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愛を知らない神様  作者: ビター
天使対悪魔編
57/113

最終準備

 

  ユグドラシル、ユグドラ学園。

  僕やアーサーは中学2年生から中学3年生になっていた。

  七つの大罪襲撃で壊れた学園の教室や訓練所はミハエル先生の再生魔法で直したらしい。

  それも半年も前の話。

  冬で雪が降っていた頃は終わり夏が始まろうとしている時期だ。

  勿論制服も夏服仕様。


  「次訓練だ、早く行こうジャック」


  成長期、アーサーは少し背が伸びていた。

  それに比べ僕はチビなまま·····神だから身体の老いが遅いのが原因······と思いたい。


  「なんで中学校に小学生が居るのかな?あれ?ジャックちゃんだったか、すまんすまん」


  ルーナが明らかに煽った口調で言ってきた。

  ルーナも同じ神なのにアーサーくらい背が伸びている。

  けど2人共まだ少ししか伸びてない、大丈夫大丈夫。


  「ん?」


  午前中の授業が終わると学園を出た。

  アーサーとアリスと共に学園外のお店で昼ご飯を食べる。

  ルーナはたまに来るが·····本当にたまにだ。


  「どうしたのジャック?」

  「あの人、こっち見てない?」

 

  僕らが街を歩いていると1人の男の視線を感じた。


  「確かに·····気になるし直で聞きに行こうぜ」


  アーサーがそう言って男に近づく。

  白いロングコート、白いシルクハット、白い靴を身に付けた男はベンチに座ってこっちを見ている。


  「あの、どうかしました?さっきから····見てますよね?」

 

  アーサーが声を掛けた。

  すると男は顔を上げて顔を見せた。

  海のような水色の髪に優しい表情、顔立ちはアジア系······日本人だ。


  「あれ?バレてた?実は最近この島に来たばかりで·····君達のような美形中学生が3人も居ると目を疑っちゃって」


  男は爽やかに言った。


  「発言もそうだけど·····あまり学生を見ていると危ない奴だと勘違いされますよ?あと、最近来たって貴方魔道士ですか?」


  アーサーは困った顔をしながら爽やかに言葉を返す。


  「実は魔道士なんだ、君も最少年のSランク魔道士だろ?確か····アーサー、隣の2人は?」

  「こっちがジャック、こっちがアリス、魔道士として働いてないけど2人共凄い奴」


  アーサーが僕とアリスを順番に見ながら言うと男は目を細めた。


  「君、中学生でもう女たらし?顔が良いからって女の子をモテ遊んでると周りに嫌われるよ?」


  男がそう言うとアーサーはムッとした。


  「たらしじゃないです!ジャックは男!アリスだって友達だ!」

  「え?白髪の····ジャック君、男?あら·····そーゆ趣味か」

  「違う!」


  僕が女の子と間違えられる流れ······無くしたい。

  僕もアーサーもいちいち誤解を解くのが大変だ。


  「冗談だって!僕は愛瑠、この島の住人としてよろしく」


  男――愛瑠はニコッと笑ってその場を去った。


  「変な人·····」

  「あんな魔道士居たかな?Sランクには確実に居ないはず·····多分下のランクだろうな」


  アーサーはそう呟いて再び歩いた。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  愛瑠はユグドラシル内の街を歩いていた。

  そして少し怖い顔をして、


  「あれがラースが言ってた白髪·····彼女、じゃなくて彼も守らなくては、無論他の生徒も」


  街中を歩き続ける。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  パラオ、コロール刑務所。

  この場所は地球の広さで見るとユグドラシルに近い場所にある。

  刑務所内では観光客向けに『ストーリーボード』と呼ばれるパラオの民芸品が販売されている。

  店員は刑務所の囚人である。


  「あの、商品は?」


  会計場所の前に1人の男が現れる。

  黒いフードを被った男·····だが会計する様子は無い。


  「囚人を買いたい」

  「つまり·····人手が欲しいんですか?申し訳ありませんがここでは売ってません」

  「売ってない?じゃあ囚人達の場所を教えてくれ」


  男にボケている様子は無い。

  本気で聞いている。

  だがそれが店員のカンに障ったらしい。


  「舐めてんのか?俺がここの囚人だって分かっててバカにしてんだろ?良いよ、売ってやる、喜んで受け取りな」


  店員は態度を変えて男を殴った。

  男は軽く吹き飛び床に倒れる。

  被っていたフードが取れて顔が見える。

  赤髪で一見大人しそうに見える男だ。


  「お前!」


  店員が男を殴ったのを見て警備員が店員の腕に手錠を掛けた。


  「こいつが悪い!あんたも見てたろ!囚人だからってバカにしやがって!」

  「手を出したらお前が悪くなる、分かってるだろ?」


  刑務所と店員が口喧嘩しながらどこかに行った。


  「ほら、少しの間入ってろ」

 

