神と天使の正体
「まさか······いや····姿が違うじゃないか!」
エンヴィーは床に腰を下ろしプライドを見上げている。
その表情は動揺が隠せていない。
「ケッケッケ····そうだな、だがお前が戦争していた事も知っているぜ」
「ほ、本当に本当に·····クルーニャ様!?な、なんてこった」
エンヴィーは目を見開き驚いた。
「訳あって子供の姿だが·····改めて久しぶり、かな?」
「じゃあ·····お、わ、私は今まで神に無礼な発言を······申し訳ありません!この無礼、どう償いましょう?目ん玉を抉りますか?舌を噛みますか?それとも命を差し上げますか?」
「······」
エンヴィーは床に左足と右膝を付けて頭を下げた。
プライドは宙に浮きながら何も無い場所で座る体勢になる。
「無論俺の事は誰にも明かしては行けない、仲間の前ではいつも通りの態度を取れ」
「承知しました」
「本題に入る、お前、魔法略奪されていないだろ?」
エンヴィーはコクリと首を縦に振った。
「24時間364日、いつでも俺と共にユグドラシルに行く準備をしとけ」
「承知しました」
「天使を名乗る愛瑠達をクリアする、ただしお前が殺るのは女·····クリアするにあたって条件もある」
「条件····と言いますと?」
エンヴィーは見上げてプライドの目を見た。
するとプライドはニヤリと笑った。
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ラース達と愛瑠達が勝負を初めてから3日経った。
「着いたね」
愛瑠一行、ユグドラシル前に到着。
「転移魔法でここに来るとは·····もしかして既に場所を突き止めていたのか?」
1つ大きな建物が島を囲む壁からはみ出て見える。
ウリはそれを見てながら言う。
「突き止めたってのはちょっと違うけど」
「ん?」
愛瑠は美叶、ウリ、ラファ、ガブリの4人を連れてユグドラシルの入口に向かう。
入口付近には何台か監視カメラが仕掛けてある。
「どうやって侵入する気だ愛瑠?」
「見てな」
愛瑠は入口に行くと大きな鉄のドアの前に立つ。
そして一家に1台はあるテレビドアホンのような物のボタンを押す。
「愛瑠です、移住して来た」
愛瑠は監視カメラを見ながら言う。
するとテレビドアホンから、
「指紋、顔、数字のパスワードを入れて中に入って下さい」
テレビドアホンが反転してスマートフォンのようになる。
愛瑠はすぐにそのスマートフォンに指紋、顔、数字のパスワードを打ち込み、解除する。
「行こう」
「「「え?」」」
愛瑠は当たり前のように開いた鉄のドアを通る。
だが他の皆は完全に戸惑っている。
「えっと·····」
中に入ると4人くらい小さな部屋に居た。
部屋は空港の持ち物検査場のようだ。
「え?」
4人はスーツを着て、『魔道士協会』と書いてる腕章を腕に付けている。
そして愛瑠以外の身体検査をした。
「最後に軽い質問します」
身体検査が終わると1人ずつ出入り口の外に呼ばれる。
そこは島の中であった。
そして1人の男が愛瑠達を待っていたかのように立っている。
「これを持って下さい」
男は1番最初に呼ばれた美叶に小さなボールを持たせる。
「質問1、貴方は島に危害を加える可能性がありますか?」
「いいえ」
美叶は一瞬で理解した。
持たせたボールが嘘発見器の役割だと。
男はボールを見ながら次々と質問する。
「質問2、貴方は生徒の命優先でこの島で暮らせますか?」
「はい」
「質問3、貴方は反魔道士·····ですか?」
「いいえ」
「·····お連れの方が来るまで少々お待ち下さい」
「分かりました」
美叶が質問されてから10分、全員が島に入れた。
「確認ありがとうございました、愛瑠様はSランク魔道士ですからこれからはこの島で仕事をして下さい、他の皆様もこの島内で仕事や生活をお願いします」
