2人の女性の謎
僕とルーナとイアン以外は皆退場した。
ニコラスの分身もアリスの植物人形も一緒に退場した。
人数だけ見たらイアンは不利だ。
だが能力値が全然違う····元々僕らは4人、イアンチームは5人、能力値の数はバラバラだが約1人分の能力値差がある。
僕とルーナの能力値を足してもイアンの能力値には勝てない。
普通に考えてみれば今の僕らではイアンのボールは取れない。
「油断するな、あらゆる想定をして自分を信じきらず、かと言って疑わず、確定した物事に対処して·····後は考えろ、マザーの事を、考えただけで勇気が湧いてくる」
イアンは精神統一をしてるように見えた。
小さな声で自分に言い聞かせるように、目を瞑り、優しい笑顔を見せる。
そしてボールを真っ直ぐと投げる。
「ルーナ避けて!」
僕もルーナもボールをよく見て避ける。
素早さ6であるルーナはよく分かってる、足を使ってのスピードでは避けれない事を。
だから体の体勢を変える事によってボールを避けた。
「え?」
ボールは僕らの背後に行き外野に行くとテレポートしてイアンが居る内野に上から落ちてきた。
「どういう事?」
「説明します、外野に人が居ないためボールは外野に行くとその外野のチームの内野にテレポートするようになってます」
と僕の疑問に審判が答えてくれた。
「じゃあ僕らはあのボールを受け止めないと永遠に取れないって事!?この能力値の差でどうしたらいい····」
僕は目を瞑り考え込む。
イアンのボールを受け止めないと僕らにボールは回ってこない。
イアンがミスをする人間には見えないしルーナのスレッドも警戒されている。
けど諦める事はできない····アマノの目と意思を引き継いだ日から僕は、アマノに胸張って生きる事を決めた。
今見てる状況が絶望と言うのだろうが····アマノの目で絶望なんて見たくない、見せたくない。
「取り敢えず避けきろう」
「だな」
イアンは次々とボールを投げる。
イアンもルーナも僕も動きを止めない為、徐々に体力ゲージが減っていきゼロに近づく。
――イアンが狙ってるのは体力ゲージ切れか!?
「体力は2倍以上差がある、このまま行けば僕らが先にバテるよ」
「ジャック、光魔法で奴の視界を妨いで時間を稼げ」
「?わかった」
どうやらルーナには作戦があるらしい、ここはルーナを信じて光魔法を放つしかない。
「ライト.ファロン!」
光を放つとイアンは目を瞑る。
だが目を閉じながらもボールを投げる事は止めない。
「命中率は下がった、今なら行ける····召喚魔法」
ルーナは目を瞑りながら床に手を当てて魔法陣を出す。
魔法陣からは2人の女性が現れる。
「ケッケ、まさか君達に頼る羽目になるとは」
光が無くなりイアンもルーナも視界を取り戻す。
するとルーナを軽く抱きしめるように2人の女性が無表情で宙に浮いている。
(なんだアレは?1人は羽根と輪が付いた女····天使のコスプレか?)
イアンは動揺しつつも投げるのを止めない。
普通なら手を止めて興味を示すのが自然、やはりイアンの精神力は常人を超えている。
「おっと、危なかったな」
「る、ルーナ····君、それは何なんだ?本物?だとしたらどこで手に入れた?やっぱり君は――」
僕には信じ難い状況だ。
ルーナの近くに居る2人の女性、その1人·····黒髪の美天使、天使の輪に羽根が付いてる、彼女は僕が良く知る天使――サタンだ。
サタンはルーナ――プライドが普段顔、首、腰に付けている手の持ち主、サタンが死んだ時死体を回収したのはクルーニャと言う神だった·····なのになぜ?