  警備員は店員――囚人を地下にある牢屋に入れる。

  そして仕事に戻ろうと後ろを振り返る。

  すると先程囚人の店員に殴られた男が居た。


  「あんた、入ってきたらダメでしょ、さっき見たいな迷惑な事は止めてくれ」

  「俺は本気だ、囚人を買いに来た」


  男はそう言って警備員の首筋を手刀で叩き、気絶させる。


  「すまない、少し仕事をサボってくれ」


  男は警備員を壁側に寝かせて監獄内に進んで行った。


  「なんだアイツ?囚人でも看守でも無いよな?赤髪·····魔道士?」


  監獄に居た囚人達は牢屋から男を見て不思議そうにしたり威嚇したりする。


  「あの、取り引きしないか?金を払うから力を貸せ」


  男は牢屋に居る囚人達に向かって真剣な眼差しで言った。


  「バカかアイツ?」

  「看守!変な奴居る!早くぶっ殺してくれ!」


  囚人の1人がそう言った。

  すぐに看守が来て男に銃を向けた。


  「魔道士だな?何しに来た?」

  「仲間を救いに」


  看守は躊躇い無く男の足に向けて銃弾を放った。

  だが弾丸は看守の手に当たる。


  「ぐああああああ!!」

  「ごめんなさい、魔道士じゃないけど」


  男は看守の首筋を手刀で叩き、気絶させる。

  そして看守の抉れた手を布で巻きながら囚人達に話しかける。


  「俺は七つの大罪のラース、それで分かるか?」

  「え?」

  「嘘!?なんでこんな所に!?」


  男――ラースを見て囚人達がはしゃぐ。


  「まさか俺達を殺しに?」

  「俺達は魔道士じゃねぇぞ!!」

  「返り討ちにしたるわ!」


  恐れる者、威嚇する者、はしゃぐ者、囚人達は皆ラースを見ている。


  「お金やるから俺に着いてこい」

 

  ラースは単刀直入に言った。


  「あん?ちゃんと説明しろや!」

 

  囚人達をチラ見して、ラースがため息をつく。


  「今から魔道士の子供が住む島····国に行く、そこに俺と共に潜入して俺と共に逃げて欲しい、もし最後まで俺に着いてこれたらいくらでも金をやる、約束する」


  囚人達は耳を疑った。


  「まじかよ!脱獄できるし金も貰える!俺終身刑で未来無かったら嬉しいぜ!」

  「なんか面白そうだな」


  囚人達は騒いだ。

  雄叫びを上げながらラースを称える。


  「早く出せ!先に行っとくが裏切ったら兄ちゃんの仲間って奴ら全員脳みそ引きずるぞ?勿論兄ちゃんもだ!」


  囚人の1人がラースを脅す。


  「分かった、こちらからも言っとく、俺を殺そうとしない方が良い」


  ラースは鉄格子に手を翳した。

  すると鉄格子がブチブチと引きちぎられラースの手元に引き寄せられた。


  「あれが魔法!?すげぇ!」

  「行くぞ」


  約5分で全囚人を牢屋から出し終えた。

  ラースは囚人を背後に連れて監獄内を去ろうとする。

  だが足場の悪い床に引っかかり頭から転けてしまう。


  「だ、大丈夫か?ラースさんよ?」

  「ああ」


  ゆっくりと何事も無かったかのように立ち上がるラース。

  頭からは血を流している。


  「いや、大丈夫の意味知らないだろ?」

  「大きな船を用意してある、行くぞ」


  ラースは気を取り直し足を前に出す。

  だが床に落ちていた尖った鉄格子の破片を踏んでしまい動きが止まる。

  足を引き抜くと足からは血が流れ落ちている。


  「あ、あんたまた·····血が·····」

  「俺は最強の魔道士ラース、これくらい痛くも痒くも――」


  ラースはそう言いながら倒れてしまう。

  よく見ると血を流しすぎている。


  「倒れたァ!?貧血?」

  「血の流しすぎだ!早く治療してやれ!」


  囚人達は慌ててラースの傷を布で巻き、食べ物や薬をどこからか持ってくる。


  「本当にこいつが最凶最悪の反魔道士軍のリーダー?ドジだけで死にそうだな」


  囚人の1人が頭を抱えて呆れた表情をした。

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