最後に1人の女がそう言う。
愛瑠達は島をしばらく歩いた。
5分くらい歩くと美叶が不思議そうに、
「あの、潜入ってまさか····」
愛瑠は美叶の方を振り返る。
そして小さく首を傾げて、
「ん?あ、うん、僕達は今日から島で暮らす、その為の手続きは既に終わらせてた」
「愛瑠!?お前はいつも1人で何でもかんでも!俺達に言えよ!」
「ごめんなさい」
ウリやガブリが嬉しそうに笑いながら愛瑠を叱った。
例えるなら我が子がテストで100点を採った時の顔だ。
「皆安心して。七つの大罪を倒せば反魔道士の脅威はほぼ無くなる、僕達が作戦を成功させればこの島の子供が健やかに生きれる·····そうなったら島の外に行く事が皆出来るようになる、子供達や僕達の当たり前を取り戻せる」
美叶やラファは愛瑠を見ながら微笑んでいる。
「やっぱ愛瑠は人知を超えてる、本当に天使みたいだよ」
ラファが愛瑠をヨシヨシと撫でながら言う。
「天使みたいじゃない!天使だ!」
「それより愛瑠、Sランク魔道士ってのも初耳何だけど?」
ガブリが首を傾げて言う。
「あーあ、僕日本1位の魔道士だから」
「ええ!!初耳!?」
全員が耳を疑った。
慌てた様子でウリやガブリが愛瑠に質問を投げかけるが愛瑠は困った顔をする。
「聖徳太子じゃないから!ちゃんと説明する!」
愛瑠は少し大きめの声で言う。
「魔道士協会の者に頼んで魔道士名簿から名前と情報を消してもらってるから皆知らないの、日本には僕以外にもう1人そーゆのが居る」
「愛瑠の他にもう1人?日本魔道士隠しすぎだろ?」
「実際は僕が1位、2位は竜介と言う20歳の魔道士、彼が情報を隠してる魔道士――」
ウリは目を細めた。
そして確認するかのように、
「竜介って·····去年この島で魔道士大会に参加した······日本代表の?ラースを追い詰めたとか言う·····」
「僕は彼の師匠·····歳は5つしか変わらないけど。日本は僕や竜介のような強い魔道士を隠して裏社会から反魔道士を裁いてる、勿論言っちゃダメだよ?」
愛瑠は「あっ」と声に出しながら美叶達に指を向けながら軽く口止めをした。
「じゃあさ、去年の大会で死んだ最強の魔道士って言われてたブレッドより愛瑠の方が強いんじゃない?」
「多分····けどあの人は運が無かった、ラースの初見殺し魔法に殺られた、初見じゃなくても磁力魔法を避けるのは難しい·····あの人の火なら視界を奪って勝つ事もできた·····だから僕はブレッドさんの死も無駄にしない」
美叶達は少し悲しそうな表情を見せる愛瑠の話を真剣に聞いた。
「絶対勝とうね」
ウリが愛瑠の方に手を置いて微笑んだ。
「魔道士の未来を守ろう」
ガブリも愛瑠のもう片方の肩に手を置いて微笑んだ。
「愛瑠が居れば勝てる、だって天使だから」
ラファが愛瑠の後ろから両肩をポンッと触りながら微笑んだ。
「皆····」
愛瑠は少し照れながら呟く。
「·····」
そんな中、ウリ、ラファ、ガブリが美叶を見ている。
何かを期待するかのような目で。
「·····美叶!愛瑠に抱き着いたら?そこしか席は空いてないよ?」
ニヤニヤしながら煽るようにウリが言った。
「ちょっ!ウリ!」
ガブリが困った顔をした。
だが美叶は、
「皆大好き、私を救ってくれた天使達·····」
愛瑠の胸に飛び込むように、4人全員を抱き締めるように4人に抱き着いた。
その表情は少し微笑んで見える。
「え、」
「本当に抱きついた」
「30のおじさんにこれはキツい····」
30歳のおじさん達が照れる。
「あ、1番キツいの僕·····美叶からのハグは初めてだよ····」
だが1番顔を赤くしていたのが愛瑠だった。
動けない状態でプルプルと体を震わせている。
(初めて·····家族以外の男を好きになれた)
美叶は愛瑠に体をくっ付けてそう思った。




