真理の義眼
アーサーは状況を理解した。僕が死んだ事。
「約束は守る」
ラースがそう言うとアリスの拘束は解除される。
そしてアリスは泣き崩れる。
「それより天気の魔導師、俺達のメンバーに入る気は無いか?入るならば生かそう」
ラースはアリスやアーサー、死んだ僕を気にせず話にを進める。
「天気魔法····ウェザー.サン」
アーサーもラースの話を気にせず部屋いっぱいの太陽を創り出す。
僕に初めて見せた太陽の何倍もある。
「熱っ!」
「誰か止めてやれよ」
部屋の物は次々と溶け始め周りの者も火傷しかけている。
「いや誰か行けよ!」
「じゃあ私が行きますよ」
すぐにグリードがアーサーの腕を触り腕を爆破させる。
アーサーは倒れ込み無くなった腕からは血が吹きでる。
「がぁああああ!!」
アーサーの叫び声と共に太陽は部屋に落ちかける。
だがラトニーが1歩前に出て手をかざすと太陽は徐々に下から消えていく。
「この子、仲間の女の子が居るのに構わず魔法を放つなんて·····完全にイカれたな」
ラストはそう言いながらアーサーに近寄る。
アーサーは痛みを堪えながらラストに魔法を放とうとするがグリードの魔法で吹き飛ばされる。
「か、風魔法だと!?爆発じゃないのか?」
グリードが放った魔法は爆破ではなく風だった。
魔法属性は1人1つのはずなのに。
「馬鹿だな〜。グリードに勝てるはずないだろ?爆破した人の能力を使えるんだよ?」
「ラスト!言うな」
「いいじゃん、この子死ぬんだから」
グリードとラストはアーサーを仕留めようとする。
アーサーはそんな2人を前にただ痛みを堪えるしかなかった。
「腕が、くッ·····ああああああああぁぁぁ!!」
「意外とうるさい子だな〜、早く殺って」
「分かった!?」
グリードがアーサーのトドメを刺そうとした途端グリードは何者かに蹴り飛ばされる。
「命の危険、アーサーが危険だ·····条件完了」
神は人間の武器でダメージを受けない。
僕にナイフが刺さっていなかった、つまり僕は生きていた。
グリードを蹴り飛ばすのもこれで2回目。
「ジャック!なぜ?血は?は!?これが神の?」
「血は···絵の具かな?ごめんね」
もう少し早く起き上がるべきだったか···。
まぁ良い。アマノ様、力を借ります。
「真理の義眼!」
真理の義眼。この目は全能の目、またはプロビデンスの目と呼ばれる最強の目だ。
動体視力などは勿論、相手の心や未来が見える。
「え?」
それより気になる事があったんだ。まず七つの大罪リーダーのラースから悪魔の匂いと気配がする。
ラース自体は間違いなく人間だが悪魔の匂いと気配が染み込んでいる、どういう事だ?
それにもっと気になるのは部屋の隅に居る僕と同い年くらいの少年。
この少年は間違いなく神だ。匂いも気配も、間違えない····確実に神だ。
それにこの神、見覚えのある物を身に付けている。
それは手だ。
昔クルーニャと言うアマノを死に追いやった張本人だった神が身に付けていた女性の手みたいな腕みたいなの。
だがクルーニャは大人の神。だが今目の前に居るのは少年の神。
真理の義眼で顔も見えているが全くの別神だ。
どういう事だ?クルーニャの何なんだ?この神は?
