美叶と2人の天使
島の外の海が見えるいい眺めの屋上。
ベンチには美叶と愛瑠が座っている。
その目の前では僕がルーナを困った目で見ながら宙に浮いている。
「ジャックとルーナは神なの?実は僕もなんだ」
「奇遇だな」
「······」
助かった。
そう言えば美叶は神を名乗る人間だった。
「それとルーナ、僕はお前じゃなくて美叶だ、だから名前を呼んでくれ、美叶様でも良いぞ」
美叶がそう言うとルーナは無表情になり、魔法陣の中にサタンとルナを入れる。
「ジャックが刀を使える、教わったらどうだ?」
「無視ですか·····そうだね、教えてもらおうかな?」
美叶はそう言って僕をチラリと見た。
僕はコクリと首を縦に振った。
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翌日、アーサーとアリスも美叶に紹介した。
僕とルーナは毎日美叶の元に訪れ、アーサーとアリスは週に1度程訪れた。
そんな日々が冬になるまで続いた。
夏の季節が過ぎ去ったのに美叶は未だにワンピースを着ている。
美叶が言うにはワンピースの中に袴を着ているから寒くないらしい。
「流石に寒いね·····けど君達天使が居るから暖かいよ」
美叶は僕とルーナを天使と例えるようになった。
それにこの半年近く、美叶と言う人物を良く知れた。
美叶24歳、髪の色は桃色、糸魔法を使う魔道士、七つの大罪に家族を殺された後に愛瑠とその仲間に出会い七つの大罪を追う。
七つの大罪と接触し勝負をするが愛瑠達は美叶以外敗死する。
その後、愛瑠の死体を操る不屈の神?になる。
つまりアーサーと同じ、復讐者だ。
ちなみに特技は歌とペン回しと裁縫らしい。
時々僕達に歌を披露してくれる。
「ポテト買ってきたよ」
「ありがと」
僕とルーナは美叶の両隣に座りコンビニで買ってきた熱々ポテトを食べる。
美叶はルーナの方を向いて口を開けている。
「なんだ?早く食え」
「君は鈍いな~、僕に食べさせてって意味だよ、ほら」
美叶は少し困った顔をするが、すぐに口を開けてポテトを待つ。
「ケッ」
嫌そうにしながらもルーナは美叶の口に優しくポテトを入れた。
美叶は嬉しそうにポテトを食べる。
「素晴らしい、何より美味だ」
美叶が少し笑った。
「はぁ〜、君達は本当に可愛いな、大人になって欲しくないよ」
美叶が僕とルーナを抱き寄せる。
僕は少し照れ、ルーナは少し嫌そうにする。
「可愛い天使、僕と一緒に居てくれ」
「「·······」」
そのまま僕とルーナに頬ずりする。
――くすぐったい。
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思い出した事がある。
アーサーが美叶の事を知って翌日の事。
時は少し遡る。
「まさか協会の者が隠していた魔道士が居たとは、それも2人、しかも1人は竜介さん、そしてもう1人が本当に本当に最強の魔道士だったなんて――」
昼休み、学園内で僕とアーサーが話をしている。
アーサーは悔しそうな表情だ。
「略奪魔法·····確かに能力は化け物だ、それに奴らのアジトを探るほどの頭脳の持ち主·····ラース以上かもな――」
悔しそうな表情のまま話を続ける。
「けど竜介さんや魔道士協会はラースを舐め過ぎだ、実際に勝ったのはラース、それに竜介さんが勝ったのは光魔法が初見だったから·····言わばまぐれだ――」
少し怒っているようにも見える。
「俺はユグドラシルに来る2年前からラースや七つの大罪について調べて来た、奴らが訪れた場所には必ず行った·····だから分かる、ラースは世間が思っている以上の化け物だ、魔法は勿論、手口や策略も完璧······何より奴が化け物と言える1番の証拠は仲間だ――」
アーサーは僕と目を合わせず少し下を向いて話を続ける。
「あの化け物6人·····いや、神は別として5人、奴らを束ねている、それが1番の証拠·····それに大勢の魔道士が奴に殺されているが奴は殺されていない」
何かを焦るような表情だ。
最近七つの大罪と関わっていないから焦りと苛立ちを覚えたのだろう。
七つの大罪を殺さないと約束してくれたが、復讐心は手放さないようだ。
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七つの大罪アジト、立派な豪邸だ。
