侵略者
僕が椅子を出すと岩に座っていたプライドは立ち上がり椅子に座る。
そして紅茶を入れて砂糖も入れる。
「初めて飲むが、美味しいな」
プライドは両手の人差し指と親指を不器用に使いながら紅茶の底とふちを持って妙な飲み方をする。
神であるプライドは何かを食べたり飲んだりするのに慣れていないのだろう。
「この持ち手をこうやって持つんだよ」
「····」
プライドは無言で持ち方を変えるがまだおぼつかない。
紅茶を1口、2口飲むと、
「この手は元々お前が良く知るサタンと名乗る天使の手らしいな」
プライドが言ったサタンと言う天使。
元々は最高位の天使であったが最愛の天使が天使達の罠で殺された事により堕落した。
彼女はかつて魔界を乗っ取り悪魔達と共に天使に復讐をしようとした。
だがアマノにより倒されその後は何やかんやありアマノと僕の友達···になった。
「そしてその手を身に付けていたのはクルーニャと言う神」
だがサタンはクルーニャによって殺された。
でも理由は憎しみなどでは無く愛ゆえの殺しだった。
少なくともクルーニャ本人はそう言っていた。
「クルーニャはサタンを愛し、サタンもクルーニャを愛していた。自分で殺したのに泣いていたよ、今になって分かる気がするが共感はできない」
僕がそう言うとプライドは微かに鼻で笑い、
「変な奴だな」
「僕が聞きたいのはなぜ君がその手を見に付けているかなんだ。教えて欲しい」
僕はプライドの顔に付いた手を指さしながら言うがプライドは少し間を空けて、
「やだ!」
「·····だよね」
「謎解きは自分でやるべきだぜ?」
僕は少し困った顔をしながらもプライドの目をよく見て、
「君がクルーニャ本人?とか」
「なぜそう思う?」
「クルーニャは僕が知ってる誰よりも賢い、彼の頭脳に勝てる者はそう居ない。君の仕草や喋り方、似てるけどそこまで似てない、もし本人ならば丁度いい具合に隠せてる。それに七つの大罪に入って僕の前に現れる、クルーニャのやりそうな事だ」
「それらしい考え方だが····浅いな」
「で?本当は?」
「それも自分で探せ、答えを探して見ろ」
プライドはそう言って再び紅茶を口にする。
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ユグドラ学園第6訓練所。
妙な空間から現れた2人はラースとラトニーだった。
「アイス冷蔵庫」
ラースはラトニーにアイスを渡しラトニーはそのアイスを転移空間を通し家の冷蔵庫に入れる。
「ミハエル!竜介!援護を頼む!」
ブレッドはすぐにラースに向けて火を放つが火はラースを避けるように過ぎ去ってく。
「そのまま後ろに居ろ」
「はい」
ラースは手をブレッドに向ける。
するとブレッドの足が地から浮き、ラースの手元に引き寄せられる。
「な!体が!」
「ブレッド!」
ブレッドは慌てながらもすぐにラースに向けて近距離で火を放つがまた火がラースを避けて行く。
「何だと!?」
ブレッドはラースの手元まで来るとラースが持っていた短剣で刺される。
「ガァ!」
そして地に倒れ込む。
「やばい!他のSランク魔導師は?」
「関係者が呼びに行きました」
ミハエル先生と竜介は焦りながらも周りの状況を把握する。
「俺の再生魔法で治したいが、奴がい···な!」
ミハエル先生は先程のブレッドのように中に浮きラースの手元まで引き寄せられる。
「ミハエルさん!」
「ヤバっ」
ミハエル先生はラースの短剣に刺される。
ラースはミハエル先生の体から短剣を抜き地に落とす。
だがミハエル先生は素早く起き上がりラースにナイフを刺しブレッドを抱え下がろうとする。
「お前が不死身のミハエル?」
ラースは膝を落としながらミハエル先生とブレッドを何かしらの魔法で吹き飛ばす。
「さすがミハエルさん!」
竜介は吹っ飛んできたミハエル先生とブレッドをキャッチする。
「ブレッドを治す」
ミハエル先生はすぐにブレッドに傷を抑えて再生させるが、
「無意味だったか···」
「ま、まさか?」
ミハエル先生は無言でコクリと頷き竜介は悟る。
ブレッドは既に死んでいた。