訳の分からないのが2人も·····真理の義眼でこの2人の素性を見ようと思えば見える。
だがそれは真理の義眼を使う条件から外れてしまう。
真理の義眼は特訓時と命を守る為時にしか使ってはいけないと決めた。
気になるが仕方ない····
「分身」
僕は自分をもう1人出してアーサーの腕を治療する。
アーサーの腕は治癒魔法により元に戻る。
「おお!」
それからアリスを素早くアーサーの元に避難させる。
誰にも見えないくらい早く。
「え?」
「見えなかった、誰か見えた人居る?」
アリス本人も七つの大罪も皆困惑する。
「安心しなよラスト、7対3だよ?」
2階に居た青年がそう言うと七つの大罪の7人は僕やアーサーに向けて魔法を放つ。
だが魔法は全て僕の手の中に吸い込まれるように消える。
「私の魔法を?」
さっきラトニーが使った魔法だ。僕の真理の義眼は1度見た技や能力を自分の物にできる。
そしてラトニーの魔法を使って属性が分かった。
名付けるならば···転移、転移魔法だろう。人や物、魔法を好きな場所に転移できる魔法。
僕とアーサーがこの城に移動したのもラトニーとか言う女性の魔法の仕業だ。
「リーダー、逃げるた方が良い」
「プライドが意見を言うとは···気になるが言う通りにしよう」
ラースは不思議そうにしながらもプライドと言う少年の言う通りにする。
「ラトニー逃げるぞ!」
「皆私の近く来て」
すぐに7人はラトニーの近くに行くがラースだけは椅子から転げ落ちる。
「リーダーのバカ!」
「分かっていた事だ」
ラースは闇魔法によりラトニーの近くに引き寄せられる。
そして七つの大罪全員姿を消した。
「ジャック、なぜ奴らを逃した?」
アーサーは真剣な顔をして聞いてくる。
「この目を使った時は僕の負けだ、神として捕まえてはいけないから」
「なるほど、それは俺からしても都合が良い」
アーサーはホッとした顔を見せる。
だがこの安心した表情は僕が死んで無かった事や自分達が助かったからでは無い事を僕は知っている。
それを真理の義眼で見てしまったから。
「ジャック···貴方、何者?魔法属性は何?」
アリスが震えながら聞いてきた。
「·····神様?神様かな、僕、神様なんだ」
これ以上誤魔化すのは良い事だと思えない。
仕方なく言ってしまった。
「神様···だからアソコが無いの?」
「それは関係ない」
アリスに正体がバレたけど皆助かった、それに七つの大罪に近づけた。
「今日は僕が2人を家まで送る」
その日の戦いは無事終わった。
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「皆居るか?」
「はい、全員居ますよ」
七つの大罪が移動した場所は先程とは違うお城だった。
少し埃っぽいが城自体は綺麗だ。
「ここどこ?」
「新たなアジトだ、ラトニーと共に複数アジトを用意していた」
「さすがリーダー!」
皆が安心する中、ラースはプライドと言う少年を横目で見ながら2階に上がり自分の部屋に入る。
「バアル、あの白髪は何者だ?神や天使か?」
ラースは部屋に入ると1人事を言うように言う。だがどこからともなく
「それを教えるのが願いか?」
「違う。·····あの白髪、神だろ?」
明らかに誰かと会話している。だが姿は見えない。
「よく分かったな、奴は有名だ。白の神と呼ばれ神、天使、悪魔、いや俺が知る中では1番強い者、ある戦いを終わらせた英雄でもある」
「はやり神だったか」
「···貴様!騙したな!?」
そう言いながら声の持ち主は姿を見せる。
黒い羽根を背中に付け体からは蜘蛛の足のような物が微かに伸びている。
頭には立派な王冠を乗っけたそいつはまるで悪魔のような姿をしている。
「神と言えばあの子供も神なんだろ?」
「ああ、奴も有名だ。英雄ゼウスの孫の1人、だがなぜか俺と同じように神界や魔界に住まないで下界で遊んでいる」
「なぜ七つの大罪に入ったんだろうな?」
「俺の考えでは暇だからだろ?きっと平和な毎日に飽きて下界に来たんだろう、俺も平和に飽きて下界に来たから分かる」
「まぁ、仲間だし、今回もいい指示してくれた」
「あっちも貴様に俺が付いてる事に気付いてるだろうよ」
「そうか。それよりバアル、それをタダで教えていいのか?」
「あ、ああー!罠に填めたな人間!!」
ラースが話していたのはバアルと言う名前の者らしい。
「その白の神ってのはこの指輪を使っても勝てないか?」
ラースは自分が身に付けていた指輪を見せながら言う。
「それを教えるのが願いか?」
「いや。·····あー!そうえば明日限定シュークリーム発売日だ!買いに行こっ」
ラースはそう言いながら立ち上がる。
するとバアルは恨めしそうに
「なあ、それ俺の分買ってきてくれないか?」
「さっきの質問に答えてくれたら」
「くぅー!仕方ない、その指輪を使えば白の神は奴けれるはずだ、さすがに悪魔全員を相手にしたら負けるはずだ」
バアルは悔しそうにしながらも言う。
「つまりプライドも俺の支配下って事か?」
「そうだ、その指輪さえ有れば貴様は最強だ!だから買ってきてくれ!」
「分かった、約束する」
ラースはバアルの目の前で微かに鼻で笑う。
バアルはそんなラースを見て不思議そうに
「何が面白いんだ?」
「いや、つまり俺は神よりも勝るって事だ。それって凄い事だよな?何だか感動してな」
ラースはそう言いながら財布を開ける。
そしてシュークリームを買う為のお金を数えようとするが財布を落としてしまう。
ため息をつきながらしゃがんで財布を拾おうとした途端何も無いはずの場所で顔面から床に転ける。
「まさか、白の神?」
「貴様がドジなだけだろ」
「·····俺は神をも超えた」
ラースはそう言いながら財布を拾う。
だが財布が開いたまま下を向いていた為お金を全て落とす。
「···風呂に入る」
「いや拾えよ」
明日投稿予定だったのですがミスで投稿してしまいました。
なので今日は2話分投稿します m(_ _)m