「リーダー、場所を掴めました」
「今回はかなり時間が掛かったな、まったく、島の位置を変える魔法があるとは·······協会の奴らを舐めていた」
「すみません」
椅子に座ったラースにラトニーが缶ジュースを渡した。
「ヤバいですね、時間が無いようです」
別の部屋ではグリードが何かの薬をまじまじと見ながら呟いた。
「後····1年も無いかもしれない·····これは私も焦ります」
薬を飲み、水を飲む。
そして机に立てかけてある写真立てを手に取る。
写真立ての写真には1人の弱々しい女性が写っている。
「最後くらいは·····欲張りましょうか」
グリードがそう呟いた途端部屋のドアが勢い良く開く。
「グリード大ニュース!来週出発!またぶっ殺せる!」
ラストが嬉しそうにドアから飛び出して来た。
「来週?それは安心しました」
「ん?何してるの?」
「いえ、少し探し物をしていただけです」
グリードは手に持っていた写真立てを机に置き、薬の袋をポケットに隠すように入れる。
「それより!今日まだ時間あるでしょ?ラトニーが魔道士と霊媒師見つけたからそいつら殺りに行こ!」
「そうですね、支度します」
グリードは腕時計を見ながら言う。
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ある家の中で1人の女性が怯えて部屋の隅っこに座っている。
目の前では2人の男により女性の父親である男が残酷に殺されていた。
手も足もバラバラだ。
「趣味悪いですよ、ラストはそうゆう所から直さないと」
「何言ってるのグリード?どうせ死ぬんだから殺し方なんてどうでもいい」
2人の男――グリードは血を浴びて困った顔をし、ラストは返り血で血塗れになりながらニコニコ笑っている。
「霊媒師1人、じゃああの子が魔道士かな?」
ラストは部屋の隅で怯える女性を見る。
女性は「ヒィ!」と掠れた声を発しながらラストを見る。
「あー!ダメダメ、怯えないで、俺は今から君を殺すけど優しく殺す、女性には優しいんだ」
ラストは女性の両手を優しく握りニコッと笑う。
「なんでもする·······なんでもするから命だけは助けて、助けてよ」
女性が泣きながら言う。
ラストはそんな女性を見て首を傾げる。
「ゲームとか映画で良く聞くセリフだけど·····実際に言った人始めた見た――」
感心した表情で女性を見ている。
「じゃあ1つだけ願いを聞いて、男の願いなんて分かるでしょ?」
ラストは女性と目を合わせたまま続けて言った。
揺らぎの無い、真っ直ぐで純粋な目······だけどその奥には狂気が隠されている·····そんな目だ。
「エッチな事だよ、俺大好きなんだ、えっと――」
ラストが考え込む。
女性の絶望の表情と震えは止まらない。
「あ、ハグしてくれる?そしたら命だけ·····助けたあげる」
「は·····はぁい」
女性は震えながらもラストに軽く抱き着く。
涙が止まらない中、必死に父親を殺した男を抱き締める。
「ははっ!父親を殺した人とハグできるんだね?もしかして俺が好きなの?」
ラストは女性から離れて不思議そうな顔を見せた。
「ち·····そ、そうです」
女性は下唇を強く噛みながら言う。
「そうか、ならまた会いに行こうかな、じゃあね」
ラストはそう言って部屋を出て行こうとする。
振り返ったラストの背後を見た女性は近くにあった小さなナイフを手に取った。
「行こうグリード」
「行きましょ」
ラストとグリードはその場を去ろうとする。
「返せ·····死ね········」
女性は微かにそう呟いてラストの背中をナイフで刺そうとする。
だがグリードが前を見たままナイフを自身の手に刺し、ラストの身を守る。
「一時の欲で動くべきじゃないですよね」
グリードはラストの方を見ながらそう言い、女性の喉を潰し、頭を音もなく爆破させた。
女性は頭が粉々になり死んでしまう。
「ん?」
「急いで下さい、ラトニーが待ってます」
部屋の出入口であるドアを前に、ラストが後ろを振り返りそうになる。
だがグリードが何かを隠すようにラストの背中を押して部屋から出させる。
「ラトニーを待たせちゃダメだ!行こう!」
「はい、行きましょ」
グリードは背中の後ろで左手に付いた血と右手に付いた女性の肉片を擦り合わせて掘ろった。




