表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を知らない神様  作者: ビター
エンヴィー編
79/113

再戦

 

  「バカな!?」


  魔道士協会本部。

  人々は島に鳴り響くアラート音と共に慌てた様子で協会内を駆け足で走る。


  「何事だ!?」


  1人の男が勢い良くドアを開け、モニター室に入った。


  「な、七つの大罪が侵入しました······それも内部から······て、転移魔法です」


  モニターの前に座って居た男がモニターを何度も見ながら言った。


  「何だと!?転移魔法のラトニーは死んだはずだ·····」

  「映像を確認しましたが転移空間を開いているのはプライドだと思われます。刑務所にラースとラスト·······それと島の中央区にエンヴィーとスロウスが転移空間から現れ、転移魔法の持ちだと思われるプライド自身は身を隠している模様です」


  男達は黙り込みながらも青ざめた表情でモニター映像を見返す。


  「刑務所······まさか!?······奴らの狙いはグリードだ!刑務所に他の魔道士を向かわせろ!現地に居る鬼の兄弟と戦えば返り討ちにできる!」

  「それが······他の魔道士はエンヴィーとスロウスと交戦中です·····寝起きを奇襲されました······既に3人戦闘不能です」

 

  男は更に頭を抱え、指を噛み締める。


  「今ミハエルが行きましたが·······」

  「転移魔法······プライドも使えたかのか?それとも魔法の応用·······それとも愛瑠のような略奪系か?」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  深夜1時。

  ユグドラ学園から少し離れた街中の屋根上で魔道士5人が倒れていた。


  「怪我は無いか?」

  「大丈夫、爺ちゃんは?」

  「俺の体は傷つかない」


  気絶している5人のすぐ近くでエンヴィーとスロウスが穏やかに会話をする。


  「後は僕の毒で殺る」


  スロウスは倒れている魔道士に近づく。

  だが横から投げられた鎖に体を巻かれてしまう。


  「鎖!?あっ、何だ不死身のミハエル先生か····」

  「無神論のガキ·····自ら死に来たか」

 

  現れたのは鎖を持って息を切らしているミハエル先生だ。

  エンヴィーは拘束されたスロウスに近づき、手袋を脱いだ。

  機械で出来た手をグルリと回し、手を太いナイフのような形に変形させた。

  その手は鎖を断ち切った。


  「助かった·····」

  「本当に機械だったとは······しかも変形自在······こっちは徹夜疲れと睡眠不足で死にそうなのに······面倒な相手だ·······だけど、無意味な事はしない」


  ミハエル先生は千切れた鎖を手元に引っ張り、身を構えた。


  「スロウス下がってろ、格の違いを見せる」


  エンヴィーは上着を脱ぎ、機械の肌を見せつけるようにミハエル先生を見下ろした。

  そして手から黒いモヤを出し、ただでさえ暗い夜の空気を辺り一面真っ暗にしてミハエル先生の視界を封じた。


  「行くぞ無神論のガキ」


  ギシギシとした機械音と共に重い足音がミハエル先生に近づく。

  ミハエル先生は短くなった鎖を構え前方に集中する。


  「下手に回り込まないとは·····」


  ミハエル先生は暗闇から微かに見えたエンヴィーの首に鎖を押し当てながら宙を舞い、エンヴィーの背後に回った。

  同時に鎖を再生させ、長くなった鎖でエンヴィーの首を締め付け首をバキバキと音を鳴らせ折った。


  「仕上げだ」


  折れた首は床に落ち、鎖と共にエンヴィーの体が宙に浮く。

  鎖は再び体に巻き付け、体をバラバラに破壊した。


  「脆い機械だったようだな·····次は元学園の生徒·······スロウス······お前だ」

  「エンヴィー!?·······さ、さすがロシア1位の魔道士······」


  闇が晴れ、スロウスはバラバラになったエンヴィーと鎖を手に持つミハエル先生を見て、少し怒りを覚える。


  「俺は手加減を知らない、それに無意味な事はしない·······生け捕りには出来ないからな?」

  「来なよ、先生」

 

  瞬間、ミハエル先生は何者かに吹き飛ばされる。

 

  「がァ!」


  血を吐いて、隣の屋上まで吹き飛ばされた。

  スロウスの近くではエンヴィーのバラバラになった機械の破片が宙に浮いていた。

  次第に機械の破片は粘土のようにくっつき始めた。


  「ま、まさか·······生きている?」

  「スロウス······エンヴィーじゃなくて爺ちゃんだ········俺の死は悲しかったか?」

 

  バラバラだった体は元に戻り、折れた首も何事も無かったかのようにくっつき、平然としている。


  「うん、悲しいから死なないで」

  「そうか――」


  少し顔を伏せてエンヴィーが呟いた。

  同時にエンヴィーの体は糸によってぐるぐる巻きにされる。


  「爺ちゃん!?は!まさか!?愛瑠と桃色の!?」


  スロウスが上を見上げると糸を足元にして、愛瑠と美叶が居た。

  白いマントを羽織った愛瑠の目はどこを見ているか分からない。

 

  「こんばんはミハエル、君は早く治療してくれ。今から僕が悪魔を打つ」


  美叶は糸から飛び降り、糸を引っ張ってエンヴィーの身動きを封じた。


  「さすがリーダー、愛瑠が生きてると見破るなんて······女性の方は糸魔法かな?見た感じ愛瑠は元気ないけど······」

  「愛瑠!?略奪魔法はヤバい!?スロウス逃げろ!」

 

  エンヴィーは慌てた様子で暴れ、叫んだ。

  スロウスは一瞬戸惑うがエンヴィーに背を向け、屋上から屋上に走って飛んだ。


  「逃がすか悪魔」

  「追わせるかよ、ガキが」


  糸で縛られていたエンヴィーは体が真っ黒になり、糸をすり抜けるように闇に消えた。

 

