ご対面
美叶が愛瑠と出会って半年が経った。
季節は春の終わりになった時期。
「愛瑠見て!この美女を!」
ウリがそう言って見せたのは白いワンピースをと白い麦わら帽子を身に付けた桃色の髪をした美叶。
「私の髪色にこんな格好は似合いませんよ·····」
美叶は麦わら帽子を深く被り少し顔を赤くして恥ずかしそうにした。
愛瑠はそんな美叶を見たまま立ち止まっている。
「愛瑠?」
「まるで女神様·····そう思わされるほど美しい」
愛瑠はあまり表情を見せないで言った。
「天使様······ありがとう····ございます」
美叶は顔を隠すように後ろに体を向けた。
「あ!明後日!皆準備しといて!」
愛瑠は思い出したかのように言う。
周りにいたウリやガブリは、
「「分かった」」
と言ってに手元のコーヒーを飲む。
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七つの大罪アジト。
小さなお城の中には七つの大罪のメンバー全員居た。
昼間に全員居ることは七つの大罪にとって珍しい事だ。
「プライド!久しぶりに見たかも·····学生生活楽しいか?」
1階でスロウスとテレビゲームをしていたラストが1階に降りて来るプライドに声を掛けた。
「普通」
プライドはそう答えてラストの横に座りコントローラーを持ってゲームに参加した。
3人がしばらくゲームをしていると突然ラストとスロウスが自身の背後を殴り、蹴った。
「お客さんかな?」
「日本人?」
2人の背後には拳と蹴りを受け止める男が立っていた。
白いロングコート、白いシルクハット、白い靴――白ずくめの男が立っていた。
「どこから入って――」
ラストがそう呟きながら周りを見渡す。
すると2階から慌てた様子のラトニーが、
「その男から離れて!」
とラストとスロウスに向かって言った。
「離れろ?分かった!」
ラストのは掴まれてない方の左手を銃の形に似せて男に向けた。
「バーン!」
何も起こらない。
「え?」
「ラスト、魔法も魔力も出ない」
「まさか·····この人のおかげ?」
「そう、この人のせい」
スロウスは素早くポケットから手裏剣を出して男に投げる。
男はそれに気付き2人の手と足を離し、手裏剣を避けて1歩後ろに下がる。
「プライド何してるの!?」
「ゲーム」
そんな中プライドはいつも通りにゲームをしていた。
「一旦引くよ!」
たがスロウスがプライドを引っ張り走って2階に上がる。
「後ろ来てる!」
だが2階に向かって走るラストとスロウスを男は追いかける。
「ラトニー侵入者は?」
2階から慌てた様子でグリードとエンヴィーを連れたラースが来た。
「あの白ずくめの」
「分かった」
ラースは状況を把握すると2階から1階に居る白ずくめの男を手元に引き寄せた。
だがラトニーが何かに気づいたように、
「リーダー止めて!魔法を解除して!彼を近付けてはダメ!」
ラースは咄嗟に魔法を解除する。
宙に浮いて居た白ずくめの男は1階に自由落しそうになるが2階の手すりを掴んで逆立ちをしてラースを蹴り飛ばす。
更にグリードとエンヴィーに同時に触り1階に逃げるように落ちる。
「くっ····捕らえろ!」
ラースは起き上がりすぐに1階中央に降りた白ずくめの男を仲間と共に囲んだ。
「逃げ場無いぞ」
「あるよ」
白ずくめの男が深く被っていたシルクハットを取って言った。
すると玄関のドアを壊して堂々と3人の男が現れる。
「あー!動いちゃダメ!話を聞いてもらう······まず自己紹介、僕は愛瑠、天使さ」
天使と名乗る男――愛瑠はそう言って後ろに下がった。
「あれ?皆様不思議そうな顔してる?魔法が使えないから?」
愛瑠がそう言うとラスト、スロウス、グリード、ラトニーは同時に愛瑠を睨んだ。
