ドラゴンの登場
(昔のお前の目には執念や信念のような物が秘められていて怖かった、その目で睨まれた俺は今までで1番殺気を感じ恐怖した。だが今のお前は全く怖くない、アマノの目になってからだ――)
ルーナは傘から抜いた刀を持ち、妙な紋章が書かれた目隠しを付けた僕を見て思った。
(恐れる存在なはずなのに逆に安心してしまう。そして気づいた、怖くないお前が1番怖い――)
ルーナは僕の刀により胴体を真っ二つに斬られる。
(俺はお前の全てを理解しているがお前をクリアできない――)
真っ二つになった体は床に落ちる。
傷口からは血は出ていない。
(ただし今だけ、俺が諦める事は無い)
僕はルーナの視界から外れるように飛び魔法陣を出す。
「神器ワイヤー!」
魔法陣から神器ワイヤーを出しルーナの真っ二つになっている体をワイヤーで縛る。
更に魔力を具現化した物でワイヤーの上から拘束する。
「僕の神器傘で命を断つ事はできないようになっている。痛みはあるけど死にはしない」
僕はルーナの首を手刀で叩きルーナを気絶させる。
「戻ったら絶対治すよ。いくよポム」
僕の髪の毛の中に居た白い毛並みの小さな小さな犬のような生き物――ポムを髪から下ろす。
「建物は透かしてね」
ポムは一気にジンベイザメ並の大きさになる。
だが体は壁や床を透かして居る。
ポムは体が大きいだけじゃなく姿形も変わっている。
鋭い爪に尖った歯、大きく真っ白な羽根と尻尾、まるで童話などに出てくるドラゴンだ。
僕はこの状態のポムを『ポムラゴン』と呼んでいる。
「1分で第5訓練所に向かって、命の危機を感じる。頼んだよ」
僕がそう言ってポムラゴンを撫でるとポムラゴンは僕を乗っけて飛び立った。
「お前の人生は楽しいな、見てるだけの俺も楽しい」
気絶したはずのルーナは拘束された状態でニヤッと笑う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユグドラ学園第5訓練所。
空中には血だらけで身動きの取れないラースが居る。
イアンはそんなラースの真下から背中に向かって飛び上がる。
「俺の死角に!?これでは磁力が発動できない」
ラースは仰向けになって居た為イアンが見えなかった。
「急げ急げ――」
ラースはどんどん上空に上がるがイアンが飛んで来る音が近くでしていた。
「取れない、魔力が上手く込めれない、ヤバい!?」
イアンがラースを手刀で貫こうとする。
だがその時、
「殺しちゃダメだ!!」
その声の方向からはポムラゴンに乗った小さな白髪の少年――僕が居た。
ラースもイアンも思わず僕の方を見る。
「ちっ、仕方ない」
イアンの手は手刀から柔らかい平手に変わりラースを真上から叩き付ける。
ラースの体は地に向かって落ちかけるが地面と反発して上に上がる。
「まだだ!」
空中に落ちかけるイアンはラースの体にしがみつく。
「今行く!」
僕がイアンの元へ行こうとするとラースの真上に妙な空間が現れる。
その空間からはひょこりと、
「····彼を突き放し下さい、そしたら転移します」
ラトニーが現れる。
ラースは安心したような表情をしてゆっくりと苦しそうにイアンを見る。
ラースの体にしがみついていたイアンはラースの服を破って地に落ちる。
「逃げられる!」
「転移」
妙な空間――転移空間はラースの体を飲み込んでラトニーと共に消える。
「ジャック、白髪·····ジャック様、なぜここに?それになぜ奴を生かす?」
イアンは起き上がりポムラゴンと共に来た僕に聞いた。
僕はポムラゴンから降り、ポムラゴンは小さなポムに戻る。
「別に呼び方は気にしなくて良いよ·····後、ごめんなさい、僕のせいで逃がした」
「別に気にしない·····優先する順序があるからな」
「ありがとう。救える命は全て救いたい、だから止めた·····正しい判断かは分からないけど、今心から信じれる選択だった」
まじまじと僕を見るイアンはため息を付いた。
「奴を逃がしたらもっと多くの命が失われる、ジャック様だって分かってるだろ?犠牲を出さなければ更に多くの犠牲が出る、見えない所で」
「·····分かってるよ、だからラースの手を斬ったんだよ」
