決着の数分前
ユグドラ学園から少し離れた場所。
傷だらけのアーサーと過呼吸のグリードが倒れている。
僕は真理の義眼で2人の危機を察知してやって来た。
「治癒魔法」
僕はアーサーの傷を一瞬で治し、痛みを和らげた。
命を取り留めたが眠ったままだ。
「次はグリード」
「貴方、白髪?」
グリードは僕に気付いた。
僕はグリードの体に触る。
大きな傷は無い、けど過呼吸で死にそうだ。
「病気、なら直せる、真理の義眼」
触って、グリードの病気を直した。
グリードの過呼吸は無くなった、そして自身の体の変化に気付いたように驚く。
「まさか?呼吸が楽になった·····貴方何をしたんですか?」
少し不満そうに、グリードが問いかけてきた。
「病気を治したよ、けど、仲間の元へ渡す事はしない」
「その優しさも要りません」
グリードは僕の首を掴み、爆破させた。
魔法は神にも効果がある。
だが僕の体には傷一つ付かなかった
「失ったの?そんな感じだ、アマノが死んだ時の僕と同じ雰囲気、匂い、音、全部伝わってくるんだ」
グリードは平然と生きている僕に驚いたような表情を見せ、手を離した。
だがそれと同時に僕の言葉にも反応した。
「貴方·····なぜ分かるんです?貴方は·····何です?」
「少し分かるだけ、後は何も分からない、最愛の人が死んだ人はたくさん見てきた、それに縛られた者もたくさん見てきた、ただそれだけ」
グリードは僕を見て涙を流した。
何に感動してるかは分からない。
「別に縛られて生きてる訳じゃ無いです、何も要らないだけです、共感も慰めも要りません」
グリードは涙を拭き取った。
そして僕を爆破させようとして、僕に触れた。
「無駄······ですね」
だがすぐに手を離し、仰向けになって倒れ込む。
「どうせなら死なせて欲しかったです」
「欲張りですね、死んだ者の為にも生きてください」
グリードは僕を見て「ははっ!」と笑った。
「最後の最後で欲張り者呼ばりですか!ははは!やっぱ人の本質は変わりませんね、私は強欲です」
グリードは1人で笑い疲れる。
そして満足したように瞼を閉じた。
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ユグドラ学園玄関前。
ミハエル先生は意識を失って倒れていた。
そのミハエル先生の上にはラストが座って居る。
「痛た、まだ痛い、この再生の魔道士はグリードの為にもまだ生かしとこう」
ラストは腹の傷を痛がりながら呟いた。
そこに突然、ラトニーの転移空間が現れる。
「ラトニー!迎えに来た······の?って、どうしたの!?だ、ヤバいんじゃない?」
ラストはラトニーを見て慌てる。
腹に日本刀が刺さり、見た目で分かるくらい体が潰されて、出血も酷い·······体には軽く糸が巻き付いてる。
「はぁはぁ、私はもうすぐ死ぬ、だから貴方達を回収しに来た·····グリードは?」
ラトニーは血を流し片目を瞑りながら言った。
「グリードはアーサーと······待って!グリードがコイツを爆破すればラトニーの傷も再生できるよ!」
「はぁはぁ·····いや、ダメみたい」
ラストはミハエル先生を蹴りながら言った。
だがラトニーは遠くに居るグリードを望遠鏡で見ながら悔しそうにした。
「グリードは白髪に捕まった、どっちにしても時間が無い、早く転移空間に」
「分かった、その前にコイツを殺す」
ラストは指を銃の形に似せ、ミハエル先生の額に突き立てた。
「くらえ――」
だがラストは樹木の鞭のような物で転移空間まで吹き飛ばされてしまう。
ラストは転移空間に消え、樹木の影からアリスが現れる。
「殺させない」
「アリス?また·····やられたわ」
ラトニーは転移空間に消えた。
アリスは急いでミハエルの元に駆け寄る。
そして体を少し揺らす。
「んん」
ミハエル先生は目を開けて、意識を取り戻した。
「アリス?ラストは?······アリスなぜ?教室で待ってなさいと言っただろ?」
ミハエル先生はアリスを見て、心配そうにした。
「戦える者が待機するのは無意味だと思って······すみません」
