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愛を知らない神様  作者: ビター
スロウス編
41/113

気の毒

 

  ユグドラ学園高等部、霊媒師科3年B組。

  目にクマがある紫色の髪の少年――ロスはキースとお弁当を食べていた。

  そこにエリザがお弁当を手に持って近寄って来た。


  「一緒に良い?」


  ロスとキースは同じタイミングでエリザを見る。

  ほんの少しだけ間を空けてキースは、


  「友達居ないのか?」

  「居るわよ!!」

  「じゃあ何で俺達と食べようとする?」


  直球に言うキースに少し苛立った様子でエリザはムッとしている。

  そして軽く表情を直し、


  「友達になりたいからに決まってる」


  目を逸らしながら言う。

  だがキースは鼻で笑ったように、


  「男女に友情は存在しないらしいぞ、存在しても何れは恋に変わるって本で見た」

  「何よ!別に良いじゃない!」


  照れながら怒るエリザを見てロスは、


  「一緒に食べよ。恋をするには同じ時間を共にするべきだよ」

  「だから私は恋をしたい訳じゃない!」


  と言いながらもエリザはムッとしてロスとキースの近くに座った。

  そしてお弁当を丁寧に開ける。


  「もしかして俺達をからかってるな?」


  キースが謎が解けたようにそう言うとエリザは「は?」と声を出して困惑する。


  「俺らを面白がってるんだろ!うぶな俺達にその気にさせるだけさせといて最後には裏切る気だ!18歳と言う歳で女と縁がない俺とロスを弄ぶ気だ!」

  「「······」」


  1人で困惑しているキースに呆れたかのようにロスとエリザも固まってしまい困惑する。

  だがロスはすぐにキースの言葉の意味に気付いたように、


  「これが····ハニートラップ」


  エリザを遠ざけるような目で見る。

 

  「ちがぁぁう!変な妄想しないで!」

  「俺達は悪くないね!思春期男子と関わるってのはこういう事だ!分かったか!」

 

  キースが開き直るようにそう言うとエリザは汚物を見る目をしながら引いてしまう。

  だがニコッと笑いながらロスが、


  「ここに来る前キースは男子校だったからね、仕方ないよ」

 

