせる。


  「最初島に来た時か······埋め込まれたのか······」

  「確かに島から出るとすぐバレちゃう·······けどどうやって取り除くんですか?」


  首を傾げるアリスを見て、美叶は立ち上がる。


  「僕の糸で取り除く、痛いの我慢できるかな?」


  アーサーとアリスは心配そうな表情でコクリと頷く。


  「じゃあ始めまーす!2人共目瞑って座って」


  美叶の言う通り2人はゆっくりと座り、目を瞑る。

  妙に静かになるとアーサーとアリスの左耳元に注射針を刺されたような痛みが走る。


  「終わったよ」

  「え?もう?」


  2人が思っていた時間よりも早く、軽い痛みで済んだ。


  「これが発信機、誰か別の生徒にくっ付けとけば良い」


  発信機は落とすと見失うくらい小さい鉄の塊だった。


  「ありがとうございます」


  アーサーもアリスも発信機を受け取る。


  「耳の傷はまだ我慢して、島に帰ったらミハエルに治してもらいな。今治しに行くと疑われる·······あと出発は明日だから荷物まとめて朝4時僕の元集合で」

  「分かりました」


  アーサーはアリスの耳元の傷が糸で縫われている事を横目で確認した。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  島は暗くなり、寮では賑やかな生徒達が話をしている。

  そんな中、アーサーとアリスは俺の寮に訪れていた。


  「発信機?これを俺が持ってろと?」

  「うん、お願い」


  俺は小さな鉄の塊を受け取り、机に置いた。


  「分かった、俺はまだ動かないでおく。下手に動くより学園生活に慣れる事を優先する」

  「確かに、それがプライドの狙いかもしれないからね」


  アーサーは俺の適当な理由に納得してくれた。

  本当は神であるルーナに聞きたい事があるだけだが······まぁ良いだらう。


  「危なくなったら心の中で俺の名を叫べ、テレパシーとして俺に伝わる」

  「ありがとう」


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  翌日、朝5時半。

  島の外で小型の船とミハエル先生が居た。


  「待たせた、行くぞ」


  その場に白いワンピースを着た美叶と白いマントを羽織った愛瑠が現れる。


  「乗れ」


  朝5時40分出発した船は島を離れて行く。


  「思っていたより広いな」

  「クルーザー型遊覧船だ」

  「そうか······こんな近くで見る海は久しぶりだ」


  美叶は辺り一面に広がる美しい海を眺めながら呟いた。

  聞こえる音は波の音、船の音、それと、


  「僕は君に〜とっての天使になりたいよ〜君が僕にとっての神様だから」


  微かに聞こえる美しく透き通った美叶の歌声だ。

  ミハエル先生は横目で海を眺めながら歌う美叶を見ている。


  「歌が好きなのか?」

 

  ミハエル先生の一言で美叶は歌うのを止めた。


  「······少し。弟がバンドマンだった·····今の歌は弟のバンドの歌だ」

  「バンド名は?」

  「『アンジェリー』······何語かは忘れたが天使を意味するらしい·······弟もバンドメンバーも天使のように良い人ばかりだった」


  少し目線を変えたミハエル先生は静かに大きく深呼吸してから口を開いた。


  「死んだのか?」

  「·····ボーカルの弟だけ·····僕の家族は皆七つの大罪に殺られた」

 

  少し辛そうにしている美叶から目が離せないミハエル先生は虚しい表情を浮かべながらも拳を強く握った。


  「いつまでそうやって復讐を追うつもりだ?婆さんになっても七つの大罪のような奴が居たら同じ事を繰り返すのか?」

  「取り敢えず七つの大罪と言う組織は潰す」

  「全て無くしたような顔は止めろ、家族も愛瑠ももう居ない·······過去や復讐に囚われるな·······未来を自ら捨てるな」

  「過去を無かった事にできるか·······未来は過去と決着付けなければ救われない·······」

  「······そうか――」


  ミハエル先生は目を瞑り感情を消したかのように再び深呼吸をした。

 

  「これ以上は言わないが·····よく考えて欲しい·····今からでも遅くは無い」

 

  美叶はミハエル先生の言葉を無視して愛瑠と共に海を眺めた。

  だがその数分後美叶はミハエル先生に聞こえるように、


  「なぜ魔道士なんかやっている?お前の魔法なら医師とかの方が向いてるしお金になる」

  「金が欲しいわけじゃない、それに魔道士は医師には救えない人を救える」

  「じゃあなぜ?」

  「もう寝てくれ、明日戦えなくなるぞ。運転するのは俺なんだ」

  「········あっそう、人には言うだけ言っといて自分の話はスルーですか」


  美叶は拗ねる。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  美叶とミハエル先生が乗っている船には小さい地下のような場所がある。

  人が入るには狭いが魚を積んだり荷物入れにはちょうどいい場所。


  「ウェザー.サン·····ミニ」


  その地下にはアーサーとアリスが居た。

  魔法で創った小さな小さな太陽が暗い地下を照らしている。


  「これで明かりは······って······」


  明かりが付いた事でアーサーはアリスとの距離の近さを実感した。

  地下はお風呂場くらい小さい······アーサーとアリスの距離はほぼゼロ距離だ。


  「あ、あ······アリス·····ごめん·····」

  「この広さなら2人で寝れるね」

  「2人で!?」

  「?」


  アーサーは目を泳がせながらもアリスからできるだけ離れた。


  (アリスには女性苦手意識が無くなっていたのに······いや、これはもはや苦手意識じゃない······)


  と心の中で取り乱していた。


  「もしかして緊張してるのかな?」


  アリスはアーサーの慌てる様子を見て少し揶揄うように言った。


  (いつもは普通なのに、なんで2人きりになると揶揄うんだよ·····)


  アーサーは更に取り乱し、困惑する。


  「え·····あ、そうだ!だからあまり近づかない方が·····あ!お腹空いた······ご、ご飯にしよう·····」

 

  アーサーはアリスを横目で見ながら言う。

  するとアリスはニコリと微笑んだ。


  (早く島に着いてくれ)


  アーサーはそう思った。

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