「······いや、今回はアリスのおかげで助かったらしい、無意味で無かった、ありがとう」
ミハエル先生が軽くため息をついた。
感謝されたアリスは少し嬉しそうだ。
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近くには大きな橋がある。
橋の近くで5人の魔道士がラースに追い詰められていた。
「流石に強いな、Sランクの中でも上位勢ばかりだ」
と言っているがラースの体には傷1つ付いてない。
「近寄せてくれない、魔法すら当たらない」
「奴の視界を封じる手もない」
5人は生きているのがやっとだ。
「な?転移空間?」
突然、ラースの隣に転移空間が現れる。
転移空間からは腹に日本刀が刺さり、体が潰れているラトニーが現れる。
生きているのが不自然な程、酷い傷だ。
「ラトニー?」
「リーダー、グリード以外は家に帰りました······早く、リーダーも······私が死ぬ前に」
掠れた声だ。
声を振り絞ったかのように小さいボソボソ声でラトニーは言った。
「逃がすな!!」
5人の魔道士はラース達を逃がすまいと走って来た。
だがラースが男達に手をかざして、男達を後方に吹き飛ばす。
「大丈夫だ、俺なら治せる、早く行くぞ」
声を震わせ、ラースは自身の指輪を見せつけながら転移空間に入ろうとする。
だがラースの体が突然、複数の細い丈夫な糸で縛られる。
「糸?まさか····」
ラトニーはゆっくりと糸が出ている場所を見た。
そこには空中に浮いている美叶が居た。
ラースとラトニーを虚ろな目で見下ろしている。
「言っただろう?神の裁きからは逃げられないと」
美叶はそう言ってラースを強く縛り、地に足を付けた。
「なぜここに?私の来る場所を予測したのか!?」
ラトニーが呟いた。
「仲間の元に来るのは分かっていた、僕は君達の位置を把握していた、来る順番を予測し、1番最後に訪れそうなラースの元に来た」
「この広い島をそんなに素早く?糸か····」
ラトニーが呟くと同時にラースは巻かれた糸を磁力で弾き、拘束を解く。
ラトニーはそれを見てラースを背後から転移空間に入れた。
「な?何を?ラトニー!?」
「ラース、愛してる」
シンプルな気持ちを伝えたラトニーは、転移空間を閉じた。
ラースの姿は消え、ラトニーは血を吐いて膝を落とす。
「がァ!」
「転移空間に入る時隙が生まれる、それを分かっててラースを逃がしたか?それとも自分の死を隠す為か?けど、最適な判断だったよ」
美叶は指から糸を出し、糸でラトニーの腹に刺さっている日本刀を引き抜く。
日本刀を手元に引き寄せ、腰の鞘に差す。
「がァ!」
ラトニーの腹からは大量に血が流れる。
「残酷に殺してやる、君のリーダーが僕の天使達にしたように」
美叶は追い討ちをかけるようにラトニーを糸で縛った。
ラトニーは血を吐き、息を切らし、下を向いたままピクリともしない。
「何も出来ないか?」
「待て!殺すな!そいつは生かして捕える!ミハエルの魔法なら治せる!」
そこに先程ラースに吹き飛ばされた魔道士達が慌てた様子で駆け寄って来た。
「君は?」
「あれだ、確か死体を糸で操ってるイカレ女、協会の人が教えてくれた、ピンクの髪に水色の髪の男を連れた女」
男の1人が男達だけに聞こえるよう静かに言った。
男達は美叶の隣に居る愛瑠を見ながら少し嫌な顔を見せた。
「後は俺達に任せてくれないか?」
「ダメだ、神に指示するな、相手が敵でも女の世界に入って来るな、ゲスは下がれ、汚い目で僕を見るな」
美叶は男達を糸で縛り上げる。
男達はあまりの速さと傲慢さに少し怯えた。
「七つの大罪ラトニー、撃破」
美叶は指を曲げ、腕を引く。
だがその瞬間、ラトニーに巻かれていた糸が切断され、ラトニーの目の前に少年が現れる。
「僕の糸を切るだと?な、君は·····」
少年――黒髪、目元と首と腰に2つずつ女性の手を身に付けている。
顔は良く見えないが、分かりやすい特徴と異様な雰囲気で分かる。
「プライド·····愛瑠が七つの大罪最強だと称していた子供」
美叶は糸を指にしまい、プライドを睨む。




