天使の登場
日本、東京都。
ここにも魔道士が居る。
だが魔法が使えるだけで魔道士の仕事をしてる訳では無い。
「お疲れ様です」
黒く染めているのかは不明だが髪は黒髪、美人と言う言葉がピッタリの大人しそうな女性。
彼女がその魔道士だ。
名前は美叶、23歳。
「ただいま」
「姉さんおかえり」
美叶は2歳離れた弟と2人暮らし。
美叶はごく普通の会社員、弟は少し売れ始めた歌手。
「新作凄い売れたんだよ!」
弟がご飯の準備をしながら嬉しそうに言った。
「見たよ、凄いじゃん」
美叶もご飯の準備を手伝いながら言う。
「これも全部姉さんのおかげだよ」
「私はただお金を稼いでるだけ」
美叶は日本のどこにでもあるような弟の生活が幸せだった。
「社長、これどうしたら良いですか?」
翌日、美叶はいつも通り会社で働いていた。
目の前には少し小太りの社長が居る。
「あー、これ·····それ持って着いてきなさい」
社長は美叶をマジマジ見ながらどこかに向かう。
美叶も持っていた書類を持ちながら社長に着いて行く。
「あの机に置いてくれ」
美叶は社長室に美叶を連れて来た。
社長室の机に書類を置いた美叶は部屋を出て行こうとする。
だが社長は後ろから美叶の体に手を回しイヤらしく触ってきた。
「きゃっ!」
「あー、ごめんごめん」
美叶は社長を突き飛ばして1歩後ろに下がった。
「訴えますから、覚悟して下さい」
美叶が服をほろいながらそう言うと社長はニヤリと笑って、
「弟が死んでもいいのか?」
美叶は思わず振り返る。
「どういう意味?」
「私は君が魔道士って事知ってるよ、勿論弟も」
社長は手を後ろに組みゆっくりと部屋をうろつく。
「それが何ですか」
「七つの大罪に依頼すると、魔道士霊媒師限定で殺してくれる····」
「まさか!?」
「君が私の言う事を聞けば弟は死なない、勿論君も」
「そんな事法律が許さない、脅しに引っかかる程の女では無いので」
美叶がそう言ってドアノブに手をかけると社長は近付いてきて美叶に触れようとした。
「触るな」
だが美叶は社長に足を引っかけ転ばせる。
「法廷で会いましょう」
美叶は転んだ社長を置いて部屋を出て行った。
「すみません、急な用事で帰ります、社長には言っときました」
「·····分かったよ」
美叶は仕事の先輩に話を付けて会社を出て行った。
そして真っ先に家に向かう。
「ただいま!」
「····ただいま、どうしたの?今日は早すぎない?」
家には美叶の弟がギターを弄りながらソファーに座っていた。
「よかった」
「?」
美叶はホッとため息をついて膝を落とす。
安心の表情をしばらく浮かべた。
「····大事な話があるんだけど」
美叶は真剣な表情を浮かべた。
「何?」
「今日からしばらくお母さん達の元へ行って欲しいの」
「何で?」
弟は不思議そうにした。
だが少し困ったような表情を見せる美叶を見て、
「分かった、荷物まとめるよ」
「ありがとう!」
美叶は理由を聞かないでくれた弟に感謝した。
「けど早めに帰らせろよ?」
「すぐに会えるよ」
その日弟は車で少し離れた実家に帰った。
「社長、訴えました、警察が貴方の元へ来るのも時間の問題です」
翌日。
美叶は会社内で社長に言った。
仕事仲間が居る中堂々と。
「何の事かな?」
「とぼけないでください、このスーツに指紋は取れてます」
とぼける社長に美叶は強気に言った。
だが周りの空気が何かおかしい。
皆が美叶の方を見て睨んでいるような気がしてならない。
「警察·····君の実家にも警察が来る頃かな?親は霊媒師だろ?」
強気な社長、周りの目、美叶は悟った。
「まさか、皆、七つの大罪の賛同者·····この会社全体····嘘·····」
美叶は1歩2歩と後ずさりをしながら怯えた。
社長はそんな美叶に近寄って来て、
「美叶君も死にたくないだろ?私の言う通りにしれば生かすけど?」
壁に手を置いて美叶を逃がすまいとする。
そしてイヤらしい手を美叶の背中まで持ってくる。
「止めて!」
だが美叶は社長を殴って会社を飛び出す。
急いで自分の車に乗る。
「嘘·····人が死んでまで七つの大罪に賛同するなんて······それも全員が·····え?な、何····あ!家族が····」
美叶はパニックになった。
息が荒く、呼吸が一定では無い。
それでも車を走らせた。
「はぁはぁはぁ」