「もちろん僕の仕業、僕の魔法は略奪魔法、触った者の魔法を奪う·····この魔法で今までたくさんの魔道士から力を貸してもらった、彼らは僕が七つの大罪を倒すと言ったら進んで魔法を授けてくれた」
愛瑠がニコニコしながら話す。
だがラースが愛瑠を睨み付けながら前に足を運ぶ。
「答えろ、死ぬか魔法を返す――」
手を前に突き出しながら歩くラース。
だが落ちていたボールペンを踏みつけて転けてしまう。
「――選べ」
ラースは何事も無かったかのように立ち上がり言う。
「略奪魔法は奪った者をいつでも殺せる·····念じるだけで、つまり君らの心臓は僕が持っているのも同然」
ラースは顔色を変える。
余裕があった表情は青ざめてしまう。
(殺せるってのは勿論嘘。かと言ってまだリーダーのラースの魔法は奪えてない·····それにあの気味の悪い子供、音も無く近寄った僕の攻撃を体勢を変えないで交わした····それにあの男·····触ったのに奪った感覚が無い····)
愛瑠はラース、プライド、エンヴィーを順番に見ながら思った。
そして考え込む。
「そこで提案がある!君達と僕達で勝負をしよう!」
「勝負?」
ラースはムシャクシャしながらも聞き、近くにあった椅子に座る。
「君達は1度天気の魔道士に逃げられたらしいね?」
「なぜ知ってる?」
「だからもう1度天気の魔道士を殺す、僕達と君達、どちらがユグドラシル内に居る天気の魔道士を先に殺せるか、勝負しよう」
愛瑠はラース達に睨まれる中ニコニコしたままシルクハットを被る。
ラース達はプライドを除いて皆愛瑠を逃すまいとしている。
だがラースが仲間の戦闘態勢を解くように軽く手を上げる。
「良いだろう、ただし天気の魔道士に加えて同じクラスの白髪の生徒も追加だ」
ラースがそう言うと愛瑠は目を細め困った顔をした。
「誰?写真を見せるか特徴を教えるかしてくれない?」
「写真は無い、特徴は白い髪に中性的·····美少····美幼女?とにかく目が眩むほど可愛い顔をしているから一瞬で分かる」
愛瑠は更に困った顔をした。
「幼女?学生でしょ?つまり幼い顔した可愛い子だね?うーん·····何を企んでる――」
愛瑠は考え込むが突然表情を変えてニコッと笑った。
「分かった、天気と白髪の魔道士を先に殺した方が勝ち、僕が勝ったら仲間は死んでリーダーである君を殺しに行く、君達が勝ったら魔法を返す·····良いかな?」
「良い」
即答したラースの方をラトニーとグリードが耳を疑ったかのように見た。
2人共何か言いたそうだが下を見て口を閉じる。
「じゃあ!試合開始だよ」
愛瑠はそう言って3人の男達と共に姿を消した。
「リーダー、私達が勝っても彼らが魔法を返す保証はありません、私が向こうの立場なら勝ち負け関係なくこちらを殺しますよ――」
愛瑠が去ったと同時にラトニーが少し慌てた様子で言った。
そして続けるように、
「それにあの場で不意打ちする方が確実でした」
「もう1人、窓から女が見ていた、きっと不意打ちやもしもの為·····奴らは4人じゃなく5人だ」
「何か作戦でもあるんですか?」
ラトニーが少し間を空けて聞く。
だがラースは黙り込む。
「魔法はリーダー以外皆略奪された?」
ピリピリした気まずい空気の中、ラストが惚けた顔で言った。
ラストの質問にラース以外がコクリと頷く。
「転移魔法も奪われた·····今回は俺1人でやる」
ラースはそう言って2階に上がり自分の部屋に入って行った。
「リーダー少し怖かった」
「確かに、階段踏み外さなかったし」
ラストとスロウスは心配そうにしている。
それは他のみんなも一緒だ。
ただ1人を除いて·····
「今回は天使じゃなく悪魔に力を貸そう、その方が面白い」
プライドは小さく呟きニヤッと笑った。




