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愛を知らない神様  作者: ビター
復讐の開幕編
65/113

美叶と2人の神様

 

  魔道士協会本部。

  美叶が部屋を出ていった後、僕は協会のお偉いさんと話をした。


  「美叶、彼女は七つの大罪に家族を殺されたんだ。壊れかけた美叶を救ったのが愛瑠だと聞いてる、そんな彼を失って正気を保てなかったのだろう――」

 

  お偉いさんは悲しい表情を浮かべた。

  美叶を心配する顔だ。


  「まさか愛瑠の死体を糸で操り、生きてると思い込んでいるとは······今の彼女を救えるのは君くらいだ、なぜか君は美叶に好かれている、たまにで良いから顔を見せてやってくれ。あ、勿論協会も美叶から目を離さない、彼女は七つの大罪に復讐心を抱いてる、とても危険だ」

 

  お偉いさんはニコッと笑い僕に小さな紙を渡した。


  「私の電話番号だ、君もこの件に関わってしまったからね、何かあったら連絡してくれ」

  「分かりました、本当にありがとうございます」

  「良い子だ」


  お偉いさんは僕の頭を軽く撫でて微笑んだ。

  男の人だけど不思議と嫌では無かった······僕に抱く感情の問題かな?

  けど·····嬉しいかも。


  「失礼しました」


  僕はお辞儀をして部屋を出た。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  次の日、僕は美叶の家を訪れた。

  だが家には美叶の姿は無かった。


  「この島の範囲なら余裕か·····」


  僕は目を瞑り感覚を研ぎ澄ました。

  神のようなに気配を探り、犬よりもアフリカゾウよりも匂いに敏感な鼻で、1度見て感じた美叶を探る。

 

  「屋上?」


  僕が向かったのは島の外側にある高いビルの屋上だった。

  飛べる事を悟られないように階段を登り屋上に上がる。


  屋上の扉を開けるとベンチに座って海を眺める美叶と愛瑠が居た。

  汚れていた白いワンピースは綺麗になって、白い麦わら帽子を被っている。

  愛瑠も白い布を羽織って顔以外見えないようになっている。


  「あら、ジャック?まさか会いに来てくれたの?」


  僕に気付いて麦わら帽子を手で抑えながら美叶が振り返った。

 

  「うん」

  「ありがとう、けどどうやって僕の場所が分かったの?」

 

  ギクッ······聞かれるのは覚悟していたが嘘は付けない。

  仕方ない·······。

 

  「僕の特技は人を探す事!·····だから?」

 

  どうだ?


  「意外とお茶目ね、隣座りなさい」


  セーフ。

  実際本当の事だから問題ない。


  「海、好きなの?」


  僕は美叶の隣に座ってすぐに問いかけた。


  「とても好き、生き生きした愛瑠みたいだから」

  「確かに·····生きてるみたい」


  確かに僕らが見ていた海は綺麗だ。

  透き通った青海原が一面に広がり、波の彩が美しい。

 

  「この潮騒の音が僕を落ち着かせてくれる」


  美叶は目を閉じて耳を済ませるようにやや上を向いた。

  今気付いたけど美叶はかなりの美人だ、アマノほどでは無いが·······。

 

  「美叶は今何歳なの?」

 

  ふと気になり聞いてしまった。


  「今は24、そう考えると時間は無いな」


  もしアマノが生きていたら美叶くらいの歳だろう。

  美叶も美しい、何故だろうか······悲しい人は美しい。


  「ジャックは何年生?」

  「中学3年生、まだ13歳」

  「友達や大切な人は居るの?」

  「仲のいい友達は3人?くらい、大切な人は何人か居るよ」


  海の音が僕らを清らかにする中、美叶は悲しい表情と虚ろな目のまま問いかけを続けた。


  「その人達はどんな人?」

  「友達は皆良い人、アーサーとアリスとルーナ、けどルーナは僕を友達だと思ってないかも」

  「なんで?」

  「意地悪するし1人で居ようとするし、アーサーとは敵?みたいな存在だし、僕の邪魔だってする·······よく分からないんだ」

 

  問いかけを続けていた美叶は考え込むように少し間を空けた。


  「······聞いただけじゃ良く分からない、今度僕に合わせてくれ」

  「わ、分かった、危険な人だけど女性の前だったら比較的大人しいから大丈夫だと思う」

  「そうか、少し楽しみだ」


  美叶は少し微笑んだ。

  そしてまた黙り込んで海を眺め始めた。

  愛瑠も糸で操られたままベンチに座ってる。


  「愛瑠さんってどんな人だったの?」


  僕は気になったから聞いた。

 