40分くらい車を走らせた。
美叶は車を降りて目の前にある家に向かう。
美叶の実家、親が住んでいる、そして昨日から弟も住んでいる。
「お母さん、お父さん·····」
ゆっくりと物音を立てないように家のドアを開ける。
そしてリビングルームを覗く。
「!?」
漏れそうになった声を抑えるように口を手で塞いだ。
美叶が見たものは地獄そのもの――母親と父親が血塗れになって死んでおり弟が1人の男にナイフで刺されている。
男の横にはもう1人知らない女性が居る。
「リーダー、まだ1人家族が居ますけど?」
「それは別の場所に暮らしてる奴だ、情報によればこいつもそうだったが···」
美叶は(私の事だ)と思いながらも息を殺し、涙を流しながら車を置いて街中を走った。
突然、世界が180°変わった。
体の疲れが麻痺したかのように何十分も全力で走った。
そしてふと周りを見る。
周りの人間が自分を嘲笑ってるようにしか見えない。
全ての人間が敵に見える。
「家に帰れない·····ホテル」
美叶は近くにあったホテルを見て呟いた。
お暇えながらもホテルに泊まることにした。
その時日本の時間は19時だった。
会社を出た時は昼だった、美叶は知らず知らずの内に時間を潰していた。
「部屋···は!」
美叶は自分の部屋に入ってすぐに鍵をかけてカーテンを閉めた。
そして風呂場やベットの下を恐る恐る見回る。
「はぁはぁ·····皆死んだ·····会社の人達は皆魔道士や霊媒師が死んでもいいと思う人達だった·····きゃ!」
ベットの中に潜り込み汗をかきながら怯える。
廊下のちょっとした物音も怖かった。
しばらくするとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「だ·····れ····」
「すみません!ドアを開けてくれませんか!」
一見優しい声、だが美叶にとっては恐怖でしかない。
「七つの大罪····私を殺しに来たんだ·····死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
美叶が怯える中、ノック音も人の声も消えた。
美叶はドアの前を確認する為布団の中から出る。
「話を聞いてくれない?」
布団から出るとベットの前に1人の男が立っていた。
綺麗な海のような髪色――水色の髪に白いロングコート、白いシルクハットに白い靴、顔立ちは日本人。
「きゃ!!」
美叶は思わず声を上げてベットの上で座りながら後ずさりをした。
「ごめん驚かせるつも――」
「死にたくない!やだよヤダよ!」
美叶は男の話を聞かずにベットから降りて窓の方に逃げる。
だが美叶が居た部屋の階が10階だった為窓を割って逃げる事は出来なかった。
「来ないで来ないで来ないで!!!」
美叶が腰を抜かし怯えて叫ぶと男は両手を上げて困った顔をしながら、
「分かった!そっちに行かない、話を聞いてほしい」
だが美叶は男の言葉が耳に入っていない。
ガクガクと足を震わせながらベットに上がり男を殴ろうとする。
だが男が避けた事でベットの上で転けてしまう。
「あの僕は――」
「殺さないで·····もう嫌だよぉぉぉ·····」
男は美叶に近く。
美叶は更に大きな恐怖に襲われる。
「死にたくない、もういやーー!!!」
美叶が泣きながらそう叫ぶと男はベットに座り込んで美叶を抱き寄せた。
「よしよし、頑張った頑張った、もう僕が居るから、僕を信じてくれ」
男は美叶を撫でながら言う。
『信じてくれ』初対面でそんな言葉信じられる訳ない。
だが美叶は安心していた。
(社長や周りの男が私を見る目じゃない····社長は私を後ろから自分の物にしようとした、だけどこの人は前から私の苦しみを受け止めようとしてくれた)
美叶の涙は止まらなかった。
名前も知らない男に抱きつきながら声を上げて泣いた。
「僕はね、魔道士達を苦しめている七つの大罪を倒そうと思っているんだ、君の家族を苦しめた七つの大罪を」
美叶が落ち着いたのを見計らうように男が優しい声で言った。
「それを君にも手伝ってほしい」
「もちろん····手伝わせて下さい······あの、名前は?」
美叶は男を抱き締めたまま涙を拭う。
「僕は愛瑠、悪魔を倒す天使さ」
男――愛瑠は少し微笑んだ。
少し長くなりましが章の最初なので大目に見てください
m(_ _)m