  キースを庇うように言う。


  「····なら勘違いされる言い方しないで。ロスはそんな事関係なく私を1人の友達として見てるでしょ?」

  「ん?どんな事関係なく?」

  「異性として·····」


  エリザは少し顔を赤くしながら髪を小さく弄る。

  だがロスはキョトンとしたまま、


  「見てるよ、女性として見てる」

  「「え?」」


  エリザもキースも思わなかった返答に表情を変えた。


  「え?逆に友達として見れないよ。ゲームだったら女性=ヒロインだもん、それに美人なら尚更期待しちゃうよ」


  ロスがそう言うと完全に2人が固まる。

  だがキースが唇を震わせながらヘラヘラと笑い、


  「恥ずかしくないのか?俺も正直な方だがお前は正直ってより·····さらけ出しすぎだろ」

  「それは違う、他人を恥ずかしい奴と思う方が恥ずかしい、その人の自由じゃない?」

  「いや、そう言う事じゃなくて――やっぱお前抜けてるよ、エリザもそう思うだろ?」


  そう言ってキースがエリザを見る。

  だがエリザは少し下を向き顔を赤くしながら嬉しそうな恥ずかしそうな表情をしていた。

  思わずキースも話しかけるのを止めてしまう。


  「ともかく他の奴の前では言葉を選べよ?お前が美男子じゃなかったらただのヤバイ奴だからな?」

  「美男子でもヤバイ人はヤバイよ?」

  「やっぱ変な奴」


  そんな時間を毎日過ごす内にロス、キース、エリザの3人は何だかんだ仲良くなっていた。

  6ヶ月が経った頃には何でも話せる友達だった。


  「私達何だかんだでもうすぐ卒業だね」


  学園の中にある休憩場のような場所で小さなテーブルを囲んで3人は話していた。


  「まだまだだろ」

  「皆は島を出る?それとも島に残る?」


  エリザが問うとロスとキースは考え込む。

  だが2人の答えが長引きそうだと思ったエリザは、


  「私は·····島を出て大学に行くかな、死んだお兄ちゃんの墓参りも久しぶりにしないと行けないし」

  「あー、大学か·····それもアリだな。なんも考えてなかったけど俺も大学行こうかなー····ロスはどうするんだ?」


  エリザとキースは同時にロスを答えを待つように見る。

  それに気付いてロスは下を向き、考え込んだように、


  「多分·····卒業出来ないと思う」


  時が止まったようにシーンとなる。

  だがキースが「ぷッ!」と笑いながら、


  「安心しろ!俺とエリザが勉強教えてやるからよ!意外と気にしてたんだな?頭悪い事」

  「――ははっ、ありがとうキース、努力はするよ」


  2人が笑いながら話す中、エリザは黙って2人を見ているだけだった。


  その日の放課後。

  外は日が落ちかけていて、少し寒そうな気温だ。


  「エリザ?エリザも居残り?」

 

  ロスが教室に入るとエリザが電気も付けずに窓の外を眺めていた。

  そしてロスをゆっくりと見て、


  「ロスって何で小学と中学行ってないの?」


  ロスは背中が凍りついた。

 

  (小学と中学に行ってない事はエリザに言ってないのに)


  不思議に思いながらニコッと笑い手を後ろに組み、


  「知ってて黙ってくれたんだね?ありがとう。理由はお金が無かったから」


  それを聞いたエリザは体をロスの方に向けて、


  「ロスは隠してる、眩しい笑顔で真実を隠してる。友達の事だから良く分かる·····できるなら話して欲しい」


  ロスは下を向き考えるがゆっくりと首を横に振る。

  理由は分からないがエリザはそんなロスが悲しい見えた。

  そしてエリザは静かに、


  「私のお兄ちゃんは反魔道士に殺された――」


  自分の事について話し出す。


  「お兄ちゃんを殺したのはあの有名な七つの大罪――」


  ロスは一瞬ゾクッとして後ろめたい気持ちになる。


  「その中でも殺した張本人はスロウスと言う毒魔法を使う少年だったらしいわ、死因が毒だったから間違いないわ」


  更にロスの後ろめたさは加速する。

  冷や汗までかき始め、体が徐々に震える。


  「もちろん復讐なんて考えなかった、魔法も使えない霊媒師がSランクの魔道士に勝てるはずは無いし、何より自分を苦しめるだけ。けど叶う事なら死んで欲しいと思っている、七つの大罪もスロウスも」


  ゆっくりと椅子からたちが上がった。

  エリザはそのままロスに近付き、ゼロ距離に近い近さまで足を運ぶ。


  「そんな私だから分かる――」


  エリザの顔がロスの顔と近い。

  後ろめたさなのか異性が近くに居るからか分からないがギクッと怯えながら心臓がバクバクして、胸がドキドキしている。

  ロスは今までで1番冷や汗をかいた。


  「貴方は悲しさを隠してる、別に言わなくても良いけど1人で苦しまないで」

  「な、何でそこまで僕を心配、する····の?」


  思わず口を開いてしまった。

  ロス自身も無意識だった。


  「決まってる、貴方に恋してるから····1人の人としてね」


  エリザはそう言って軽くロスに抱き着く。

  ロスは初めて思考が停止する感覚を味わい、自身の意思に逆らい、身動きを取らなかった。


  「え、エリザ」

  「あ!ご、ごめん、1人で舞い上がって····」

 

  手を離し一歩後ろに下がる。

  ロスはその時体の自由を取り戻す。

  だが心は自由とは程遠い。


  (このゲームは思った以上のバットエンドだ·····エリザ、君が恋したのは、君の嫌いなスロウスだよ)

 

  ロスは慌てて教室を出て涙を流しながら、


  「気の毒だ」


  と呟く。

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