  「紳士的な人かな、優しくて強い、例えるなら······天使のような人だ」

 

  美叶はそう言って愛瑠の頭を撫でる。

 

  「ジャックがずっと僕と居てくれるなら、愛瑠も必要ないかもね」


  聞こえるか聞こえないかの際どい声で美叶が呟いた。


  「それって·····愛?」

  「愛?」


  僕の問いかけに美叶が微かに反応した。


  「な、何でもないよ」

  「そう」


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  次の日、すぐにルーナを連れて美叶の居る屋上に訪れた。

  意外にもルーナは文句一つ言わずについてきてくれた。


  「こんにちは」

  「こんにちは、今日も来てくれたんだね、ありがと」


  今日の美叶は海を眺めていなかった。

  竹刀で素振りをしていた。

  ベンチには愛瑠と日本刀が掛けてある。


  「なんで素振りをしてるの?」

  「竜介を見て思ったんだ、刀を使えたら強いな〜って」


  美叶はそう言いながら竹刀を床に置いてタオルで汗を拭き、ベンチに座る。


  「けど刀は思った以上に重かった、だから竹刀で練習してた······隣に居るのがルーナ?」


  美叶はすぐにルーナに気付き、首を傾げた。


  「そう」

  「よろしくな」

 

  愛想良くルーナが美叶に手を差し伸べた。


  「思ってた以上に優しそうな子だね、もっと憎たらしい顔だと思ったよ」

  「ケッ、初対面で失礼な奴だな」


  ルーナはいつも通りニヤリと笑い、美叶の隣に座った。

 

  「そちらのお兄さん死んでるよな?なーんで死体を隣に座らせてるのかな?お姉さんッ」


  ――やりやがった。

  ルーナは愛瑠の肩に腕を回して美叶を小馬鹿にするようにニヤリと笑った。


  「ルーナ――」

  「生きてるよ!······ほらね」


  僕の声をかき消すように美叶が言った。

  同時に愛瑠はルーナの頭を撫でて、


  「生きてる、僕は女神様の使い、天使·······愛瑠だよ」


  カタコトで電子音のような声を発した。


  「現実を教えてやる、コイツはお前の糸で操られ動き、お前の糸で糸電話のように喋らされてるだけの人形だ」

  「違うよ、違うよ」


  ルーナがズキズキと美叶の傷を抉るような事ばかり言う。

  美叶も今にもキレそうだ。


  「コイツは幸せ者だ、死んで尚愛されるなんて、だけどもっと幸せ者なのは死んだ者の存在を愛せるお前だ」


  ルーナは手に魔力を纏わせ床に手を付けた。

  床には魔法陣が現れ、そこからは煙と共に2人の女性が現れる。

 

  「俺の方が完成度高いぜ」


  2人の女性――死体であるサタンとルナは美叶の方をじっと見ている。

  生きているか死んでいるのか見分けがつかない。


  「君·····魔法属性は?なんだこの魔法?」

 

  美叶はサタンとルナをまじまじと見て驚く。


  「今のは召喚魔法、俺の魔法属性は······強いて言うなら雷だな」

  「2つ?2つ魔法属性があるのか?」


  美叶の問いかけにルーナは答えない。

  変わりにニヤリと笑いながら僕の体を持ち上げる。


  「え?」

  「バンジージャンプだ!」

  「ちょっとルーナ!ジャックをどうする――」


  ルーナは僕を屋上から投げた。

  僕は地に向かって自由落下する。

 

  「あ」


  僕は思わず宙に浮いてしまった。

  そのまま落下しても無事だが美叶に不思議がられる、かと言って浮いても不思議がられる。

  だがこれはより不思議がられる方を選択してしまったかもしれない。

  ――ルーナのバカッ。


  「え?ジャックの魔法は治癒魔法じゃないの?ジャックも2つ?」


  宙に浮きながら屋上に上がって来る僕を見て美叶が動揺する。


  「実は······」

 

  ダメだ、嘘は付けないし、誤魔化すのも嫌だ。


  「実は俺達、科学者によって実験されてた魔道士なんだ、だから魔法が複数使える」

  「え?」

  「改造人間って事?それは·····凄いね」


  ルーナの嘘に美叶が納得する。

  助かったけど正直喜べない。

  だが何でも正直に言うより小さな嘘をつく方が良い時だってある·······ルーナの場合狼少年過ぎるが。


  「実は今の嘘、俺達は神なんだ、言葉通りな」


  再び、突然、ルーナがニヤリと笑って言った。

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