僕は切り取られた人の手を見せる。
血がぽたぽた垂れ、今切り取られたばかりの手だ。
「な?いつの間に!?ジャック様はまだ遠くに居たはず!?」
「彼は手から磁力を発動させる、他の体の場所からは発動させれないと見た、だから魔法を使えない」
「本当に神って感じだな·····それはともかくジャック様は今からどうするんだ?」
「第3訓練所、サントスが危ない」
「俺も行く」
「分かった」
僕はイアンに触れる。
イアンは観察しているような目で僕を見ながら、
(俺ら囚人がここに居る事を当たり前のように接している、それに1度聞いた名前や初めて見た状況も知っていたかのように把握している。まさに神·····それだけじゃなく自分の正義も貫く、あまり認めたくないがこういう人について行きたい、本当に尊敬できる)
僕はイアンと共に移動魔法で第3訓練所にテレポートする。
「治癒魔法」
第3訓練所では戦った形跡があった。
だが居るのは座り込むように気絶した血だらけのサントスだけだった。
「そんな魔法も·····」
僕は血だらけのサントスを治癒魔法で治療する。
傷はみるみると治り、失った血液も取り戻した。
「良し、まだ目が覚めないのを見ると疲れて眠ったらしい。七つの大罪が現れた街中に行くよ」
僕はまた移動魔法でサントスとイアンを連れてテレポートする。
街中に行くと10人のニコラスが気絶して倒れているコルビンとシーマスを守りながらエンヴィーとラトニーと戦っていた。
「王の手を戻すには再生の魔道士が必要·····さっさと失せろ無神論者のガキ!!」
「俺は無神論者じゃない」
ニコラスはボロボロになりながらも立っていた。
不思議な機械の体と闇魔法を使いながら戦うエンヴィーに苦戦していた。
「エンヴィー、白髪来たから逃げるの優先」
僕が来たのを見たラトニーは少し慌てた様子でエンヴィーの肩を優しく叩く。
「ラース達が居ないのは先に転移で逃がしたからだね」
「ジャック様、あの機械の体····妙だ、まるで生きてるように動いてる」
僕は姿を消すように素早く動きエンヴィーを魔力の波動で吹き飛ばす。
「まだスロウスも居る····不味いわ、プライドを倒してここまで来るのは考えてなかった」
ラトニーは焦りながらも吹き飛んだエンヴィーの元へ転移してエンヴィーの体をどこかに転移させる。
そしてラトニー自身も転移空間に入り消える。
「スロウス·····そう言えば見てない、奴の所に転移したんじゃ?」
イアンが勘づいた様子で呟く。
「嫌、転移魔法はラトニー自身が行った事ある場所、あるいは見た事ある場所に行く魔法。スロウスは今学園····学園に入ってないラトニーは行けない。僕が考えるには待ち合わせしてたんだと思う」
僕がそう言うとイアンは納得と関心をしたような表情をする。
同時にニコラスが9人消え、残った1人が膝を落とし安心したように倒れ込む。
「取り敢えず3人を治療する」
僕は治癒魔法で気絶しているコルビンとシーマス、傷だらけのニコラスを治療する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「学園が見える場所に転移するから貴方はスロウスを見つけて私の元へ戻って」
ラトニーとエンヴィーが話している場所ではラースとグリードとラストが倒れている。
「早く!スロウスも王も心配だ」
エンヴィーは落ち着かない様子で上着を着る。
「転移」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数十分前。
七つの大罪とイアン達が戦い初めていた頃――僕とルーナが戦い初めていた頃まで時は戻る。
ユグドラ学園高等部3年B組の教室ではアーサーとスロウスが戦っていた。
乱雑した机と椅子、血を吐いて倒れたキースとエリザの2人の死体、床に落ちている小、中の2つの手裏剣。
そんな状況の教室で大きな手裏剣を持ったスロウスが少し虚しい表情をしている。
「来い」
電気も日もない教室、少し薄暗い中緊迫した空気が過ぎる。
「気の毒な少年、君も僕も、普通の幸せとは程遠い」
スロウスはアーサーに向かって大きな手裏剣を投げる。