  「闇魔法?体を闇にしたか?·····どっちにせよ先にスロウスを追う――」


  糸は美叶の指に引っ張られ、美叶はスロウスを追おうと愛瑠を引き寄せた。

  だが美叶の体は後方に吹き飛ぶ。


  「お腹が······」


  美叶は腹が抉れ、血を流す。


  「ガキ共······死ね」

 

  暗闇から姿を現したエンヴィーは手を刃物ように尖らせ、美叶を襲う。

  だがそこに現れた少年の剣よってエンヴィーは胴体を真っ二つに斬られる。

  金髪で美少年、右手には大きめの剣を手に持っている。

  少年――アーサーは剣を鞘に収めてエンヴィーの体を手から創り出した雲で拘束した。


  「機械だから死なないはずだ、俺の雲は魔力を乱す。お前はさっきのように闇になって逃げれない」

  「天気のガキか」


  ミハエル先生はアーサーを見て安心した表情を見せる。

 

  「アーサーまた勝手に動いて·····」

  「俺居なかったら皆死んでいた······それとも無意味でしたか?」

  「いや」

  「先生は美叶さんの治療を······俺はスロウスを追います」


  アーサーは剣を背中に掛け、創り出した雲に乗ってその場から去った。


  「俺も早く追わなければ·····」

  「·····おい、この俺を忘れてないか?ガキ共」

 

  雲に縛られていたエンヴィーが呟いた。

  床に倒れながら離れている胴体を妙な動きをしてくっ付いた。

  機械が筋肉のように膨れ上がり、雲を破るように拘束を解いた。


  「嘘·····」

  「魔力を乱す雲······力押しなら関係ないな。早くスロウスを助けに行かなくては·······その前に目の前のガキ共か?」

  「ミハエルありがと·····痛みはあるがもう大丈夫だ」


  エンヴィーは首をギシギシと鳴らし、美叶は苦しそうにしながらも立ち上がった。


  「俺がやる」

  「いいや僕が殺る。僕は1度奴を殺した·····2度殺す」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

  夜中の島は真っ暗だが静かではない。

  七つの大罪侵入により少し騒がしい。

 

  「見えた」


  雲に乗っていたアーサーは暗闇の奥に進むスロウスを見つけた。

 

  「もう少し、まだ我慢だ――ここ!」


  走って屋上を逃げるスロウスよりアーサーの雲の方がやや早い。

  音を消してスロウスとの距離を20mまで縮めたアーサーは剣の鞘に魔力を纏わせ投げた。


  「いっ!?」


  背中に鞘が当たったスロウスは屋上から落ちてしまう。


  「あ」

 

  屋上から姿を消したスロウスが一瞬浮いたのが見えた。

  少し離れた家の屋根に手裏剣を引っ掛け、何か紐のようなものにぶら下がっている。


  「生きてたか」

 

  アーサーは雲でスロウスがぶら下がっている家の屋根まで近づく。

  蛍光灯や街の光でやっとスロウスの顔が見えた。


  「あ、君はアーサー······会いたかったよ、また戦えるなんて幸せだね」


  スロウスはアーサーに気づき大きめの手裏剣を逃げた。

  アーサーは手裏剣を躱すが背後を回った手裏剣に付いた頑丈な糸によって体を縛られた。


  「上は危ないよ、下に落ちよう」


  糸を引っ張ったスロウスはアーサーと共に落下する。

  だが下にあった木によって死にはしなかった。

  落ちた2人はゆっくりと立ち上がる。


  「痛い·····」

  「······スロウス、学園にスパイとして潜入していた事があるな?」


  アーサーは痛めた足を感情と共に抑えながら問いかけた。


  「それが何?」

  「ロスと言う生徒·····担当の先生から聞いた話では大人しく優しい青年だったらしい。お前が生徒に毒を盛ったあの日·········ロスと仲が良かったキースとエリザ······2人だけが教室で死んでいた······毒によって·······聞かせてくれ·······その友情は偽りだったのか?それとも今悔やんでいるのか?」


  アーサーは鞘を拾い、剣に収めた。

  スロウスはクマのできた目を細めてため息をついた。


  「よく調べてるね······キースとエリザ·······忘れてない、毎日毎日毎日寝る前思い出してる······キースは僕を友だと言い、エリザは僕を愛してると言った。本当に好きだったよ」


  ニコリと笑っているがどこか悲しい表情だ。


  「じゃあ尚更だな。なぜ殺した?自ら友の命を奪うなんて考えれねぇな。俺は自分を想ってくれる友達を裏切れない·······だからお前らを殺さない······俺の友達は俺が人殺しになるのを望んでない」


  グッと拳を握ったアーサーは少し腹立たしい様子だ。


  「中途半端·······君は復讐を決めたのに手段を選ぶのか?やると決めたらとことんやるでしょ?僕もそうだ。だから七つの大罪として魔道士と霊媒師をとことん殺す·····僕が殺らなくても七つの大罪はやり続ける·····なら僕が参加して早めに地獄を終わらせる······解った?僕の意見、気持ち、伝えたい事を······君はやるべき事をやりきれない怠惰人間って事だよ」


  スロウスから笑みは無くなり無表情になった。

  手裏剣の付いた紐を手元に引っ張り、アーサーから目を離さない。


  「解った······けど俺の気持ちも解って欲しかった。こうなれば俺のできる事はただ1つ、お前を刑務所に追いやることらしいな」

  「解ってくれてありがとう·····じゃぁ、乱れようか?復讐の王子様とこの僕の2人きりでね」


  スロウスは両手に大きさの違う手裏剣を持ち、アーサーは剣を構えながらゆっくりと距離を縮める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