「リーダー大丈夫ですか?」
「だ、大丈だ」
ラトニーはラースの足の傷を転移空間から取り出した包帯で巻き手当てする。
「ミハエルさん、どうします?彼の魔法の謎が分かりません」
「俺なら死なない、後ろから援護を頼む」
「はい···?え?あ!」
竜介は違和感を感じる。
その時には既に中に浮いていた。
「竜介!」
「な、ナイスでーす!」
ミハエル先生は咄嗟に竜介の手を掴むが手が離れてしまい竜介はラースの手元に引き寄せられる。
「わ!わわわわ!光魔法!」
竜介はラースの目の前に来ると手から光を放ちラースの視界を奪う。
「光!?」
竜介は目を閉じたラースの首筋に蹴りを入れる。
更に2発目を入れようとするが足がラースの首筋から吹き飛ばされてしまう。
「足ちぎれるかと思った」
「終わりだ」
ラースは目を閉じながら短剣を振るうが竜介の刀で受け止められる。
「魔法の影響を受けながらも身を守るだと?」
「目を閉じながら良く正確に当てれるな!当たってないけど!」
ラースは竜介を蹴り上げるとそのまま真上に自身の魔法で突き上げ吹き飛ばす。
竜介の体が落ちたら明らかに死ぬ高さまで来ると、
「たたき落とす!」
逆に地に引き寄せられ重量によって落下するより早く、ものすごく早く落下する。
「竜介!」
「死んだ」
竜介はそう呟きながら素早く刀を取り出し地に思いっきり突き刺す。
「ア゛ア゛!いってぇ!」
「刀でダメージを吸収しただと!?まったく凄い奴だ」
竜介はかろうじて生きていたが骨を何本も折り危険な状態だ。
「良くやった竜介!今治す!」
「させるか!」
ミハエル先生を止めようとラースは手を突き出すが背中に手裏剣が刺さる。
「ガァ!手裏剣?日本の武器···あいつ落下中に投げていたのか?」
ラースはそう言って膝を落とす。
「再生魔法」
その隙にミハエル先生は竜介の皮膚の傷、内部の治せる傷を手当した。
「ミハエルさんありがとう」
「俺ができるのは再生。折れた骨は今は無理だ、お前は早く行け」
「歩けません」
竜介が申し訳なさそうにそう言うと2人の背後から、
「2人共良くやった」
来たのは大会に参加したSランク魔導師4人、それと観客席で見ていたSランク魔導師10人だった。
「竜介は私が」
1人の日本人Sランク魔導師が竜介の抱えその場に去る。
「ブレッドは?」
「死んだ」
「まさか!?奴の魔法は?」
「人、あるいは魔法を引き寄せたり吹き飛ばしたりする」
ミハエル先生は魔導師達に状況を説明するとゆっくりと立ち上がる。
「さすがに勝てない、ラトニー皆を」
「はい」
ラトニーは再び転移空間を大きめに開く。
するとその空間から4人ゆっくりと出てきた。
「くそ!帰ったらもう1回だ!次は絶対勝つ!」
「ラストがゲームで僕に勝てるはずないでしょ?」
2人は口喧嘩をしながら出てきた、ラストとスロウスだ。
「私は見たものしか信じないので神は信じません」
「これだから無神論者のガキは、信じないと見えないんだよ」
もう2人はグリードとエンヴィー。
「ラストとスロウスは逃げた子供の魔導師を、グリードとエンヴィーは俺と一緒にこいつら」
ラースがそう言うとラトニーは転移空間を閉じる。
「まっ!待って下さい!私とまっ、スロウスを一緒にはさせてくれないですか?」
「すまんエンヴィー、今はお前が必要だ」
「必要···有り難きお言葉」
エンヴィーは慌てた様子でラースに寄ってきたが、ラースの言葉を聞き顔を伏せて後ろに下がる。
「ラトニー、天気の魔導師、アーサーの居場所は分かるか?」
「治療室、場所も分かります」
「お前は治療室に行きアーサーを殺れ」
「分かりました」
ラトニーは転移空間を開きどこかへ行った。
「奴らアーサーの所に行く気だ!あの子はまだ目覚めてない!」
「誰か行け!」
魔導師達がそう言うがグリードとエンヴィーが魔導師を囲むように逃げ場を無くす。
同時にラストとスロウスはラストの空気を足場にして逃げた観客達を追う。
「お前ら14人は生きて帰さない、魔導師に生まれた事を悔やめ」
ラースはそう言って手を魔導師達に向ける。




