イアンと神様
アメリカ合衆国、ボストン市。
とある家には赤髪のボロボロの少年を囲むようにたくさんの子供と1人の女性が居る。
ガリガリでボロボロの少年の前には暖かそうなスープが置いてある。
「早く食べないと冷めちゃうよ!」
「お兄ちゃん食べ方知らないの?」
周りの子供が少年を急かす。
そんな中1人の女性が丁寧に座り込んでスプーンを取り、スープを掬い少年の前に持ってくる。
「口を開けて」
少年はカサカサの口を小さく開け、スープを口にする。
少年はスープを飲み込み、目を見開き、急いで頬張るように手でスープを掬い口にスープを含める。
スープを口にした瞬間、空腹に気づいたのだ。
「貴方名前は?」
「分からない····名前、知らない」
少年は自分の名前が分からなかった。
だが女性は少年の首に掛かっていた薄汚いネックレスのような物を見て文字が書いてあるのに気付く。
「汚れて良く見えないけど···イアン?かな、名前イアンで良いかな?」
「名前より食べ物が欲しい」
「ふふっ今持ってくるわ、私はマザーと呼んで、今日から貴方はここで暮らすのよ」
女性はマザーと名乗った。
この家の主であり、子供達の母親的存在だ。
その日から少年――俺はイアンと呼ばれ幸せな日々を過ごした。
「イアン兄ちゃんお腹空いた!」
俺はこの家の子供達の中で1番年上だった。
だがら皆は兄ちゃんや兄さんと呼んだ。
「イアン、マザー遅いね」
だがニコラスと言う1番歳の近い少年だけは呼び捨てだった。
俺が少年から青年になった頃に気付いたのはこの家が孤児院である事。
だがこの孤児院は借金を背負っていた。
そんな事を知らずに俺は孤児院を出て行き社会に出た。
「久しぶりに皆に会いに行こうかな」
社会に出て働いていた俺は当時20歳。
そしてマザーや皆が居る家に行くと家は売家になっていた。
「え?もしかして新しい場所に引っ越した?」
俺は気になり俺が出て行った後の孤児院を調べマザーや皆の居場所を調べた。
分かった事は2つ。
子供達は奴隷として売られ、マザーは病気になり寝たきり状態。
「マザー!」
俺は急いでマザーが居る場所に行く。
その場所はボストン市の街中·····マザーは痩せ細り昔の俺のように倒れていた。
一瞬で悟った。
お金が無いだけではなく借金もある為入院できなかったのだ。
「ごめんなさい·····俺が気付いてれば」
俺はすぐにマザーを入院させた。
そしてまだ売られてなかった子供達を探し買い取った。
その子供がニコラス、サントス、シーマス、コルビンの4人だった。
「マザー····俺、働いて治療費稼ぐから」
後はマザーの病気を治すだけ。
そう思って毎日仕事して病院に通ってを続けた。
けど実際は、
「話は本当だったか····」
俺が病院でマザーと共に居ると2人の黒スーツを着た男が現れる。
「何ですか貴方達は?」
「実はまだそちらの女性には借金がありましてね」
「まだ?いくらだ?」
まだマザーは借金を返していなかった。
子供達が奴隷にされて尚、マザーが力尽きて尚、返しきれてなかった。
「10億です」
「嘘をつくな」
「いいえ、本当です、利息って知ってます?借金をしてるのは貴方が孤児院に来てからずっとですよ?」
「まさか!?····てめぇふざけんな!勝手に子供達を奴隷にしてマザーを追い詰めて!まだ金を欲しがるか!」
「悪いのは返せない金を借りたそちらの女性です」
胸糞悪い····一瞬絶望を味わった。
だが俺は諦めていなかった。
「仕事を続けても返せはしない····なら」
そこで選んだ道――職が殺し屋だ。
俺には不思議な力があったし、自身はあった。
そんな俺に賛同したニコラス達も一瞬に殺し屋をした。
軽く1000は殺しただろ·····そんなに殺せたのは魔法と呼ばれる不思議な力のおかげだ。
「このままいけば6年後には借金を返し終わり治療費も払える」
だがマザーは後一ヶ月もしない内に死ぬことが分かった。
医師がそれを告げた時俺はまた絶望した。
だけど神は俺を見捨てては無かった。
「イアン見て!これ見て!」
ニコラスが見せてきたのはネットの裏サイト。
内容は魔道士の臓器1つ1000万。
だから俺達は魔道士の子供が集められるユグドラシルを狙った。
だが相手が神だったとはな·····こんだけ殺して殺して殺して全て捨ててきたのに、たった1人の女性も救えないとは情けない。
俺にはもう、何も無くなった。
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アメリカ合衆国。
大きな病院の病棟には1人の女性がベッドの上で窓の方を眺めている。
「····貴方いつから居たの?」
女性はふと正面を向き、目の前に居た少女に気付く。
綺麗な肌と顔、そして綺麗な瞳をしており白髪の中性的な少女だ。
「迎えに来ました」
「まさか死神?」
「正解です」
少女はニコッと笑い死神だと名乗ったが、
「今のはアメリカンジョークです、確かに死神の仕事もしてますが····」
「ふふっ、じゃあ何者なのかな?」
女性は少女を見てお芝居に付き合うかのように聞く。
「アマノ様」
少女がそう言うと少女の髪の毛は背中を隠すまで伸び、身長が高くなり体も少女と言うより女性に近くなる。
歳は17、18、いや――20歳くらいだ。
中性的な顔立ちは完全に女性の顔になる。
「魔道士?····それとも神様かな?」
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ユグドラシル内、ユグドラ魔道士専用刑務所。
刑務所のような場所でイアン――俺は捕まっていた。
毎日死んだと同様の状態で生きなくてはならない····はずだった。
数日経ったある日手紙が届いた。
刑務所に手紙って本当に届くんだな。
(ダルい····けど暇だし読むか)
俺は手紙を開き中身を見る。
最初は無感情に無表情に読んでいた·····だが自然と涙と喜びが込み上げてきた。
手紙の中身は、
「イアンへ。貴方が殺し屋だった事、捕まった事、全て聞きました。今貴方は私を救えずガックリしてると思います、ですが神様は貴方を見捨てては無かったようですよ。私の元に白髪の神様が現れて私の借金を全て返し、病気も治してくれました。これは貴方の気持ちが神様に伝わった証拠、本当にありがとう。貴方達が帰ってくるまであの家で待ってます。マザーより」
と書いてあった。
「白髪····あいつ――ジャック様····人殺しでも救うなんて·····神様失格だろ」
俺は手紙を涙でくしゃくしゃにしながら泣いた。
我慢していた物が全て溢れ出た気がした。