「君やっぱりクルーニャなのか?」
「どうでもいいだろ、それより」
「え?ええ?」
ルーナが僕を軽く足らうと女性の1人――サタンが僕の体を魔力を出しながら覆うように抱きしめ飛んでくるボールの前に出る。
良く見れたらもう1人の女性がルーナの後ろに居てルーナは1番前居る。
前からルーナ、謎の女性、僕、サタンと並ぶように前に居る者を支えながら並んでいる。
「取るぞジャック!」
いきなりの状況をすぐに受け入れ魔力を足に集めボールの衝撃に備える。
ルーナは飛んできたボールを受け止めるがまたもや回転がかかっている。
回転は僕達4人を後方に押し出すように止まらない。
「飛ぶぞ」
「え?」
ボールの衝撃で僕らはバラバラに吹き飛んで行く。
ルーナだけはボールを受け止めた状態で内野に留まっているが僕は外野に吹き飛ばされそうだ。
「やばい!」
「スレッド」
だがルーナのスレッドが僕を引っ張り内野に戻す。
「取っただと?だが取られたぐらいで屈指はしない」
イアンは驚きつつもボールを警戒する。
「助かった····じゃなくてなんで君がサタンを――」
今一度よく見るとサタンは死体だ。
神や天使の死体は腐りはしない、だから死んで尚生きているように見える。
そしてもう1人の女性も死体だが生きているように見える。
天使の羽根や輪が無いのを見ると女性の神――女神だろう。
薄紫色の美しい髪を持ち、見えている肌が傷だらけ····それでも綺麗な顔を持ち、眠ったような表情をしている。
「何で?この2人は俺に愛を教えてくれた愛しい、愛しい2人だ、サタンと·····ルナ」
ルーナはそう言って手から魔法陣を出し、魔法陣から女性の手を6つ出す。
そして6つの手を2つずつ目元、首、腰に身に付ける。
ルーナ――プライドはサタンと謎の女性――ルナに抱きしめられながらどこか澄んだ表情をする。
「ルナって·····確信に変わったよ君がクルーニャだと言う事に、まさか自分から『俺はクルーニャです』と言うなんて」
「誰がクルーニャだと言った?」
「言ってないけど言ったと同じだ」
ルナ――彼女はクルーニャの友達だった女性。
だがルナはクルーニャが17歳の時に陵辱された事により自殺をしてしまう。
クルーニャ自ら彼女について話してくれたが本人を見たのは初めてだ。
サタンとルナ、両方を知る者·····それはクルーニャしか居ない。
ルーナがクルーニャだとしてもクルーニャは僕の手で地獄の門を開き地獄に落としたはず。
地獄から出るのは不可能に近い。
もしルーナがクルーニャだとしたら今考えれる可能性は4つ。
可能性1、ルーナはクルーニャの知り合い。
可能性2、ルーナの体にクルーニャと体の持ち主本人の精神が2つある。
可能性3、ルーナの体にクルーニャの精神が宿っている。
可能性4、クルーニャは複数の精神や体を持っている。
気になりはするがクルーニャ本人である可能性はかなり高い。
それに死体なのに、なぜ動いてるのかも気になる·····だけど今考えるのはキリがない、イアンを倒す事に集中しなければ。
「呼吸も整った」
プライドは顔、首、腰に身に付けた手を取り外し魔法陣の中に戻す。
プライド――ルーナはニヤリと笑い、
「ジャック、ボールには雷魔法を纏わせた、素早さも攻撃力もお前が上、頼んだ」
ボールを僕に渡してくる。
ボールに光魔法付き魔力を纏わせ、イアンに向けて投げる。
雷と光のダブルスピード付きボール。
ハッキリ言ってさっきのイアンのボールより早く回転も強い。
光並に早いボールを見切る事はもちろん、受け止め切るのは不可能·····に近い。
「身体強化魔法」
だがイアンの魔力が膨れ上がり肌の色が限りなく赤に近くなる。
見た目もかなり変わり明らかに魔法を使っている。
そしてボールを見切り、受け止めた。
「あれが奴の魔法····身体強化魔法、名前通りだな」
「ボールを見切れたのを見ると目の能力、動体視力も上がっているらしいね、ボールが重いのはその応用?」
イアンの魔法属性は身体強化。
身体能力を強化するシンプルな魔法、シンプル故強い。
「常に魔力を使うから使うのを避けていたが·····まぁラスト2人だし良いだろう――」
イアンはボールに魔力を纏わせる。
魔法の影響なのか魔力が赤い。
「受け止めるのは疎か、生きている事もできないだろう·····悪いとは思うが謝りはしない――」
体の赤は更に増し、目や爪も真っ赤になる。
体には赤色の魔力が纏われ肘や膝が尖り、額は魔力が具現化した赤い布が巻かれる。
「俺は正義のヒーローでは無いし誰かを救う優しき者でも無い、ただマザーを幸せにする事ができれば大悪党でも世界の敵でも何者でも良い」
目からは血の涙を流しながらボールを投げる体勢に入る。
能力値――
ジャック、攻撃力8、素早さ8、防御力3、魔力量6、体力7、回復力9。魔力ゲージ40/100、体力ゲージ80/100。
ルーナ、攻撃力5、素早さ6、ボール7、魔力量7、体力6、回復力7。魔力ゲージ20/100、体力ゲージ70/100。
イアン、攻撃力16、素早さ18、防御15、魔力量20、体力18、回復力21。魔力ゲージ95/100、体力ゲージ95/100。
アーサー、アリス、ニコラス、サントス、シーマス、コルビン――退場。




